アップル(AAPL)は過去20年間で驚異的な成長を遂げ、株価は18,000%超のリターンを記録した。2005年に5,500ドルを投資していれば、現在7桁の資産になっていた計算となる。高いブランド力とハードウェア・サービスの相乗効果が、これまでの成功を支えてきた。
同社のサービス部門は成長を続け、売上高の21.2%を占めるまでになった。粗利益率は75%と極めて高く、ハードウェア依存の低減が競争優位性を強化している。しかし、現在のバリュエーションは割高で、株価収益率(P/E)は37.8倍に達する。
売上成長率が鈍化し、スマートフォン市場の成熟が進む中、アップル株が今後も「億万長者メーカー」となり得るかは不透明だ。投資家は過去のリターンに囚われることなく、冷静な視点で評価する必要がある。
アップルの成長を支える「サービス部門」の存在感

アップルの成長を牽引しているのは、もはやハードウェアだけではない。2025年度第1四半期の決算では、同社の総売上高の21.2%がサービス部門によるものであり、この割合は年々増加傾向にある。特筆すべきは、その粗利益率が75%と極めて高く、従来のハードウェア販売に比べて収益性に優れている点である。
iPhoneやMacなどのハードウェアを軸としたエコシステムが、Apple MusicやiCloud、Apple Payといったサービスの継続的な収益を生み出している。このモデルは、単発の製品販売に依存する他のハードウェア企業とは一線を画している。顧客が一度アップル製品を購入すれば、クラウドストレージやサブスクリプションサービスに継続的に課金する仕組みが整えられているためだ。
ウォーレン・バフェットもこの点を評価し、「人々が1万ドルを渡されてもiPhoneを手放したがらない理由は、アップルのエコシステムが強固であるからだ」と述べている。こうした構造によって、アップルは経済環境の変化にも強い収益基盤を築いている。
スマートフォン市場が成熟し、買い替えサイクルが長期化する中でも、サービス部門の成長が利益の安定性をもたらしている。今後もアップルがハードウェアとサービスを組み合わせたビジネスモデルを強化することで、収益構造は一層盤石になるだろう。
株価の割高感と成長鈍化のリスク
アップルの圧倒的なブランド力と収益性の高さは揺るぎないが、現在の株価水準には慎重な見極めが求められる。執筆時点での株価収益率(P/Eレシオ)は37.8倍に達しており、過去10年間の平均である22.9倍を大きく上回る。この水準は、投資家の期待が過度に織り込まれている可能性を示唆している。
特に、今後の成長率を考慮すると、現在のバリュエーションが正当化されるかどうかには疑問が残る。ウォール街のアナリストによる予測では、2024年度から2027年度にかけてアップルの年間売上成長率は6.6%、1株当たり利益(EPS)の成長率は10.6%にとどまる見込みである。
これは、過去の成長速度と比較すると低水準であり、現在の高いP/Eレシオとのバランスを考えた場合、投資家にとって魅力的なリターンを生むかどうかは不透明である。さらに、スマートフォン市場の成熟に伴い、消費者の買い替え需要は減少している。
特に最新のiPhoneは価格が1,000ドルを超えることが一般的になっており、高価格帯での販売拡大には限界がある。アップルの売上の大部分を占めるiPhoneの需要が鈍化すれば、成長の加速は難しくなるだろう。こうした要素を踏まえると、今の株価水準での新規投資には慎重な判断が求められる。
アップル株は今後も市場を上回る成長を遂げるか
アップルは長年にわたり、S&P500指数を上回る成長を続けてきた。しかし、今後もその傾向が続くかどうかは明確ではない。特に、同社の年間売上高が4,000億ドル規模に達していることを考慮すると、これまでのような爆発的な成長は期待しにくい。企業規模が大きくなるにつれ、新たな成長ドライバーを見つけることが課題となる。
一方で、同社は潤沢なキャッシュフローを活用し、積極的な株主還元を行っている。2025年第1四半期には、39億ドルの配当支払いと236億ドル相当の自社株買いを実施した。株主還元を重視する姿勢は、長期投資家にとっての安心材料となるが、それだけで株価の上昇を支えることは難しい。
また、モトリーフールの「ストックアドバイザー」が選定した今後有望な10銘柄のリストにアップルは含まれていない点も興味深い。これは、成長余地の大きい他の銘柄に投資機会がある可能性を示唆している。アップル株が今後も市場平均を上回るリターンを生むかどうかは、今後の成長戦略とイノベーション次第であり、現在の株価水準を考慮すると慎重な判断が求められる。
Source:The Motley Fool