AMDの最新GPU「RX 9070 XT」と「RX 9070」が登場し、NvidiaのRTX 5070と同価格帯の競争が激化している。RDNA 4アーキテクチャを採用した両モデルは、4Kゲーミング向けの最上位ではないものの、価格対性能比の高さが魅力だ。
RX 9070 XTは64基のコンピュートユニットを搭載し、シェーダー数やクロック速度がRX 9070よりも向上。一方で、消費電力は304Wと大幅に増加している。市場価格は50ドル差だが、この追加投資で最大15%の性能向上を得られるかが鍵となる。
ベンチマークでは、RX 9070 XTが一貫して優位に立ち、特に4K環境でのフレームレートの安定性が目立つ。電力効率やコストを重視するならRX 9070、将来的な拡張性を考えるならRX 9070 XTが有力な選択肢となる。
RX 9070 XTとRX 9070のスペック差はどれほどの影響を与えるのか

AMDのRX 9070 XTとRX 9070は、共にRDNA 4アーキテクチャを採用し、GDDR6 16GBのメモリを搭載する。両モデルの価格差は50ドルと小さいが、性能面では細かな違いが積み重なり、実際の使用感に大きく影響を及ぼす。RX 9070 XTは64基のコンピュートユニットを備え、RX 9070の56基と比べ約14%多い。これにより、シェーダー数やAI/Tensorプロセッサ、レイトレーシングユニットも同程度の割合で増加している。
最大ブーストクロックはRX 9070 XTが2,970MHz、RX 9070が2,540MHzと、約17%の差がある。一方で、消費電力(TGP)はRX 9070 XTが304W、RX 9070が220Wと大幅に異なる。電力効率の面ではRX 9070の方が優れており、特に電源ユニットの容量が限られる環境では重要な要素となる。
このスペック差は実際のパフォーマンスにも影響を与えている。ベンチマークでは、RX 9070 XTが約10%~15%のスコア向上を示し、特に4K環境では安定したフレームレートを提供する。一方で、1440p解像度ではRX 9070も十分な性能を発揮しており、価格差を考慮するとコスト重視の選択肢となる。
4Kと1440pで異なる選択肢 ゲーム用途に応じた最適なGPUとは
RX 9070 XTとRX 9070は、どちらも4Kゲーミングをターゲットとしているが、実際のゲーム環境では用途によって適したモデルが異なる。Cyberpunk 2077(Ultra設定・4K)では、RX 9070 XTが61fps、RX 9070が53fpsと、約15%の差が確認されている。一方、1440p環境ではRX 9070 XTが113fps、RX 9070が105fpsと、その差は8%に縮小する。
Dying Light 2のレイトレーシング有効時では、RX 9070 XTが79fps、RX 9070が74fpsを記録し、ここでも約6%の差となっている。レイトレーシング対応タイトルでは、GPUの処理負荷が大きくなるため、RX 9070 XTの追加シェーダー数やクロック速度がわずかに優位に働く。しかし、1440pでは差が小さく、フレームレートの安定性もRX 9070で十分であるケースが多い。
つまり、4K解像度での長期的な安定性を求めるならRX 9070 XTが有力な選択肢となる。一方、1440pの高リフレッシュレートモニターでの快適なゲーミングを目的とするなら、消費電力の低いRX 9070がコストパフォーマンス面で魅力的だ。価格差が小さいとはいえ、用途を明確にすることで最適なGPU選びが可能となる。
RDNA 4世代の意義とNvidia対抗戦略の行方
AMDのRDNA 4シリーズは、Nvidiaのハイエンド志向に対抗する形で登場し、コストパフォーマンス重視の市場を狙う動きを強めている。現在、NvidiaはRTX 50シリーズでハイエンド市場へのシフトを進めており、RTX 5090や5080が高価格帯に集中している。その中で、RX 9070 XTとRX 9070は600ドル以下の価格帯に位置し、ミドルレンジ市場の拡大を目指している。
特に、今回のRX 9070シリーズは、AMDの公式リファレンスモデルが存在せず、全ての製品がAsusやSapphire、PowerColorといったパートナー企業からの販売となる。これにより、各メーカーごとに冷却性能やオーバークロック仕様が異なり、実際の市場価格にも変動が生じる可能性がある。この戦略は、カスタマイズ性を重視するユーザーにとってはメリットとなるが、一方で入手価格の予測が難しくなる側面もある。
RDNA 4世代が本格的に市場へ浸透することで、NvidiaのミドルレンジGPUにも価格競争が生じる可能性がある。特にRTX 5070の市場投入後、RX 9070シリーズとの性能比較が注目されるだろう。今後の展開次第では、AMDの価格戦略がミドルレンジ市場の勢力図を大きく変えることになるかもしれない。
Source:TechRadar