2024年、バークシャー・ハサウェイは主要保有銘柄であるアップルやバンク・オブ・アメリカの株式を大幅に縮小し、自社株買いにも慎重な姿勢を示した。一方で、アメリカン・エキスプレスとコカ・コーラの二銘柄に関しては、数十年にわたり売却することなく保有を続けてきた。

アメリカン・エキスプレスは、伝統的な銀行とは異なる独自の収益モデルとブランド力を武器に、バフェットから絶大な信任を得てきた。高額な年会費を支払う会員層が安定収益を支えるほか、取引時の手数料とカードローン利息を組み合わせた収益構造は、長期的な成長にも寄与している。

コカ・コーラは、1988年から保有を続ける象徴的銘柄であり、ブランド力に裏付けられた圧倒的な市場シェアと景気変動に強いビジネスモデルが最大の強みだ。さらに63年連続増配という希少な実績は、安定的な株主還元を重視するバフェットの投資哲学とも合致する。


アメリカン・エキスプレスが築き上げた独自のビジネスモデルとブランド価値

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが、27年以上一切売却していない銘柄として特異な存在感を放つのがアメリカン・エキスプレスである。同社は、世界4大クレジットカードネットワークの一角を占める企業として、決済ネットワークの運営とクレジットカード債権を両輪とする収益構造を確立している。

取引ごとに徴収する手数料収入に加え、カードローンの金利収入を安定的に得ることで、景気に左右されにくい収益基盤を築いてきた。さらに、年会費が約700ドルに設定されたプラチナカードを筆頭に、アメリカン・エキスプレスのカードそのものがステータスシンボルとして認識されることで、富裕層を中心とした強固な顧客基盤も形成されている。

こうした独自のポジションは、従来型の銀行や他のカード会社とは一線を画すものであり、バフェットが長期保有を続ける理由の一端を担っている。景気後退局面でも高所得層の消費意欲は比較的安定しやすいという構造的な特性も、同社の持続的な成長力を支える要因となっている。

コカ・コーラが63年連続増配を可能にするブランド力と商品展開の進化

1988年にバークシャー・ハサウェイが約10億ドルを投じて取得したコカ・コーラ株は、現在249億ドル規模に膨らんでいる。同社が誇る最大の強みは、世界中で浸透したブランド力と飲料市場における圧倒的なシェアの維持にある。

炭酸飲料だけでなく、スポーツドリンクの「パワーエイド」や「BODY ARMOR」、さらにはミニッツメイドなどの果汁飲料、コーヒーや紅茶ブランドまで幅広い商品群を展開し、多様化する消費者ニーズに応えている。直近では健康志向の高まりを背景に、プレバイオティクス炭酸飲料「Simply Pop」を投入するなど、既存ブランドの価値を維持しながら商品ポートフォリオの拡張を続けている。

このように、単なる飲料メーカーにとどまらず、ブランド資産を最大限に活用し、消費動向に柔軟に対応する戦略が、長期的な収益安定性と株主還元力の源泉となっている。63年連続増配という歴史的実績は、経営陣の強い資本政策と事業戦略の確かさを裏付けるものとして、今後も長期投資家にとって重要な指標であり続けるだろう。

2024年に見せたバフェットの選別眼とアメリカン・エキスプレスとコカ・コーラが象徴する資産戦略

2024年、バークシャー・ハサウェイはアップルやバンク・オブ・アメリカといった主要銘柄の保有比率を大幅に引き下げる一方で、アメリカン・エキスプレスとコカ・コーラについては一切手放さなかった。バフェットが「永続的競争優位性」を見極める際の基準を象徴するのが、この二銘柄である。

アメリカン・エキスプレスは富裕層向けのステータスブランドとして独自の地位を確立し、決済ネットワークと金融機能を融合させたハイブリッド型ビジネスモデルを構築している。この特殊な収益構造こそ、景気変動に左右されにくい強靭な企業体質を支えている。

一方のコカ・コーラは、世界的ブランド力と消費者の生活に深く根付いた商品群を持ち、長期的な安定収益を生み出す優良銘柄として位置づけられてきた。2024年のポートフォリオ再編は、バフェットが景気動向や消費者行動の変化を慎重に見極め、真に持続的な価値を生む銘柄への選別を一段と強化したことを示唆するものと言える。

Source: The Motley Fool