ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが、Vanguard S&P 500 ETF(VOO)を2024年第4四半期に全売却したことが明らかになった。S&P 500のPERが過去平均を上回る中、市場の過熱感を警戒した可能性が指摘されている。一方、新たに選ばれたのはドミノ・ピザ(DPZ)であり、同社の安定した配当と成長性が評価されたとみられる。

ドミノ・ピザは12年連続の増配を記録し、配当性向も41.7%と健全な水準を維持している。2024年第3四半期末時点でバークシャーは128万株を取得し、株価は20%以上上昇。これにより、バフェットの動向に注目が集まる中、個別銘柄へのシフトが示唆される。

ただし、VOOの売却はS&P 500市場全体に対する強い否定ではなく、バークシャーの主要銘柄には依然としてAppleやAmazonなどのS&P 500構成銘柄が含まれている。バフェットの戦略変更は市場の変動に対する慎重な調整であり、個人投資家にとっても今後の市場動向を考慮した慎重な判断が求められる。


バフェットのS&P 500 ETF売却が示唆する市場の変化

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年第4四半期にVanguard S&P 500 ETF(VOO)を完全に売却した。S&P 500は近年、特にテクノロジー企業の成長を背景に上昇を続けており、2025年2月時点での12カ月先の予想PERは21.2と過去5年平均の19.8を上回る水準に達している。このような評価の高まりが、バフェットの売却判断に影響を与えた可能性がある。

また、S&P 500の主要構成銘柄であるAppleやAmazonを保有し続ける一方で、指数全体への投資を手放したことは、市場全体の過熱感を警戒し、より個別銘柄への選別投資を強化していることを示唆する。バークシャー・ハサウェイのポートフォリオに占めるS&P 500インデックスファンドの割合はもともと0.02%未満と小規模であり、この売却が大きな戦略転換を意味するわけではない。しかし、指数投資から個別銘柄へのシフトが進む兆候とも取れる。

バフェットは歴史的に、過大評価された市場環境では現金保有を増やし、市場が調整した際に割安な資産を取得する手法をとってきた。バークシャーが現在、現金保有を増やしていることも、今後の市場の変動を見据えた慎重な姿勢を示すものと考えられる。S&P 500の成長を支えてきたテクノロジー企業の業績が今後も市場の期待に応え続けられるかは不透明であり、バフェットの動きはそのリスクを反映している可能性が高い。

ドミノ・ピザへの投資が示す長期戦略

バフェットが新たに注目したのは、安定した配当を提供するドミノ・ピザ(NASDAQ: DPZ)である。2024年第3四半期末時点で128万株を取得しており、その後の株価上昇は20%以上に達した。ドミノ・ピザは、ファストフード業界の中でも強固なブランド力を持ち、特にデジタル注文システムの強化により成長を続けている。配当の面でも、12年連続で増配を実施し、2024年第1四半期には1株あたり1.74ドルの四半期配当を予定している。配当性向は41.7%と、安全な水準にあることが投資判断の一因となったと考えられる。

ドミノ・ピザは、過去数年間で配当利回りを安定的に維持しながらも、成長戦略を積極的に進めている点が特徴である。特に、フランチャイズ展開を強化し、海外市場でのシェア拡大を図っていることが、今後の成長余地を示している。一方で、ファストフード市場は競争が激しく、コスト上昇や消費者の嗜好の変化が業績に影響を与えるリスクも存在する。そのため、バフェットの投資判断は、短期的な株価の動きよりも、長期的な安定収益を重視したものとみられる。

また、ドミノ・ピザの株価は、2025年3月時点で12カ月目標株価が503.41ドルと予想されており、アナリスト評価は「Moderate Buy(やや買い推奨)」となっている。ただし、空売り比率の増加や経営陣の自己保有率の低さなど、一部の投資家が慎重な姿勢を取る要因もある。これらの点を踏まえると、ドミノ・ピザは長期投資向けの優良銘柄でありながら、すべての投資家にとって最適とは限らない。

バフェットの戦略変更から得られる教訓

バフェットの投資方針の変化は、市場全体の過熱感に対する警戒心と、個別銘柄の選別を強化する姿勢を反映している。S&P 500 ETFの売却は、指数全体の上昇が実体経済の成長と乖離し始めているとの見方を示唆している可能性がある。一方で、バークシャーの主要保有銘柄には引き続きS&P 500の中心企業が含まれており、米国経済全体への信頼を完全に放棄したわけではない。

個人投資家にとって、この動きが示す重要なポイントは、長期的な視点に立った資産配分の重要性である。バフェットは、広範な市場への投資から、より確実な収益を見込める企業への投資へとシフトしている。これは、短期的な株価変動に振り回されず、財務の健全性やビジネスモデルの強さに基づいて投資を行うべきであることを示唆している。

また、個別銘柄への投資にはリスクが伴うため、分散投資を基本とする方針が依然として有効であることも示されている。バフェット自身は依然として米国企業の競争力を評価しながらも、市場のリスクに対する備えを強めている。個人投資家も、単にバフェットの動きを追うのではなく、市場の状況を冷静に分析し、リスクとリターンのバランスを見極めることが求められる。

Source: MarketBeat