米国株式市場が今後50%の急落を迎える可能性があると、著名ストラテジストのクリス・ヴァーミューレン氏が警鐘を鳴らしている。S&P500は2025年2月のピークから約4兆ドルを失い、市場の恐怖指数VIXも急上昇。特に、テスラやエヌビディアを含む主要ハイテク株が天井形成の兆候を示し、市場全体に不安が広がっている。

ヴァーミューレン氏は、3月末にかけて短期的な反発の可能性を指摘しつつも、大規模な下落の序章に過ぎない可能性が高いと述べる。過去の金融危機と比較し、S&P500は40~50%下落し、2600~2700ポイントまで落ち込む可能性があると予測。さらに、市場暴落時の戦略として「インバースETF」の活用を推奨している。

市場の混乱が続く中、ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブ・ハンケ氏も米経済が「崖から転落しつつある」と指摘。だが一方で、モルガン・スタンレーは2025年後半に市場が回復し、S&P500が年末に6500ポイントを目指す可能性を示唆している。

株式市場に忍び寄る急落の兆候 主要指数とVIXが示す不安要因

S&P500は2025年2月のピークから約4兆ドルの時価総額を失い、市場の不安が高まっている。加えて、市場の恐怖指数であるVIXは19%の上昇を記録し、昨年12月以来の高水準に到達。これは投資家が市場の急激な変動を警戒し始めていることを示唆する重要なシグナルだ。

クリス・ヴァーミューレン氏は、株式市場全体に売り圧力が強まっていると指摘し、特にニューヨーク証券取引所では売りと買いの比率が7対1に達していると分析。このような売りの勢いは、過去の大暴落時と類似しており、さらなる下落を警戒する声が広がっている。

現在の状況は、2008年の金融危機やITバブル崩壊と比較されるが、今回はハイテク株の急成長によって生じた市場の歪みも影響している。特に「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるテスラやエヌビディアなどの主要ハイテク銘柄が勢いを失いつつあり、市場全体を押し下げるリスクがある。こうした背景を踏まえ、ヴァーミューレン氏は短期的な反発を示唆しつつも、最終的には市場が40~50%の下落に直面する可能性があると警告している。

株式市場の暴落にどう対応するべきか インバースETFの活用と現金ポジションの重要性

市場の急落に直面した際、投資家が取るべき戦略として、ヴァーミューレン氏は「インバースETF」の活用を挙げている。これは市場が下落する際に価値が上昇する金融商品であり、特に短期的な相場の変動を利用した戦略に適している。市場全体が弱気相場へ移行する局面では、リスクを抑えながら利益を狙う手段として注目される。

また、彼は「最も安全なのは現金」とも述べており、不安定な市場環境では流動性を確保することが重要であると強調。特に、短期的な反発が見込まれるとしても、それが一時的なものであり、さらなる下落への布石となる可能性があるため、資産の防衛が優先されるべきだとしている。

市場の変動が激しい状況では、投資家は冷静な判断が求められる。急落の波をうまく乗り越えるためには、リスクヘッジ手段を活用しながら、無理な投資を控え、適切なポートフォリオ管理を行うことが重要だ。特に、過去の大暴落の例を参考にしながら、自身の投資スタイルに合わせた戦略を立てる必要がある。

2025年後半の市場回復はあるのか モルガン・スタンレーの見通し

一方で、モルガン・スタンレーは株式市場が2025年後半に回復する可能性を示唆している。同社の予測によれば、S&P500は年末に向けて6500ポイントを目指す可能性があり、前半の下落を乗り越えた後に上昇トレンドへ転じるシナリオが描かれている。

この見解は、過去の市場サイクルを考慮したものであり、短期的な下落が長期的な投資機会につながる可能性を示唆している。特に、金利政策や企業業績の回復が市場の反発を後押しする要因として期待されている。

しかし、この予測が実現するかどうかは、現在進行中の市場の動向次第である。ヴァーミューレン氏の指摘するように、現在の株式市場は2008年の金融危機やITバブル崩壊と類似する状況にあり、単なる調整では済まない可能性も否定できない。投資家は回復シナリオに楽観的になりすぎず、リスク管理を徹底することが求められる。

Source:Finbold