テスラ(TSLA)の株価は3月10日、14%の下落を記録し、過去3か月での累計下落率は45%に達した。背景には、ドナルド・トランプ前大統領の関税政策による景気後退懸念があるほか、イーロン・マスク氏との関係性が消費者離れを引き起こしているとの指摘がある。
UBSのアナリストであるジョセフ・スパク氏は、テスラの売り評価を維持し、目標株価を225ドルへと引き下げた。納車台数の減少が見込まれる中、同社のプロモーション戦略が需要を押し上げる可能性があるが、利益率の低下が懸念されるとして慎重な見方を示している。
一方、ウォール街のアナリストの間では意見が分かれており、テスラのコンセンサス評価は「ホールド(中立)」で、平均目標株価は353ドルとされる。市場の不透明感が続く中、テスラ株の今後の動向に注目が集まる。
テスラ株の急落 景気後退懸念と企業戦略の影響

テスラ(TSLA)の株価は3月10日に14%の急落を記録し、過去3か月での下落率は45%に達した。背景には、ドナルド・トランプ前大統領の関税政策による景気後退の懸念がある。特に、トランプ氏が再び大統領に就任した場合、中国製EVへの高関税導入などが現実となれば、業界全体への影響は避けられないと見られている。
また、イーロン・マスク氏の政治的立場が、テスラのブランドイメージに影響を与えているとの指摘もある。マスク氏はトランプ氏と一定の関係を持つとされるが、一部の消費者や投資家にとってはこの関係が懸念材料となっている。政治的要因が直接の売上に影響するケースは珍しくないが、EV市場の成長が鈍化する中、テスラはより明確な成長戦略を求められる局面にある。
UBSのテスラ株評価引き下げ 納車台数と利益率の見通し
UBSのアナリストであるジョセフ・スパク氏は、3月10日にテスラ株の「売り」評価を維持し、目標株価を225ドルに引き下げた。これは現在の株価よりもさらに2%の下落余地があることを示している。同氏は、2024年第1四半期の納車台数が前四半期比で26%減少する可能性を指摘し、特にヨーロッパと中国市場での需要低迷を懸念している。
加えて、テスラは低価格モデルの投入を計画しているが、これが既存の「モデル3」や「モデルY」の販売を食い潰す可能性があると見られている。価格の引き下げは短期的な販売促進には寄与するが、利益率を圧迫するリスクが高い。テスラはこれまで高い利益率を維持してきたが、価格競争が激化するEV市場において同じ戦略が通用するかは不透明だ。
一方で、ウォール街のアナリストの間では見解が分かれている。テスラ株のコンセンサス評価は「ホールド(中立)」とされ、平均目標株価は353ドルと、現在の水準を大幅に上回る。これは一部の市場関係者が、テスラの成長力を依然として評価していることを示唆している。
テスラの今後の展望 成長戦略と市場の不確実性
テスラの2024年の納車台数は、UBSの予想によれば170万台とされ、前年の実績178万9226台を下回る見通しだ。これはテスラが成長鈍化の局面に入りつつあることを示している。EV市場全体が成熟しつつある中で、従来の高い成長率を維持することは容易ではない。
テスラは販売促進のために価格引き下げを積極的に進めているが、これにより利益率が圧迫される可能性が高い。UBSのレポートでは、2025年の利益率低下が懸念されており、低価格モデルの投入がその要因となる可能性が指摘されている。短期的には需要を喚起できるかもしれないが、中長期的に収益構造が悪化するリスクがある。
テスラはこれまで市場をリードしてきたが、競争環境の変化が企業の成長を揺るがしている。EV市場の需要減速、価格競争、政治的要因といった複数のリスクが重なる中で、同社がどのような戦略を打ち出すのかが今後の焦点となる。
Source:Barchart