ARK Investを率いるキャシー・ウッドが、2025年3月3日にArk Next Generation Internet ETFを通じてコインベース株を3万8,865株、総額810万ドル分取得した。今回の投資は、トランプ前大統領が3月2日に発表した「クリプト戦略準備計画」に端を発する仮想通貨価格の持ち直しと、コインベースが記録した好決算を背景としている。
コインベースは2024年第4四半期に1株利益4.68ドル、売上高22億7,000万ドルを計上し、売上高は前年比138%増という驚異的な成長を遂げた。加えて年間売上高66億ドル、純利益26億ドルと堅調な業績を示しているが、株価は年初来12%安、過去3カ月で31.6%の下落と、事業成長と株価動向が乖離する状況にある。
トランプ氏が掲げる「米国を暗号資産ハブに」という政策方針が、業界全体の規制緩和への期待を高める一方、コインベースは取引手数料依存から脱却すべくサブスクリプションやカストディ事業を拡大中である。ウッドの投資はこうした構造転換期の長期成長余地を見据えたものと捉えられ、今後の市場動向と政策の行方が注目される。
キャシー・ウッドが示すコインベースへの大型投資 変革期の企業価値をどう見るか

2025年3月3日、キャシー・ウッド率いるARK Next Generation Internet ETF(ARKW)が3万8,865株のコインベース株を取得し、投資額は810万ドルに上った。ARKWによるコインベース株の追加取得は、同社の業績好調にもかかわらず株価が大きく下落している状況を踏まえたものとみられる。
コインベースは2024年第4四半期決算で1株利益4.68ドルと市場予想を大きく上回り、売上高は22億7,000万ドルに達した。通年でも売上高66億ドル、純利益26億ドルを記録し、取引手数料収入が40億ドルへと急増した点が成長の核となった。こうした好調な財務指標とは裏腹に、株価は年初来で12%下落、直近3カ月では31.6%の下落を記録している。
ARKWの投資判断は、仮想通貨市場全体の不透明感と規制動向を踏まえつつ、コインベースの事業拡張戦略や収益構造の転換可能性を評価したものと考えられる。財務基盤の強化に加え、トランプ前大統領が3月2日に発表した「クリプト戦略準備計画」が市場心理を支える材料となり得る中、コインベースへの戦略的投資としての位置づけが注目される。
トランプ前大統領の「クリプト戦略準備計画」が投資環境に与える影響
2025年3月2日、トランプ前大統領はSNSを通じて「クリプト戦略準備計画」を公表し、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)といった主要銘柄を含む包括的な暗号資産政策に言及した。この計画は、米国を世界の暗号資産ハブとして位置づける方針を鮮明にし、従来の規制強化路線からの転換を示唆するものと受け止められている。
これまで米国では証券取引委員会(SEC)を中心とした規制当局が暗号資産業界への厳格な監視姿勢を維持してきた。しかし、今回の計画では、国内産業の競争力強化とグローバルなリーダーシップ確立を掲げる中で、規制緩和や制度整備の方向性が示唆された。コインベースをはじめとする米国拠点の取引所にとっては、事業拡大の追い風となる可能性がある。
暗号資産市場は政策発表直後から主要銘柄が上昇し、価格回復のきっかけとなったが、その持続性は政策の具体化や選挙結果に左右されることが避けられない。長期的には、業界全体のガバナンス強化や透明性向上とともに、利用者保護とイノベーション促進の両立が重要課題となる。トランプ氏の動きは、コインベースの成長シナリオにも直結する政治的要因として引き続き注視される。
コインベースの事業構造転換と株価低迷 長期的成長をどう見極めるか
コインベースはこれまで取引手数料を収益の柱としてきたが、暗号資産市場の成熟と規制強化を受け、事業構造の多角化に着手している。ステーキングサービスやカストディ業務、「Coinbase One」といったサブスクリプションサービスを強化し、取引依存度を下げる戦略を推進している。
2024年通年では取引手数料収入が40億ドルと大幅増加したが、新たなサービス領域への展開が収益基盤を安定化させるかは、依然不透明な部分が残る。特に、規制環境の変化や競合他社の動向がサービス普及を左右する可能性があり、先行きには慎重な見極めが求められる。
一方で、足元の株価は年初来12%安、過去3カ月で31.6%下落と、好調な業績との乖離が際立っている。市場が財務指標を評価し切れていない要因として、仮想通貨価格の変動リスクや規制リスクが依然として大きな不確定要素として残っている点が挙げられる。キャシー・ウッドの810万ドル投資は、こうした逆風下においても同社の成長余地に賭ける判断であり、今後の市場評価の変化が注目される。
Source: Wall Street Pit