スタートアップ企業Bolt Graphicsが発表した「Zeus」GPUが、RTX 5090の最大10倍のレンダリング性能を持つと主張し話題を呼んでいる。このGPUは、一般的なゲーミング向けとは一線を画し、3Dグラフィックスやシミュレーションなどのプロ用途に特化した設計となっている。
特筆すべきは、最大32GBのGDDR5Xメモリに加え、DDR5 SODIMMスロットを搭載し、最大2.25TBのRAM拡張が可能である点だ。さらに400GbE QSFPポートや標準8ピン電源コネクタを採用するなど、従来のコンシューマー向けGPUとは異なる構造を持つ。
Zeus GPUが持つ驚異的な仕様と特徴

Bolt Graphicsの「Zeus」GPUは、RTX 5090と比較して驚異的な性能を持つとされている。そのスペックの中でも特に注目すべき点は、最大32GBのGDDR5Xメモリを搭載し、さらにDDR5 SODIMMスロットによって最大2.25TBまでのRAM拡張が可能であることだ。この仕様は、これまでのコンシューマー向けGPUには見られなかったもので、ワークステーション用途や大規模なデータ処理に適している。
また、Zeus GPUは400GbE QSFPポートを備え、高速ネットワーク接続に対応している点も特徴的だ。これはデータセンターやクラウドレンダリング環境に適した仕様であり、単体のGPUとして使用するのではなく、大規模な並列計算を行うシステムの一部として設計されている可能性が高い。消費電力もわずか120Wとされており、同クラスのGPUと比べても低消費電力設計が際立っている。
こうしたスペックを考えると、Zeus GPUは一般的なゲーミング用途よりも、CADや3Dモデリング、リアルタイムパストレーシングを活用する映像制作分野での活用を想定した製品であることがうかがえる。実際にAutoCADやRevit、Unreal Engineとの統合が想定されている点も、ゲーム用GPUとは異なる立ち位置を示している。性能が公称通りであれば、映像制作やシミュレーションを手掛けるクリエイターにとって有力な選択肢となる可能性がある。
RTX 5090の10倍の性能は実現可能なのか
Bolt Graphicsは、Zeus GPUがRTX 5090の最大10倍の性能を発揮すると主張している。この数値は驚異的であり、もし実現すれば業界に大きな衝撃を与えることになる。しかし、具体的なベンチマーク結果や実際のパフォーマンスに関する詳細は現時点では明らかにされていない。そのため、この性能差がどのような条件下で測定されたものなのか、慎重に見極める必要がある。
一般的に、GPUの性能は単純な理論値だけでは測れない。レンダリング速度やAI処理能力など、特定の用途に最適化されたアーキテクチャを採用すれば、一部のタスクにおいてはRTX 5090を大きく上回る可能性はある。しかし、ゲーム性能においても同様の差が出るとは限らない。特に、Nvidiaの最新アーキテクチャが持つDLSSやフレーム生成技術といった独自機能は、単なるハードウェア性能だけでは比較できない要素となる。
Zeus GPUのターゲットがプロフェッショナル用途であることを考慮すると、ゲーム向けの比較ではなく、3DグラフィックスやAI推論、映像レンダリングの分野でRTX 5090と比べた際の優位性がどの程度あるのかが焦点となる。特定のワークロードでは10倍の差が生じる可能性もあるが、実際の使用環境によって評価が分かれることになりそうだ。
Zeus GPUは市場で受け入れられるのか
Zeus GPUの特徴を考えたとき、ターゲットとなる市場は主にクリエイターや映像制作、シミュレーション用途の専門家だと考えられる。しかし、こうした市場においても、NvidiaやAMDが長年築いてきたエコシステムや互換性の問題が存在する。特に、GPUを活用するソフトウェアの多くは、NvidiaのCUDAやAMDのROCmを前提に最適化されているため、新興企業のGPUがどの程度の互換性を持つのかが課題となる。
また、価格面も重要な要素となる。Zeus GPUがRTX 5090と比較して圧倒的なコストパフォーマンスを持つのであれば、クリエイター向けの市場で一定の支持を得る可能性がある。しかし、独自のアーキテクチャを採用していることで、ドライバやソフトウェアのサポートがどこまで充実しているのかが不透明な状態では、多くのユーザーが慎重な姿勢を取るだろう。
一方で、Zeus GPUのような革新的なハードウェアは、新しい用途を切り開く可能性を秘めている。例えば、クラウドレンダリングやAI学習向けの専用GPUとして活用されることで、既存のGPUとは異なる市場を形成するかもしれない。いずれにしても、実際の性能と市場での評価が明らかになるまでは、このGPUがどのように受け入れられるかは未知数である。
Source:NotebookCheck