かつて低スペックPCの救世主とされたWindowsの「ReadyBoost」だが、2025年の今では完全に時代遅れとなっている。ReadyBoostはUSBメモリやSDカードをキャッシュとして活用し、HDD搭載PCのパフォーマンスを向上させる機能だった。しかし、現在のPCはほぼすべてがSSDを標準搭載し、メモリの速度も飛躍的に向上したため、ReadyBoostの効果はほぼゼロとなった。
ReadyBoostが登場した背景と当時の意義

Windows Vistaとともに導入されたReadyBoostは、当時としては画期的な技術だった。HDDが主流だった時代、PCの動作を高速化する手段として有効だったのは、メモリ増設か、ストレージのキャッシュを活用する方法だった。しかし、RAMは高価であり、特にノートPCでは交換が難しかったため、多くのユーザーにとって手軽なアップグレード手段とは言えなかった。
そこで登場したのがReadyBoostである。この機能は、USBメモリやSDカードをキャッシュとして利用し、HDDよりも高速なデータアクセスを可能にすることで、メモリ不足のPCのパフォーマンスを改善するというものだった。当時のHDDは回転ディスク方式であり、ランダムアクセス速度が遅かったため、フラッシュメモリを活用することで体感速度を向上させることができた。
実際に、低スペックなPCではReadyBoostの効果を感じる場面もあった。特に、RAMが1GB以下の環境では、スワップ領域の拡張として機能し、起動時間の短縮やアプリケーションの応答性向上に貢献した。Windows VistaやWindows 7時代には、少ない投資でPCの快適さを向上させる手段として一定の支持を集めていた。しかし、この技術が本当に有用だったのは、SSDが普及する前の限られた時期に過ぎない。
現代のPC環境ではReadyBoostは逆効果に
ReadyBoostの有効性が失われた最大の理由は、SSDの普及とメモリの高速化にある。現在のPCのほとんどがSSDを標準搭載しており、アクセス速度はUSBメモリとは比較にならないほど高速である。実際、Windows 10以降のバージョンでは、SSDが搭載されている場合、ReadyBoostのオプションが自動的に無効化される仕様となっている。
さらに、RAMの進化もReadyBoostの存在意義を薄れさせた。最新のLPDDR5Xメモリは7,000MT/sを超える速度に達し、SSDと比較しても圧倒的な高速アクセスが可能だ。また、現在のPCは最低でも8GBのRAMを搭載しており、一般的な使用環境ではメモリ不足に陥ることが少なくなっている。そのため、ReadyBoostを有効にしたとしても、ほとんどのシステムで体感的な速度向上は期待できない。
加えて、ReadyBoostの仕組み上、頻繁なキャッシュの書き込みが発生するため、USBメモリの寿命を大幅に縮める可能性がある。フラッシュメモリには書き込み回数の上限があるため、ReadyBoostを利用すると短期間でデバイスが故障するリスクが高まる。結果として、現在の環境でReadyBoostを使用するメリットはほぼなく、むしろデメリットの方が大きいと言える。
MicrosoftもReadyBoostの廃止を進めている
ReadyBoostはWindows Vistaで導入され、Windows 7、8、10でも利用可能だったが、Windows 11ではついに機能が完全に削除された。MicrosoftはReadyBoostの正式な終了を発表してはいないものの、最新のOSでは利用できなくなっていることから、事実上の廃止が進められていると考えられる。
この背景には、現代のPC環境においてReadyBoostがもはや不要になったことがある。Windows自体も、SuperFetch(現在のSysMain)といった自動キャッシュ機能を備えており、ReadyBoostのような外部ストレージを利用したキャッシュの必要性がなくなっている。
また、USBメモリの信頼性や耐久性の問題も、ReadyBoostが廃止される一因と考えられる。USBメモリはあくまで一時的なストレージとして設計されており、長期間にわたって頻繁に書き込みを行う用途には適していない。そのため、ReadyBoostを利用することでデバイスの寿命を縮め、逆にコストがかかる可能性も指摘されていた。
もしPCのパフォーマンス向上を目指すなら、ReadyBoostを利用するよりも、SSDの導入やメモリの増設が圧倒的に効果的である。特にSSDは価格が大幅に下がり、手軽にアップグレードできるようになっているため、ReadyBoostに頼る理由はもはやない。Microsoft自身がこの技術をフェードアウトさせていることが、その不要性を物語っていると言えるだろう。
Source:MUO (MakeUseOf)