約375万円の資金をどの投資家の助言に委ねるべきか。CNBCの名物キャスターであるジム・クレイマーと、ARKインベストの創業者キャシー・ウッドが、その選択肢として注目を集める。クレイマーは、エンターテイメント性を前面に押し出した短期売買型のスタイルで個別株を推奨し、番組を通じて市場に一時的な影響を与える存在である。
一方、ウッドは破壊的イノベーションに特化した長期視点のポートフォリオを組み、AIや宇宙産業、フィンテックなど最先端分野に集中投資する独自路線を貫く。過去の成績や推奨銘柄のリターンを見る限り、クレイマーの的中率は46.8%と市場平均を下回る傾向にある。
対してウッドは2021年までの驚異的なリターンから一転、近年は苦戦も続くが、2025年初頭にかけてジョビー・アビエーションの株価上昇を的中させ、クレイマーの「強い売り推奨」を覆した実績を残した。投資スタイルやリスク許容度によって、両者の助言をどう受け止めるかが分かれるが、個人の投資目標に応じた見極めが重要である。
投資界の異端児ジム・クレイマーと破壊的イノベーションの旗手キャシー・ウッド 対照的な軌跡と実績

ジム・クレイマーは、ハーバード大学で政府学と法学を修めた後、ゴールドマンサックスに在籍し、その後ヘッジファンドを設立した経歴を持つ。1987年のブラックマンデーを事前に察知しポジションを手仕舞うなど、市場の潮流を読む勘に強みを見せる一方、「マッドマネー」では強烈な個性を前面に押し出し、視聴者を惹きつけるエンターテイナーとしての側面でも名を馳せてきた。
対するキャシー・ウッドは、USCを最優秀で卒業後、アライアンス・バーンスタインやトゥペロ・キャピタル・マネジメントを経て2014年にARKインベストを創業。破壊的イノベーションを掲げ、電気自動車や人工知能、宇宙開発といった先端技術分野に特化したETFを展開し、2021年までの年平均リターンは39%に達した。
クレイマーが伝統的な産業や成熟企業を短期売買で回転させる戦術を採るのに対し、ウッドは将来性の高い分野に集中し、時にボラティリティを許容する長期型の投資哲学を貫く。2024年末時点でARKの運用資産は127億ドルに達しており、特定テーマに特化したETF群は投資家の注目を集め続けている。
視聴率と実績で揺れるクレイマーの影響力 独特な推奨スタイルと市場への波紋
ジム・クレイマーが司会を務めるCNBCの「マッドマネー」は、長年にわたり米国個人投資家に支持され、視聴者数はかつて17万8000人に達した。しかし近年では12万7000人へと低下しており、その影響力にも陰りが見えるとの指摘がある。
クレイマーは、番組内で推奨銘柄を次々と挙げ、派手なパフォーマンスとともに視聴者の注目を集めるスタイルを確立してきた。短期的には推奨銘柄が急騰する「クレイマー効果」も確認されるが、中長期では市場平均を下回る成績となるケースが多く、62件の推奨銘柄の的中率は46.8%、市場平均比ではマイナス1.47%と厳しい結果も示されている。
短期売買志向の視聴者にとっては刺激的な銘柄選びが魅力となる一方、ファンダメンタルズやバリュー投資を軽視する姿勢には批判も多い。市場全体の上昇局面では一定の成果を上げるものの、2008年の金融危機やベアスターンズ、シリコンバレーバンクの破綻など、大局観を誤った事例も散見される。クレイマーの助言はあくまでエンターテイメント性と短期的な話題性に依存する側面が強く、構造的な投資優位性には結びつきにくいという課題を抱えている。
ARKインベストが狙う未来の産業 ジョビー・アビエーション成功事例が示す先見性
ARKインベストのキャシー・ウッドは、テーマ型ETFを通じて破壊的イノベーションに特化する独自路線を築いてきた。ARKK(イノベーションETF)を筆頭に、ARKX(宇宙産業ETF)、ARKF(フィンテックETF)など分野別ETFを展開し、それぞれが最先端技術や未来産業を対象とする。
2023年12月、ウッドは空飛ぶタクシーの開発を手掛けるジョビー・アビエーション株を68ドルで30万株取得したが、その後2025年1月には株価が9.55ドルまで上昇し、クレイマーによる6.50ドルでの強い売り推奨を覆す形となった。この事例は、ウッドの投資判断が単なる流行追いではなく、詳細なリサーチに基づく先見性の表れとも捉えられている。
一方で、破壊的イノベーションへの集中投資はリターンの振れ幅が大きく、2021年以降のARKの成績は苦戦を強いられてきた。高成長分野への早期参入という戦略は、成功すれば圧倒的な成果を生むが、技術革新や市場ニーズの変化に左右されるリスクも常に伴う。未来志向の投資家にとっては、ウッドの戦略は魅力的であるが、ボラティリティへの許容度と、長期的な視座を持つことが欠かせない。
Source: 24/7 Wall St.