AMDのオープンコンピュートプラットフォーム「ROCm」が、Windows環境での対応を拡大する可能性が浮上している。これまでLinux向けに最適化されてきたROCmだが、AMDのAIソフトウェア担当副社長がWindows対応について前向きな姿勢を示したことで、開発者の期待が高まっている。

現在、Windows上でROCmを利用できるGPUはごく一部に限られており、多くのRadeon GPUが非対応のままだ。特にRDNA 4世代のGPUが現時点でサポートされていない点は、ユーザーにとって大きな課題となっている。一方、Linux環境では広範なGPUでROCmを活用できるため、Windowsとの格差は依然として大きい。

AMDのROCm、Windows対応拡充の可能性と現状

AMDのGPU向けオープンコンピュートプラットフォーム「ROCm」は、従来Linuxを中心に開発・提供されてきたが、Windows環境での対応が拡充される可能性が浮上している。これは、AMDのAIソフトウェア担当副社長アヌシュ・エランゴヴァン氏が、Windows対応に対して肯定的なコメントを残したことによる。

現在、Windows版ROCmは一部のGPUのみ対応しており、Radeon RX 7900 XT / XTXなどのハイエンドモデルが主な対象となっている。最新バージョン6.2.4でも、全てのRadeon GPUが利用できるわけではなく、特に最新のRDNA 4世代の対応はまだ発表されていない。一方で、Linux環境ではRDNA 2アーキテクチャのGPUでもROCmが利用可能であり、Windowsとのサポート格差が目立つ。

この状況を踏まえ、AMDがWindows向けのROCm対応を本格的に拡充すれば、より多くの開発者がAMDのGPUを選択肢に加えられる可能性がある。特に、NVIDIAのCUDAと競合する形での普及が進めば、AI開発やHPC(高性能計算)の分野でAMD製GPUの利用が広がることも期待される。

Windows版ROCmの課題とLinuxとの違い

Windows環境でのROCm利用には、いくつかの技術的課題が存在する。現在のWindows版ROCmは、一部のRadeon GPUのみに対応しており、それ以外のモデルでは互換性の問題が発生することがある。また、サポートされているGPUであっても、ROCmを利用した際にクラッシュやドライバのタイムアウト、スクリプトのフリーズなどの問題が報告されている。

対照的に、Linux版ROCmはより広範なGPUに対応しており、特にRDNA 2以降のGPUで安定して動作するケースが多い。Linux環境ではROCmを活用しやすいことから、AI開発者やデータサイエンティストの間ではAMDのGPUを選択肢とする動きも見られる。しかし、Windowsでのサポートが限定的であるため、開発環境をWindowsに依存するユーザーにとっては、AMDのGPUよりもCUDAに最適化されたNVIDIA製品が優位に立ちやすい状況が続いている。

もしAMDがWindows環境でもROCmを広く展開できれば、Windowsユーザーにとってより選択肢が増えることになる。特に、最新のRadeon GPUがより幅広くROCmに対応すれば、AI開発や機械学習を行うユーザーにとってAMD製GPUの魅力が増すだろう。

AI市場におけるAMDの可能性と今後の展開

現状、AI市場ではNVIDIAのCUDAが圧倒的なシェアを誇っており、多くの開発者がNVIDIA製GPUを利用している。しかし、AMDもAI向けのGPU開発を進めており、特に「MI300X」のようなハイエンドモデルが登場したことで、競争環境に変化が生まれつつある。

ROCmがWindows環境でも幅広いGPUで利用できるようになれば、開発者にとってAMDのGPUがより実用的な選択肢となる可能性がある。また、小規模な開発企業がAMD向けの独自ソフトウェアスタックを構築し、PyTorchと統合する動きも見られている。こうした流れが加速すれば、CUDA一強の状況が変化することも考えられる。

実際、Tiny Corpのような企業がAMDのMI300X GPUを活用する事例も出てきており、AMDが今後AI市場での影響力を強める可能性もある。もしWindows上でのROCm対応が本格的に進めば、AI開発者にとってAMDのGPUがより魅力的な選択肢となる日も遠くないかもしれない。

Source:Wccftech