Gigabyteは、自社の最新マザーボード「Z890 Aorus Elite WiFi7 Ice」に搭載されたEZ Latch Plus機構の耐久性を示す動画を公開した。映像ではGPUの装着・取り外しを100回繰り返しても、PCIeピンに損傷が見られないことが強調されている。この発表は、自社技術の優位性を示す狙いがあるが、同時にAsusのQ-Release Slim機構が引き起こしたGPU損傷問題を意識したものと考えられる。
AsusのQ-Release Slimは、GPUを簡単に取り外せる仕組みとして導入されたが、一部のユーザーからPCIeコネクタが傷つくとの報告が相次いでいた。Asusは「見た目の問題に過ぎず、機能には影響しない」と説明したが、60回以上の挿抜を繰り返した際の摩耗によるものと認めている。一部の中国ユーザーには交換対応が行われたものの、その他の地域での対応は明らかになっていない。
クイックリリース機構は自作PC市場での利便性向上に寄与する一方、大型GPUや水冷システムの普及に伴い、物理的なアクセスのしやすさや耐久性への要求も高まっている。GigabyteのEZ Latch Plusが、こうした問題に対する一つの解決策となるのか、今後の評価が注目される。
Gigabyteが公開したEZ Latch Plusの耐久テストとその狙い

Gigabyteは、X(旧Twitter)上で公開した動画を通じて、自社のEZ Latch Plus機構の耐久性をアピールした。映像では、Z890 Aorus Elite WiFi7 IceマザーボードにGPUを装着・取り外しする様子が収められ、100回の繰り返しにもかかわらずPCIeピンに損傷が見られないことが強調された。この発表は、単なる製品プロモーションを超え、AsusのQ-Release Slim機構が引き起こしたGPU損傷問題への対抗意識が含まれていると考えられる。
EZ Latch Plusは、ボタンを押すだけでGPUの固定を解除できる仕組みであり、従来のラッチ解除方式と比べて操作性の向上を図っている。特に大型化するGPU市場において、組み立て時の利便性は重要な要素となる。一方で、Gigabyteの動画が示す通り、この機構は耐久性においても優位性を強調しており、ユーザーに安心感を提供する狙いがあると考えられる。
今回の発表は、単なる技術的デモンストレーションではなく、競合他社への牽制としての意味合いも含まれている。AsusのQ-Release Slimが耐久性の問題を指摘されたことを踏まえ、Gigabyteは自社製品の優位性を明確に打ち出すことで市場での信頼を高めようとしているとみられる。
AsusのQ-Release Slim機構が引き起こした問題とその対応
Asusが導入したQ-Release Slim機構は、GPUをわずか2度ひねるだけで取り外せる利便性の高い設計であった。しかし、今年1月以降、多くのユーザーから、この機構を使用することでGPUのPCIeコネクタが傷つくという報告が相次いだ。これに対し、Asusは公式声明を発表し、コネクタの損傷は見た目の問題に過ぎず、機能や性能には影響しないと説明した。しかし、問題は60回以上の装着・取り外しによって顕著になるとも認めており、一部のユーザーの懸念を払拭しきれていない。
Asus中国は、Q-Release Slimに関連する問題が発生した場合、該当するユーザーに対し、マザーボードの交換対応を行う方針を示している。しかし、この対応は中国市場に限定されており、その他の地域での補償や修理対応については明確な指針が示されていない。そのため、海外ユーザーの間では、自社製品のサポート方針に対する不満の声も見受けられる。
この問題が発生した背景には、近年のGPUの大型化があると考えられる。従来の取り外し機構では、大型GPUの装着や取り外しが困難になりつつあり、クイックリリース機能の導入は自然な流れであった。しかし、設計の最適化が不十分であった場合、耐久性や部品の摩耗といった課題が生じる可能性がある。今後、各メーカーがこれらの問題をどのように解決していくのかが注目される。
クイックリリース機構の進化と耐久性への新たな課題
近年、PCパーツの取り付け・取り外しの利便性向上を目的としたクイックリリース機構が急速に進化している。Asusは従来のQ-Release機構に加え、より簡単に取り外せるQ-Release Slimを導入し、GigabyteもEZ Latch Plusを発表するなど、競争が加速している。特に、RTX 4090やRTX 5090といった大型GPUの普及に伴い、従来の手動ラッチ方式では不便を感じるユーザーが増えており、ワンタッチで着脱できる機構の需要が高まっている。
一方で、こうした機構の導入は、単なる利便性の向上だけでなく、新たな耐久性の課題をもたらしている。AsusのQ-Release Slim問題はその一例であり、利便性と耐久性のバランスをどのように取るかが今後の重要な課題となる。クイックリリース機構は、パーツの摩耗や物理的な衝撃を受けやすい部分であるため、適切な設計が求められる。
また、こうした機構はハードウェア設計だけでなく、PCケースのレイアウトにも影響を与える。特に、大型クーラーや水冷システムを搭載したPCでは、ボタンの配置や操作性が制限される可能性がある。そのため、単に新機能を追加するだけではなく、ユーザーが実際に使用する環境に合わせた設計が求められるだろう。今後、各メーカーがどのような改良を施し、市場のニーズに応えていくのかが注目される。
Source:Tom’s Hardware