ブロードコム(AVGO)は、AI関連事業の急成長により2025年度第1四半期に堅調な業績を記録した。総売上高は前年同期比25%増の149億ドル、調整後EBITDAは41%増の101億ドルと、いずれも市場予想を上回った。特にAI半導体の売上が前年同期比77%増の41億ドルに達し、ハイパースケーラー向けネットワークソリューションが成長を牽引した。
一方、非AI半導体の売上は前四半期比9%減と低迷。しかし、VMware買収を通じたインフラソフトウェア事業は堅調で、売上は47%増の67億ドルに拡大した。AI需要の持続とソフトウェア事業の成長により、ブロードコムの時価総額は再び1兆ドルを突破する可能性が高まっている。
AI半導体の爆発的成長がブロードコムを支える

ブロードコムの2025年度第1四半期決算では、AI関連半導体の売上が前年同期比77%増の41億ドルに達した。これは同社の半導体売上の約50%を占める規模であり、AIインフラ需要の拡大が企業の収益構造を大きく変えつつあることを示している。特に、ハイパースケーラー向けのネットワークソリューションが成長を牽引し、AI機能の強化を目的とした投資が続いている。
2025年度第2四半期には、AI半導体の売上が44億ドルに達し、前年同期比44%増となる見通しだ。ブロードコムの主要顧客である3社のハイパースケーラーは、2027年度までに600億~900億ドル規模の市場を形成すると予測されており、同社の成長の基盤となる可能性が高い。さらに、カスタムAIアクセラレーターの開発も進めており、将来的な市場の拡大が期待されている。
この成長の背景には、AIの大規模活用が進む中、クラウド事業者がブロードコムのネットワークソリューションとアクセラレーターを不可欠な技術と見なしていることがある。しかし、AIインフラ投資の減速やマクロ経済の変動といったリスクも存在しており、長期的な成長の継続には市場の動向を注視する必要がある。
非AI事業の低迷が業績の懸念材料に
AI関連の売上が急成長する一方で、非AI半導体事業の低迷がブロードコムの課題となっている。2025年度第1四半期の非AI半導体売上は41億ドルで、前四半期比9%の減少を記録した。特にワイヤレスセグメントの季節的な需要低下が影響し、企業向けネットワーク機器の需要も低迷している。顧客企業は依然として在庫調整を続けており、新規受注の回復には時間を要する可能性がある。
しかし、ブロードバンド事業は成長を見せており、第1四半期には2桁成長を達成した。サーバーストレージも回復傾向にあり、第2四半期には1桁台後半の成長が見込まれている。これにより、非AI半導体事業全体としては今後回復の兆しが見られるものの、企業向けネットワーク機器の低迷が依然として重荷となっている。
AI事業の成長が非AIセグメントの減少を補い、全体としては堅調な業績を維持しているが、非AI部門の回復の遅れが中長期的なリスクとなる可能性がある。AIブームが一巡した際、非AI事業の競争力が問われる局面が訪れるかもしれない。
VMware統合が収益基盤を強化
ブロードコムは半導体だけでなく、VMware買収によるインフラソフトウェア事業の拡大も進めている。2025年度第1四半期のインフラソフトウェア売上は67億ドルに達し、前年同期比47%増を記録した。この成長の要因として、従来の永久ライセンスモデルからサブスクリプションベースへの移行が挙げられる。現在、VMwareのライセンスの60%以上がサブスクリプションモデルに移行しており、継続的な収益確保の基盤となっている。
VMwareの主力製品である「VMware Cloud Foundation(VCF)」は、企業のデータセンターを仮想化するプラットフォームであり、大手顧客の約70%に導入されている。さらに、エンタープライズAIの普及に伴い、Nvidiaと共同開発した「VMware Private AI Foundation」が注目を集めており、すでに39の企業顧客を獲得している。このプラットフォームは、企業がGPUとCPUを仮想化し、AIワークロードのコスト削減と最適化を可能にする。
第2四半期のインフラソフトウェア売上は65億ドルと予測され、前年同期比23%増となる見込みだ。AI半導体事業と並び、VMwareの統合がブロードコムの成長戦略を支える柱となる可能性がある。しかし、サブスクリプションモデルの拡張には時間を要するため、短期的な業績の変動には注意が必要だ。
Source:Barchart.com