AIブームの勢いが鈍化する中、エヌビディア(NVDA)の成長に陰りが見え始めている。株価は景気後退の影響を受けて下落し、投資家は新たな選択肢を模索している。その中で浮上したのがブロードコム(AVGO)だ。同社は2025年第1四半期決算で市場予想を上回る好業績を記録し、AI関連売上は前年比77%増の41億ドルに達した。
さらに、ブロードコムはアルファベットやメタと提携し、カスタムAIチップの開発を加速。特定用途向け集積回路(ASIC)によるコスト優位性が、エヌビディアのGPU依存を低下させる可能性を秘めている。ただし、エヌビディアはソフトウェアとの統合性で強みを維持し、大規模なシェア喪失は考えにくい。AI市場の成長鈍化が両社の今後を左右するが、ブロードコムの台頭は投資家に新たな選択肢を提示している。
ブロードコムが示したAI市場での成長力 予測を上回る決算の背景

ブロードコム(AVGO)は2025年第1四半期決算において、市場予想を上回る成長を遂げた。売上高は前年同期比25%増の149.2億ドルに達し、AI関連の売上は41億ドルと前年比77%増加。調整後EBITDAも41%増の101億ドルに達し、営業利益率は66%を記録した。これは、エヌビディア(NVDA)の成長率が鈍化する中で、AI市場におけるブロードコムの存在感が増していることを示している。
この成長の要因として、AI向け半導体市場の多様化が挙げられる。ブロードコムはGPU市場のリーダーであるエヌビディアとは異なり、特定用途向け集積回路(ASIC)に注力している。これにより、ハイパースケールデータセンターを運営する企業は、AIワークロードに最適化されたチップを選択できるようになった。特に、アルファベット(GOOG)やメタ(META)などがASICの採用を進めていることが、ブロードコムの成長を後押ししている。
しかし、エヌビディアの強みが消えたわけではない。同社はAIチップだけでなくCUDAソフトウェアの提供を通じ、ハードウェアとソフトウェアの統合による優位性を維持している。ブロードコムの成長はAI市場の分散化を示唆するが、エヌビディアの市場支配が容易に崩れるわけではない。AI市場のさらなる拡大が、両社の競争関係をどのように変化させるかが注目される。
ハイパースケール企業の選択がエヌビディア依存を揺るがす
エヌビディアが市場で圧倒的なシェアを誇る中、ハイパースケール企業の動向が新たな転機となりつつある。アルファベット、メタ、バイトダンスなどの大手テック企業は、汎用的なGPUではなく、カスタムAIチップの開発を加速している。これらの企業がエヌビディアから独立した半導体戦略を推進することで、AI市場の構造に変化が生じている。
ブロードコムは、この変化の波を捉えている。同社のASIC技術は、AIタスクに特化した設計が可能であり、エネルギー効率やコスト面での優位性を提供する。すでにアルファベットのTrillium TPUの設計を支援するなど、カスタムソリューションへの関与を深めている。これは、エヌビディアのGPUを標準とする市場環境において、新たな競争軸を生み出す可能性がある。
しかし、エヌビディアの強みは単なるハードウェアにとどまらない。同社のCUDAエコシステムは、多くの開発者や研究機関にとって不可欠な存在となっており、単純なハードウェアの競争だけでは市場シェアの大幅な移行は難しい。ハイパースケール企業の選択は、エヌビディア依存の低下を促進するが、同時にエヌビディアもカスタムチップ市場への対応を進める可能性がある。今後の市場競争は、性能とコストのバランスだけでなく、ソフトウェアとの統合力が重要な要素となるだろう。
AI投資の視点から見るブロードコムとエヌビディアの違い
AI関連株への投資を考える際、ブロードコムとエヌビディアの戦略の違いを理解することが重要だ。エヌビディアはAIインフラ全体を支えるプラットフォーム企業としての強みを持つ一方、ブロードコムは特定用途向けソリューションで市場を開拓している。この違いは、投資家がどのような視点でポートフォリオを組むべきかを示唆する。
現在の株価バリュエーションを見ても、両社の立ち位置は異なる。エヌビディアのPER(株価収益率)は38.7倍、ブロードコムは39.5倍と大きな差はない。しかし、エヌビディアの目標株価は現在価格から約57%の上昇余地があるのに対し、ブロードコムは約26%にとどまる。これは、エヌビディアが依然として市場の成長をけん引すると見られていることを示している。
一方で、ブロードコムの財務面には課題がある。長期負債は663億ドルとエヌビディアの85億ドルを大きく上回り、財務健全性の面では劣る。しかし、短期的な成長トレンドではブロードコムが有利に働く可能性があり、AI市場の変化に敏感な投資家にとっては魅力的な選択肢となるだろう。長期的なポートフォリオの中心銘柄としては依然としてエヌビディアが優位に立つが、ブロードコムは戦略的な分散投資の選択肢として注目に値する。
Source:Barchart.com