Amazonで販売されたAMD Ryzen 7 9800X3Dの偽造品が、PCハードウェア専門家によって発見された。本件は、2025年2月25日にドイツのAmazon.deで注文され、3月4日に到着したもの。外箱は正規品と変わらず、未開封の状態だったため、一般消費者が判別するのは困難だった。しかし、開封するとプロセッサの外観が本物と大きく異なり、不自然なヒートスプレッダーや誤った刻印が確認された。
偽造品の正体は2011年製のAMD FX-4100であり、ラベルを貼り替える手法で詐欺が行われた可能性が高い。特に問題視されるのは、この商品が第三者出品ではなく、Amazon自身によって販売された点である。返品された偽造品が再販されたことが疑われ、Amazonの検品体制に疑問が残る。本件は、PCユーザーにとってハードウェア購入時の慎重な確認が不可欠であることを改めて示している。
偽Ryzen 7 9800X3Dの実態と詐欺の手口

今回Amazonで販売された偽のRyzen 7 9800X3Dは、見た目こそ正規品に近いものの、中身はまったくの別物であった。購入者であるHardware BustersのAris Mpitzipoulos氏が検証した結果、この偽物は2011年製のAMD FX-4100プロセッサであり、ラベルを貼り替えることで最新のCPUに偽装されていたことが判明した。
特に注目すべきは、外箱が完全に正規品と同じものであった点だ。密封されたリテールボックスに入っていたため、開封するまでは偽物であると疑う要素はほとんどなかった。プロセッサ本体のデザインもAMD製品に似せており、表面の印字も精巧に加工されていた。しかし、細部を確認すると、ヒートスプレッダーの形状や刻印のフォント、底面のピン配置に不審な点が多く見られた。
さらに、ラベルに記載された製造国が「中国」、製造年が「2020年」となっており、実際のRyzen 7 9800X3Dが2025年モデルであることと一致しなかった。この点からも、単なる外観の偽装にとどまらず、内部の識別情報までも改ざんされていた可能性が高い。今回のようなケースでは、見た目だけでなく、CPUの型番や製造情報を詳細に確認することが不可欠となる。
Amazonの販売管理体制と偽造品流通の背景
今回のケースで特に問題視されるのは、この偽造CPUがAmazonの第三者出品ではなく、Amazon自身が販売したものであった点だ。通常、Amazonは返品された商品を一定の検査の後に再販するが、ハードウェアの専門的なチェック体制が不十分であるため、偽物が流通してしまった可能性がある。
考えられる手口のひとつとして、購入者が本物のRyzen 7 9800X3Dを入手した後、中身をFX-4100に入れ替え、パッケージを密封して返品したというケースが挙げられる。Amazonは返品商品を再販する際に開封せずに出荷することが多いため、このような詐欺が成功しやすい。特に高価なPCパーツでは、悪意ある返品詐欺が発生するリスクが高まる。
また、近年では精巧な偽造品が市場に流通しており、2025年1月にはTom’s Hardwareが中国から出回った「精巧な偽Ryzen 7 9800X3D」について報じている。こうした偽造品は、正規品のラベルや印字技術を模倣することで、簡単には判別できないものとなっている。このような背景を考慮すると、Amazonの販売管理体制の見直しだけでなく、購入者自身が慎重に検品を行う必要がある。
偽造品を避けるための対策とPCユーザーの注意点
今回の事件は、PCユーザーに対してハードウェア購入時の慎重な対応を求める警鐘となる。特にオンラインでの購入では、信頼できる販売元を選ぶことが重要だ。Amazonのような大手プラットフォームであっても、必ずしも全ての商品が正規品とは限らない。
まず、購入後は速やかに商品の外観や識別情報を確認することが不可欠である。Ryzen 7 9800X3Dのような高性能CPUの場合、外箱の正規性だけでは判断できないため、開封後にプロセッサ本体の形状や刻印、製造情報を精査するべきだ。また、異常に安価な価格設定の商品には警戒が必要である。実際に、2024年のブラックフライデーやサイバーマンデー期間中には、定価の半額以下で販売されていたRyzen 7 9800X3Dが存在した。こうしたケースでは、価格だけでなく販売元の実績を確認することが重要となる。
加えて、返品詐欺のリスクを考慮し、未開封状態で長期間保管するのではなく、購入直後に動作確認を行うことが望ましい。今回の事例では、Amazonの返品手続きに最大3週間を要するとされており、時間が経過すると返金を受けることが難しくなる可能性がある。高額なPCパーツを購入する際は、迅速な確認と適切な対応を徹底することが求められる。
Source:Windows Central