Appleは、次世代Siriの中核機能として期待されていた「パーソナルコンテキスト」や「オンスクリーン認識」などの導入を再延期すると発表した。当初iOS 18.4での提供が見込まれていたが、iOS 18.5へと後ろ倒しされた後、ついに「来年のどこかの時点」まで延期されることとなった。
この決定により、iPhone 16の広告で紹介されていた「会議相手の名前を思い出す」といった機能は、早くてもiPhone 17の登場時期まで利用できない可能性が高まった。AppleはSiriの刷新をAI戦略の要と位置付けていたが、競合のGoogleやOpenAIが先行する中、技術開発の遅れが鮮明になっている。
Apple Intelligenceの展開はこれまでにも障害が相次いでおり、ニュース要約機能の誤作動や画像生成ツールの仕様変更など、相次ぐ問題が発生。WWDCで発表された革新性が実現されるまでには、なお時間を要する見通しだ。
Apple Intelligenceの延期 影響を受ける主要機能とは

Appleが導入を延期した機能の中でも、特に期待されていたのが「パーソナルコンテキスト」「オンスクリーン認識」「アプリインテント」の3つである。これらはSiriの知能を大幅に向上させる要素であり、AIアシスタントの使い勝手を飛躍的に向上させるはずだった。しかし、Appleの発表によれば、これらの機能は「来年のどこかの時点」にずれ込む見通しとなっている。
「パーソナルコンテキスト」は、過去のメッセージやカレンダー情報を基に、Siriがユーザーに適した回答を提供する機能である。iPhone 16の広告で示された「数ヶ月前の会議の相手を思い出す」といったシナリオも、この技術によるものだった。
一方、「オンスクリーン認識」は、Siriが画面上の情報を解析し、ユーザーの指示に即応できる機能であり、「この連絡先を登録して」といった指示を容易に実行できるようになる。また、「アプリインテント」は、サードパーティのアプリとも連携し、横断的な操作を可能にするものだったが、これが最も残念な遅延となった。
これらの機能はApple Intelligenceの核となる要素であり、特にGoogleのGeminiやOpenAIのChatGPTなど、AIアシスタントが高度化する中で競争力を高めるために不可欠なものだった。今回の延期は、AppleのAI戦略において大きな痛手となることは避けられない。
Siriの進化が停滞 AppleのAI戦略は競合に後れを取るのか
AppleはAI開発の分野で慎重な姿勢をとってきたが、その結果、競争環境の中で不利な立場に追い込まれつつある。GoogleやMicrosoftはすでに高度な生成AI技術を商用化し、特にGoogleのGeminiやOpenAIのChatGPTは、スマートフォンやクラウド環境で幅広く活用されている。
これに対し、AppleはWWDCで発表したAI関連の進化を着実に進めるとしながらも、主要機能の提供をたびたび延期している。Apple Intelligenceの展開においても、既存のiOS 18ユーザーはその恩恵を十分に受けていない。
ニュース要約機能の誤作動により通知機能が一時停止され、画像生成ツール「Image Playground」では「スケッチ」機能が削除されるなど、AppleのAI技術がまだ成熟していないことを示唆する出来事が相次いでいる。こうした問題が重なることで、AppleのAI戦略全体に対する不信感が高まる可能性がある。
一方で、Appleはプライバシーを最優先にする企業であり、その姿勢がAI開発の進行を遅らせている可能性もある。GoogleやOpenAIがクラウドベースのAI技術を展開するのに対し、Appleはデバイス内で処理を完結させる「オンデバイスAI」にこだわっている。
このアプローチはユーザーのデータ保護には寄与するが、技術的な制約を生む要因ともなりうる。AppleのSiriが大幅に強化されるまで、ユーザーはまだ長い待機期間を強いられることになりそうだ。
Source:Macworld