Appleは2025年に新型Vision Proを投入しない見込みだが、その代わりにvisionOS 3の大幅な機能拡充を進めている。Bloombergのマーク・ガーマン氏によれば、Appleは今年のWWDCで「多くの新機能を備えた」visionOS 3を発表する予定だ。
現在、Appleは新しいMシリーズチップを搭載した第2世代のVision Proや低価格モデルの開発を進めているが、発売は2025年以降にずれ込む。一方で、ソフトウェア面ではすでに大きな進展が見られ、先月発表されたvisionOS 2.4ではApple Intelligence(AI機能)の導入やiPhone向けVision Proアプリの追加などが実施された。
Appleはハードウェアの刷新よりもvisionOSの強化に注力する方針を取っており、今回のアップデートは同社の長期戦略の一環と見られる。visionOS 3の具体的な内容は明かされていないが、ユーザー体験を一変させる可能性がある。
AppleがvisionOS 3に注力する理由 ハードウェア刷新の遅れと戦略の変化

Appleはこれまで、ハードウェアの革新を軸に市場を牽引してきた。しかし、Vision Proに関しては、第2世代モデルの開発が進められているものの、2025年には登場しない見込みだ。現在のVision ProはM2チップを搭載し、2022年の技術を基盤としているため、次のモデルが登場する頃には4年が経過することになる。
このスパンは、Appleの通常の製品サイクルと比べると長く、同社がハードウェアの更新よりもソフトウェアの成熟を優先していることがうかがえる。その一方で、visionOSは急速に進化を遂げている。最新のvisionOS 2.4では、Apple Intelligenceの統合、iPhone向けVision Proアプリの提供、そしてスペーシャルギャラリー機能の追加など、実用性の向上が図られた。
これらの動きは、AppleがVision Proを単なるガジェットではなく、継続的なエコシステムの一部として確立しようとしていることを示している。特に、AI技術の導入は、Appleが今後のデバイス戦略においてソフトウェア主導のアプローチを重視する兆候といえる。
Appleは長期的な視点で、Vision Proの市場投入を成功させるための環境整備を行っていると考えられる。ハードウェアの刷新が遅れる一方で、visionOSの機能を拡充することで、すでに発売済みのモデルをより魅力的に保ち、市場の関心を維持する狙いがあるのではないか。
これは、かつてiPhoneがソフトウェアアップデートによって大きく進化し、ユーザーの満足度を高めてきた手法と共通している。
visionOS 3がもたらす変革 Apple Intelligenceとユーザー体験の進化
visionOS 3は「多くの新機能を備えた」大規模アップデートになると報じられているが、具体的な内容についてはまだ明らかになっていない。しかし、Appleの最近の動向を踏まえると、Apple Intelligenceのさらなる強化が軸になる可能性が高い。visionOS 2.4でAI機能が初めて統合されたことを考えれば、Appleがこの分野の開発を加速させることは自然な流れといえる。
Apple IntelligenceがVision Proに本格的に組み込まれれば、デバイスの操作性やインタラクションの質が大きく向上するだろう。例えば、音声アシスタントの進化による直感的なナビゲーションや、リアルタイム翻訳機能の強化が期待される。
また、ジェスチャー認識や視線追跡技術とAIを組み合わせることで、従来のユーザーインターフェースを超えた没入型の操作環境が実現する可能性もある。加えて、Appleが注力している「空間コンピューティング」の分野においても、visionOS 3の役割は重要となる。
現在のVision Proは、特定のアプリやコンテンツの利用に最適化されているが、より多様な業務用途やエンターテインメント体験に対応するためには、OSレベルでの改良が不可欠だ。AppleがvisionOS 3を通じて、どのような新たな利用シナリオを提示するのか、今後の発表に注目が集まる。
Vision Proの低価格モデルは登場するのか Appleの製品戦略を読み解く
Appleは現在、低価格のVision Proモデルを開発中とされている。しかし、これがいつ市場に投入されるのかについては明確な情報はなく、2025年の発売は見送られる見込みだ。Appleの製品展開を振り返ると、初代モデルの市場浸透後に価格帯の異なるバリエーションを追加する手法を取ることが多く、Vision Proも同様の戦略を採用する可能性がある。
低価格モデルの登場は、Vision Proの普及に大きな影響を与えるだろう。現在のVision Proは高価格帯に位置し、一般消費者にとっては手が届きにくい存在だ。しかし、より手頃な価格のモデルが投入されれば、広範なユーザー層にリーチし、Appleの空間コンピューティング市場での地位を確立する契機となる。
ただし、価格を下げるためには、ハードウェア仕様の調整が避けられない。例えば、ディスプレイの解像度やプロセッサ性能、追跡技術の一部を簡略化する可能性がある。一方で、Appleはソフトウェアの最適化によって、エントリーモデルであっても高品質な体験を維持することを目指すだろう。visionOSの進化が、低価格モデルの成功を左右する重要な要素となることは間違いない。
Source:9to5Mac