ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは2020年にクラウド企業スノーフレークへ投資し、2024年に全株を売却した。その後、同社の株価は約30%上昇し、売却判断の是非が問われている。
スノーフレークはデータクラウドの提供を通じてAI分野に注力し、新技術「Cortex AIプラットフォーム」や「Cortex Agents」を展開。しかし、売上成長は鈍化し、2025年度の純損失は13億ドルに拡大。投資の収益化が遅れる中、市場の評価は依然として割高とされる。
バフェットの投資哲学を踏まえれば、安定した利益を生まないスノーフレークの売却は合理的と考えられる。短期的な株価上昇に惑わされるべきではなく、慎重な投資判断が求められるだろう。
バークシャー・ハサウェイがスノーフレークを売却した背景

バークシャー・ハサウェイは2020年、IPO直後のスノーフレークに投資した。当時、同社のデータクラウド事業は急成長しており、売上は前年比3桁増を記録していた。しかし、バフェットの投資哲学において、同社の事業モデルは必ずしも適合していなかった。バフェットは収益が安定し、配当や自社株買いを通じて株主還元を重視する企業を好むが、スノーフレークは利益を出さず、成長のための投資を優先していた。
2024年に全株を売却した理由の一つは、売上成長の鈍化である。スノーフレークの2025年度プロダクト収益は34億ドルに達したが、成長率は30%と過去最低を記録。また、同年度の営業費用は38億ドルに膨らみ、純損失は前年比53.7%増の13億ドルとなった。こうした財務状況が、売却の判断を後押ししたと考えられる。
加えて、同社の株価バリュエーションも課題だった。売上高倍率(P/Sレシオ)は16.2に達し、マイクロソフトやアルファベットといったクラウド分野のリーダーと比較しても割高な水準にあった。バークシャーは成長鈍化と高いバリュエーションを懸念し、早期の売却を決断した可能性が高い。
AI戦略の強化とスノーフレークの将来性
スノーフレークはデータ管理と分析の強みを活かし、AI分野での競争力強化を進めている。2023年後半には「Cortex AIプラットフォーム」を導入し、AnthropicやOpenAIなどの大規模言語モデル(LLM)と連携。企業は自社データを活用し、カスタムAIソフトウェアを構築できるようになった。さらに2024年には「Cortex Agents」を発表し、業務自動化のための仮想アシスタント開発を支援。これにより、データ活用の幅が広がると期待される。
AI市場の拡大を考えれば、スノーフレークの戦略は理にかなっている。データはAIの発展に不可欠であり、同社のプラットフォームは企業のデータ管理を支える重要な役割を果たす。しかし、現時点では成長投資が収益につながっておらず、財務状況の改善には時間を要するとみられる。
企業の需要を示す残存パフォーマンス義務(RPO)は2025年第4四半期に68億ドルとなり、前年同期比32.6%増を記録した。しかし、会社側は今後12カ月でその48%しか売上に変換できないと見込んでおり、収益の見通しには不透明感が残る。AI事業が今後どの程度の収益を生み出すかが、スノーフレークの評価を大きく左右することになるだろう。
短期的な株価上昇は売却判断の誤りを意味するのか
バークシャー・ハサウェイがスノーフレークを売却して以降、同社の株価は約30%上昇した。しかし、これが売却の判断ミスを意味するとは言い切れない。バフェットの投資スタイルは長期的な企業価値に基づいており、一時的な株価変動に左右されない。スノーフレークの成長鈍化や巨額の損失を考慮すれば、バフェットのチームが将来的なリスクを回避した可能性もある。
スノーフレークのP/Sレシオが依然として高水準にあることを考えれば、現在の株価が過大評価されている可能性もある。特に、売上成長率の鈍化と高額な投資コストを鑑みると、今後の業績次第では市場の評価が変わることも考えられる。
バフェット自身はテクノロジー企業への投資に慎重な姿勢をとることで知られており、スノーフレークへの投資は彼の部下による決定だったと考えられる。結果として、バークシャーの全体的なリターンと比較すればスノーフレークの投資パフォーマンスは低調であり、売却は合理的な判断だったといえるだろう。
Source:The Motley Fool