ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが2024年第3四半期と第4四半期に、自社株買いを2期連続で見送った事実が投資家に波紋を広げている。過去最高となる3340億ドルの現金および同等物を抱えながらも、24四半期にわたり続いた自社株買いが途絶えた背景には、現在の株価を割安と見なさないバフェットの厳しい判断があると読み取れる。
同社は鉄道や公益事業、製造業など多岐にわたる事業を展開するが、収益の柱は保険部門であり、そこから生まれる膨大なフロート資金を武器にバフェットは高い運用成績を築いてきた。第4四半期の営業利益は前年同期比71%増と堅調だったが、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)は過去10年の平均を大きく上回り、バリュエーション面で割高感が意識される水準にある。
バフェットの慎重姿勢は、バークシャー株が今後一定期間にわたり横ばいまたは調整局面を迎える可能性を示唆していると言える。ただし、これは同社の基盤や成長力そのものへの懸念ではなく、現在の株価と企業価値の乖離への警戒に過ぎない。今後、自社株買いの再開がバフェットによる適正水準判断のシグナルとなる点に注目が集まる。
バフェットが示した自社株買い停止の背景と3340億ドルの意味

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年第3四半期および第4四半期において、2018年の自社株買いプログラム改定以降、初めて2四半期連続で自社株買いを見送った。この決定は、バフェット自身がバークシャー株の現在の株価を「内在価値を下回る水準」とは見なしていないことを端的に示すものと考えられる。
特筆すべきは、バークシャーのバランスシート上に2024年末時点で3340億ドルという過去最高の現金および同等物を保有していた事実である。潤沢な資金を抱えながらも自社株買いを回避した点は、単なる資本政策上の判断にとどまらず、株価評価に対するバフェットの明確なメッセージとして受け止めるべきだろう。
2018年第3四半期に導入された現行の自社株買い基準は、バフェットとマンガーが「保守的に見積もったバークシャーの内在価値」を株価が下回った場合のみ自社株買いを実施するというものだった。これに基づき24四半期連続で実施されてきた自社株買いが突如として止まった事実は、現行株価が割高水準にあると判断された可能性を強く示唆する。
バークシャー株のバリュエーションが映す過去10年との乖離
バークシャー・ハサウェイ株は、2024年第4四半期の堅調な業績を受けて年初来で9%上昇した。S&P500のリターンとほぼ同等水準を維持する一方、株価収益率(PER)は22.5倍に達し、過去10年平均を大幅に上回る水準へと到達している。
加えて、株価純資産倍率(PBR)も1.64倍と、過去10年平均の1.39倍を大きく超えており、企業価値と株価の乖離が広がっている点は見過ごせない。過去の実績から見ても、バフェットが自社株買いを停止する判断に至る背景として、バリュエーションの高さは無視できない要素であると考えられる。
バークシャー株のバリュエーションは、業績成長率や事業ポートフォリオの安定性を考慮しても、過去の基準に照らせば高水準にあることは否定できない。今後の株価動向は、業績の成長ペースと市場全体の評価基準に強く影響される展開が想定されるが、割高感を背景とする上値の重さが意識される局面が続く可能性もあるだろう。
バフェットの沈黙が示唆する今後の投資判断と株主への示唆
ウォーレン・バフェットは、過去60年にわたりバークシャー・ハサウェイを率いる中で、適切な投資タイミングを見極める手腕で高い評価を得てきた。2024年後半の自社株買い見送りという決断は、株主に対する間接的なメッセージとして重い意味を持つものと言える。
現時点でバフェットが新規投資に慎重な姿勢を見せていることは、短期的な株価上昇余地が限られると判断している可能性を示している。ただし、同時に3340億ドルの現金を保持し続けている点は、市場に大きなチャンスが生じた際に即座に動ける態勢を整えているとも解釈できる。
既存株主にとって重要なのは、目先の株価変動に一喜一憂するのではなく、バフェットの行動から市場全体の温度感を読み取る視点である。自社株買い再開のタイミングや新たな大型投資の動きは、バフェットがバークシャー株を含めた市場全体をどう評価しているかを知る上で、極めて重要なシグナルとなるだろう。
Source: The Motley Fool