Peloton(PTON)は株価が急落し、ペニー株に転落する寸前の状況にある。しかし、トランプ前大統領が推進する関税政策の影響をほぼ受けておらず、同業他社とは異なる立ち位置にある。現在、同社の主力収益源はサブスクリプション事業であり、関税の影響を受けにくいが、会員数の伸び悩みが新たな課題となっている。
一方で、Pelotonは事業再編を進めており、フリーキャッシュフローの黒字化に成功。市場は同社の再建を評価し始めている。アナリストの目標株価は現在価格を大きく上回るものの、市場全体の不透明感が強く、買い時かどうかは慎重に判断する必要がある。
著名投資家デビッド・アインホーン氏もPelotonに投資しており、同社の将来性に期待を寄せる。一方で、トランプ氏が新たな関税政策を導入すれば、同社にも影響が及ぶ可能性があり、今後の動向から目が離せない。
Pelotonの関税リスクは本当に小さいのか

Pelotonは関税の影響をほぼ受けていないとされるが、その背景には同社の生産戦略がある。Pelotonは過去に自社生産を行っていたが、現在は台湾のRexon Industrialに製造を委託しており、米国の対中関税の影響は軽微となっている。実際、2025年度第2四半期決算説明会では、PelotonのCFOであるリズ・コディントン氏が「関税の影響は1%未満」と説明している。
ただし、これはあくまで現状の話だ。トランプ前大統領は再選を狙い、新たな「相互関税」の導入を公言している。もしこれが実施されれば、中国のみならず他国からの輸入品にも広範囲に影響を及ぼす可能性がある。Pelotonの製造委託先が影響を受ければ、間接的に同社のコストにも跳ね返るだろう。
現時点では関税リスクは小さいが、長期的に見ればリスクはゼロではない。加えて、Pelotonの製品には米国以外のサプライチェーンも絡んでおり、貿易政策の変化がどこに波及するかは予測しづらい。ユーザーにとっては、今後の米国の政策次第で製品価格が変動する可能性を考慮する必要がある。
Pelotonのサブスクリプション戦略は今後も通用するのか
Pelotonのビジネスモデルは、ハードウェアの販売だけでなく、サブスクリプションサービスからの収益に大きく依存している。現在、同社の収益の多くは会員向けサービスから生まれており、これは関税の影響を受けにくいという利点がある。しかし、会員数の成長が鈍化している点は無視できない問題だ。
市場が拡大を続けるうちは、サブスクリプションモデルは有効に機能する。しかし、新規会員の獲得が難しくなると、現行会員の維持が収益の鍵となる。Pelotonは既存会員のエンゲージメントを高める施策を展開しているが、フィットネス業界は競争が激しく、類似のサービスが増えれば解約率が上昇する可能性もある。
さらに、Pelotonの収益構造を支えるサブスクリプションは、経済状況の影響を受けやすい。景気後退時には、消費者は不要不急の出費を抑える傾向にある。現在の市場環境を考えると、Pelotonがこの収益モデルを維持し続けられるかは不透明だ。短期的には安定しているが、長期的には競争の激化と市場動向によって調整が求められる可能性がある。
Pelotonの株価は本当に割安なのか
Pelotonの株価は大きく下落し、現在はペニー株に近い水準となっている。しかし、一部のアナリストは同社のバリュエーションを魅力的と判断している。実際、20人のアナリストのうち4人が「強い買い」と評価し、平均目標株価は10.26ドルと現在価格より62%高い。また、著名投資家のデビッド・アインホーン氏もPeloton株を保有しており、彼の投資ファンドGreenlight Capitalは同社の上位10位の株主となっている。
ただし、株価の割安感には慎重な判断が必要だ。Pelotonは事業再編に成功し、フリーキャッシュフローを黒字化しているが、成長が鈍化している点は見過ごせない。特に、フィットネス市場はトレンドに左右されやすく、競争相手が増えれば収益の安定性が揺らぐ可能性がある。
さらに、市場全体の不安定さも影響する。ナスダック総合指数やS&P500が調整局面にある中で、投資家はリスク資産に慎重になっている。Peloton株が今後上昇するかは、同社の業績だけでなく、市場環境や投資家のリスク許容度にも左右される。短期的な上昇余地はあるが、長期的な回復にはさらなる成長戦略が必要となるだろう。
Source:Barchart.com