2025年2月20日、キャシー・ウッド率いるARKインベストはBeam Therapeuticsの株式を17万778株追加購入し、保有株数を約770万株に拡大した。これは発行済株式の8.54%に相当し、同社の保有銘柄の中で20番目に位置付けられる。
同社は塩基編集技術を核に遺伝性疾患の治療を目指すバイオテク企業であり、ARKが掲げる「破壊的イノベーション」と親和性が高い。しかし、前年同期比で31%超の株価下落や、収益化への道筋の不透明さが顕著である。
一方、空売り投資家のジム・チャノス氏は、Beamを含むARKの投資先全般について、過剰な期待がファンダメンタルズを無視した株価形成をもたらしていると指摘。市場は同社の技術力を認めつつも、キャッシュ消費型ビジネスの財務リスクやボラティリティの高さに対する警戒感を強めている。
ARKインベストが示すゲノミクス分野への揺るぎない信念とBeam Therapeuticsへの大型投資の背景

ARKインベストは2025年2月20日、Beam Therapeuticsの株式を17万778株追加購入し、合計保有株数を約770万株へ拡大した。これはBeamの発行済株式の8.54%を占め、ARKが手掛ける全銘柄の中でも20番目に大きな保有比率となる。キャシー・ウッドが掲げる「破壊的イノベーション」を体現する銘柄として、遺伝子治療分野の中核に据える形で投資姿勢を強化した。
Beam Therapeuticsは、塩基編集技術を用いた次世代遺伝子治療の先駆者として位置付けられ、特に鎌状赤血球症などの遺伝性疾患に対する革新的治療法の実現を目指している。ARKの長期的な投資ビジョンと、ゲノミクス領域全体がもたらす医療構造の変革可能性への期待が、今回の買い増しの背景にあると考えられる。
一方で、Beamの株価は過去1年間で31%以上下落しており、直近終値は26.11ドルで推移している。高い技術力と強固な研究基盤を持つものの、収益化の道筋が見通せない状況下での大型投資は、ARKの信念とリスク許容度を映し出している。将来の成長シナリオへの強気な期待が、事業の実態や短期的な収益指標を上回っているとの見方も否定できない。
空売り筋ジム・チャノスが警鐘を鳴らすファンダメンタルズ乖離とバイオテクノロジー特有の財務リスク
ARKによる大型保有が続く一方で、著名空売り投資家ジム・チャノスは、Beam Therapeuticsを含むARK投資銘柄全般に対し、過剰な期待先行のリスクに強い警戒感を示している。彼は、バイオテクノロジー企業全般に共通する財務構造上の脆弱性に加え、将来の技術的成功に依存した不安定な株価形成に潜在的な危険を指摘している。
特にBeamのように、臨床試験段階の企業は多額の研究開発費を必要とするが、安定した収益基盤を持たないため、キャッシュ消費型の事業構造が継続する。さらに、臨床試験結果次第では株価が急落する可能性が常に伴う点も、ファンダメンタルズと株価の乖離を助長する要因とされる。チャノスは、こうしたリスクを踏まえ、ARKの投資戦略が必ずしも合理的な企業価値評価に基づくものとは限らないとの見解を示している。
ARKの持つ強い信念と、チャノスら空売り筋が指摘する構造的リスクは、対立軸として市場に緊張感をもたらしている。革新的技術を抱える企業ほど、投資家心理が先行しやすい傾向があるが、最終的には研究成果や事業化の成否が企業価値を決定づける。BeamがARKの強気姿勢を裏付ける成果を示せるか、投資家の注目が集まる局面となっている。
スコシアバンクの慎重な格付け維持と目標株価引き上げが示す市場の二面性
2025年2月17日、スコシアバンクはBeam Therapeuticsの目標株価を24ドルから25ドルへ引き上げ、「セクターパフォーム(市場平均並み)」の格付けを維持した。目標株価の引き上げは、鎌状赤血球症をはじめとする同社のパイプラインに対する一定の評価を示すものであるが、積極的な買い推奨には至らない点に市場の複雑な評価構造が現れている。
スコシアバンクのアナリスト陣は、Beamの技術力や長期的な潜在力には注目しつつも、臨床試験結果や規制当局の判断といった不確実要素を考慮し、慎重なスタンスを崩していない。加えて、同社の事業モデルが依然として多額の研究開発費に支えられている点も、過度な期待を抑制する要因と見られる。市場全体としては、技術的可能性と事業化リスクを天秤にかけながら、評価のバランスを模索している状況にある。
このような慎重な評価姿勢に対し、ARKインベストは770万株という大量保有を通じ、極めて強気な信念を示している。市場の一部はこの強気姿勢を先見性の表れと見る一方で、実現可能性を慎重に見極める視点も根強く残る。最先端技術の革新性と収益化の現実が交錯する中で、Beamの将来像を巡る投資家の思惑は、今後ますます複雑化する可能性がある。
Source: Wall Street Pit