Teslaの株価が年初来で33%以上下落し、短期的な停滞と長期的な成長戦略の狭間で揺れている。中国では2月の販売台数が前年同期比49.2%減少し、BYDを筆頭とする地元勢の台頭が競争激化を象徴している。欧州でもドイツ市場での販売が76%減と急落し、消費者の選好変化やイーロン・マスク氏の政治的発言による影響も懸念される。

積極的な値下げによる利益率低下が続く中、2025年には低価格モデル投入や上海メガファクトリーの稼働が予定され、エネルギー貯蔵事業も拡大基調にある。さらに、完全自動運転やロボタクシー、ヒューマノイドロボットなどの新規事業が将来の収益柱として期待されるが、その成否は不透明である。

短期的な株価低迷は一時的な調整に過ぎず、長期視点ではAIや自動運転などの技術革新が成長ドライバーとなる可能性もある。今後の販売動向や技術進展が、Teslaの中期的な評価を左右する重要な局面を迎えている。


中国と欧州での急減速が示すTeslaの競争環境の変化

Teslaが直面する最大の難題は、中国と欧州という二大市場での販売不振である。中国では2025年2月の中国製Tesla車の卸売販売台数が30,688台にとどまり、前年同月比49.2%減という大幅な落ち込みを記録した。中国旅客車協会(CPCA)のデータを基にしたReutersの報道によれば、世界最大のEV市場でTeslaの競争力が急速に後退している構図が浮かび上がる。

特に中国では、BYDなど地元メーカーが低価格帯から高価格帯まで幅広いモデルを展開し、消費者の支持を集める構図が加速している。欧州においても、Teslaの象徴的市場であるドイツで2025年初頭に販売台数が前年同期比76%減となるなど、消費者の選好変化が鮮明である。Bloombergの報道によれば、ドイツ全体のEV販売台数は同期間に31%増加しており、Teslaの不振が市場全体の縮小によるものではないことを示している。

この急減速には、生産調整に伴う供給制約やイーロン・マスク氏の政治的発言への反発といった要因も複合的に絡んでいると考えられる。販売台数の減少が一時的な調整にとどまるのか、それとも競争力低下の兆候なのか、2025年以降の動向が中期的なTeslaの評価を大きく左右する局面となる。

利益率低下と価格戦略が招く収益構造の揺らぎ

Teslaは2024年以降、販売不振への対応として積極的な値下げ戦略を展開してきた。特に中国市場では、BYDをはじめとする競合メーカーが価格競争を激化させる中で、Teslaも価格引き下げによる需要喚起を図る動きが顕著となった。結果として、車両の平均販売価格(ASP)は低下傾向を強め、2024年以降の自動車部門の利益率に強い下押し圧力がかかっている。

Teslaは原材料調達や製造効率の改善により、1台あたりの製造コストを35,000ドル未満に抑える努力を継続しているが、価格引き下げによる売上減少分を吸収しきれていないのが実情である。短期的には一定の販売回復が期待されるものの、競合他社も同様の戦略を取る可能性があり、価格競争の長期化リスクが高まっている。

こうした状況は、Teslaが持つブランド価値や製品プレミアムを徐々に希薄化させる懸念もはらんでいる。単なる値下げ合戦に終始すれば、利益率低下に加え、ブランド競争力の低下を招き、中期的な収益構造の悪化につながる可能性がある。価格競争から脱却し、新たな収益モデルを確立できるかが、Teslaの持続的成長の鍵を握る。

AI・自動運転・ロボタクシー戦略が左右する長期成長の行方

短期的な販売不振や利益率の低下に直面する一方で、TeslaはAIや自動運転技術への積極投資を通じて、次世代モビリティ市場での主導権確保を目指している。特に完全自動運転(FSD)技術は、2025年に欧州や中国市場での監視付き導入を予定しており、早期の商用化を見据えた動きが加速している。

さらに2025年後半には、米国市場で「ロボタクシー」サービスを一部地域で開始する計画を明らかにしており、将来的には移動サービス事業が新たな収益源に成長する可能性がある。加えて、2026年には「オプティマス」と呼ばれるヒューマノイドロボットの企業向け納入も計画しており、ロボティクス事業の本格展開による収益多角化も視野に入れている。

これら次世代事業はTeslaの成長ストーリーを支える重要な柱となるが、技術面や規制面の課題は依然として多い。特にFSDやロボタクシーは、安全性検証や法整備の進展に左右される部分が大きく、計画通りの事業拡大が実現するかは予断を許さない。次世代事業の成否がTeslaの中長期的な企業価値を左右する重要な分岐点となる。

Source: Barchart.com