テスラ株が7週間連続で下落し、昨年12月の最高値488.54ドルから半値以下の約225ドルまで下落した。市場価値は8,000億ドル以上消失し、主要金融機関が目標株価を引き下げる中、Wedbush証券は逆に強気姿勢を維持している。
特に、マスク氏の政治活動が市場に不確実性をもたらしているが、Wedbushは「トランプ政権下の規制緩和がテスラに有利に働く」と分析し、目標株価を550ドルと設定。2025年には3万5,000ドル以下の新型車が登場し、自動運転技術の進展が企業価値を押し上げると見ている。
テスラは低価格モデルの開発や「セミ」トラックの生産を進め、中国市場でも好調を維持。技術面ではAIクラスターの導入を強化し、エネルギー事業も過去最高の業績を記録した。今後の成長は生産拡大と自動運転の進展に左右されるが、株価回復の可能性は依然高いと見られる。
テスラ株の下落要因と市場の懸念

テスラの株価は2023年12月の最高値488.54ドルから約225ドルまで急落し、7週間連続の下落を記録した。これにより市場価値は8,000億ドル以上失われ、バンク・オブ・アメリカやゴールドマン・サックスなどの大手金融機関が目標株価を引き下げる事態となった。特に、車両販売の減少や低価格モデルの発表遅延、モデルYの刷新に伴う生産停止、そして中国市場での競争激化が大きな懸念材料として挙げられている。
さらに、CEOであるイーロン・マスク氏の政治的動向が市場の不安を高めている。マスク氏はトランプ政権で「政府効率省(DOGE)」を率いる可能性が取り沙汰されており、その影響で反テスラ感情が高まり、抗議活動や施設破壊の動きも発生している。こうした政治的リスクがテスラのブランドイメージや消費者の購買意欲に悪影響を及ぼす可能性は無視できない。
一方で、技術開発や生産能力の強化は着実に進んでおり、新たな低価格モデルや自動運転技術の進化が株価の回復要因となる可能性もある。市場は短期的な政治リスクと長期的な成長見通しの間で揺れており、テスラ株は依然として投資家の関心を集め続けている。
Wedbushの強気予測とテスラの成長戦略
テスラの株価下落が続く中、Wedbush証券は一貫して強気の姿勢を示している。同社はテスラを「ベストアイデア」リストに追加し、目標株価を550ドルと設定。特に、トランプ政権が誕生すれば規制緩和が進み、テスラの自動運転技術にとって有利に働く可能性があると指摘している。また、2025年夏までに3万5,000ドル以下の新型モデルが登場すると予測し、これが販売台数の増加と企業価値の上昇につながるとの見方を示した。
生産面でもテスラは積極的な投資を続けている。アメリカ国内では「セミ」トラックの工場建設が進行しており、2025年後半に初回生産が予定されている。また、ギガファクトリー・テキサスでは「サイバーカブ(Cybercab)」の生産ラインが整備され、2026年から量産が始まる見込みだ。さらに、中国市場では2024年第4四半期に過去最高の納車台数を記録し、モデルYが年間を通じて最も売れた車となった。
一方で、利益率の低下がテスラの懸念材料として浮上している。2024年の総利益率は17.9%で、2022年の25.6%から大幅に低下。営業利益率も16.8%から7.8%に縮小しており、成長戦略の持続性が問われる局面となっている。長期的には自動運転技術の進展やエネルギー事業の拡大がカギとなるが、短期的なコスト管理が課題となるだろう。
テスラの今後の展望と市場評価
テスラは2025年に向けて新モデルの投入や生産体制の強化を進め、年間生産能力を約300万台に拡大する計画を打ち出している。従来の低価格モデル計画を見直し、次世代プラットフォームの要素を取り入れることで、資本効率を高める方針だ。しかし、この変更により期待されていたコスト削減効果は限定的となる可能性がある。
エネルギー事業も拡大を続けており、PowerwallとMegapackの導入量は11.0GWhに達し、過去最高の営業利益を記録した。上海の新しいメガファクトリーは2024年第1四半期から生産を本格化し、今後も高い需要に対応する計画だ。また、テスラはAIインフラの強化にも力を入れており、ギガファクトリー・テキサスには5万台のNvidia H100 GPUを搭載したAIトレーニングクラスター「Cortex」を導入。自動運転技術「FSD(Supervised)V13」の精度向上を図っている。
しかし、テスラのPER(株価収益率)は依然として78.9倍と高く、株価が割高と判断する向きも多い。40人のアナリストのうち「強い買い」は14人、「買い」は3人にとどまり、中立や売り評価も増加している。テスラが短期的な課題を克服し、株価の回復を実現できるかどうか、市場は引き続き注視している。
Source:Barchart