Appleが新型MacBook Airを発表し、M4チップ搭載やバッテリー駆動時間の向上といった改良が注目を集めた。しかし、米国の関税措置が懸念される中、Appleは価格を引き上げるのではなく、100ドルの値下げに踏み切った。

関税によるコスト増を抑えつつ、市場シェアの維持を狙うこの決断は、競争激化を見据えた戦略的な一手か、それとも経済環境の逆風に備えた防衛策か。Appleの株価は年初来で約10%下落しており、投資家の間では押し目買いの好機と見る向きもある。

アナリストの評価は分かれており、ゴールドマン・サックスは買い推奨を維持し、目標株価を294ドルに設定。一方、ウェドブッシュのダン・アイブス氏は最大325ドルの上昇を見込む。Appleの積極的な価格戦略とAI搭載の新製品群が、今後の成長を支えるかどうかが焦点となる。

MacBook Airの価格引き下げは戦略か防衛策か Appleの狙いを読み解く

Appleは、新型MacBook Airの発表と同時に価格を100ドル引き下げるという異例の決定を下した。13インチモデルは999ドル、15インチモデルは1,099ドルとし、価格上昇が懸念される関税措置に対抗する姿勢を見せた。競合他社が関税を消費者へ転嫁する中、Appleは逆のアプローチを選択した形となる。

この背景には、PC市場の低迷がある。パンデミック期の特需が終わり、個人消費の抑制傾向が続く中、Appleは価格競争を通じて需要を維持しようとしている。また、同社のエコシステム戦略も影響している。MacBook Airの普及は、Appleのサービス部門の成長につながり、長期的な利益に貢献する可能性がある。

一方で、この価格引き下げが収益性に与える影響は未知数である。Appleのハードウェア部門の利益率はもともと高いが、コスト増加を吸収し続けることは困難だ。今後、供給網の変化や市場の反応が、Appleの戦略の成否を左右することになるだろう。

Apple株は今が買い時か アナリストの見解と市場の反応

Appleの株価は年初来で約10%下落しており、S&P 500指数を下回るパフォーマンスとなっている。しかし、過去52週間では32.3%上昇しており、長期的な視点では依然として堅調な成長を示している。こうした中で、投資家は現在の株価を押し目買いの好機と捉えるべきかどうか、判断を迫られている。

アナリストの評価は分かれている。ゴールドマン・サックスはAppleの成長性を強く評価し、目標株価を294ドルに設定。「買い」推奨を維持した。一方、ウェドブッシュのダン・アイブス氏はより強気で、目標株価を325ドルとし、最大43%の上昇余地を見込んでいる。

ただし、懸念点もある。AppleのPER(株価収益率)は32.4倍と、業界平均の27.74倍を上回っており、割高感が指摘される。また、売上高倍率は9.04倍と高水準にあり、成長が鈍化すれば市場の評価が厳しくなる可能性もある。短期的な変動を見極めつつ、Appleの長期的な競争力を考慮する必要がある。

AIとエコシステム戦略がAppleの成長を支えるか

Appleの競争力の源泉は、強固なエコシステムにある。iPhone、iPad、MacBookといったハードウェアに加え、サービス部門の拡大が収益を支えており、2025会計年度第1四半期にはサービス売上が14%増の263億ドルと過去最高を記録した。これはAppleがハードウェア売上だけに依存しない成長戦略をとっていることを示している。

特に、Apple Intelligenceの継続的な展開は、今後の成長を左右する重要な要素となる。AIを活用した機能強化は、ユーザー体験を向上させるだけでなく、ハードウェアとサービスの相互依存を強化し、顧客の囲い込みにつながる可能性がある。

また、AIを搭載したM4チップの導入は、Macの競争力を向上させる要因の一つとなるだろう。AI性能の向上により、クリエイター向け市場や企業向け需要の拡大が期待される。今後の成長を見極める上で、AppleのAI戦略がどのように進化するかが注目される。

Source:Barchart.com