Appleは、iPhone、iPad、Macの全デバイスにわたる大規模なソフトウェアのデザイン変更を計画している。これは過去数年間で最も大胆な再設計となり、ユーザーインターフェースの一貫性と操作性の向上を図るものだ。
iOS 19およびiPadOS 19(コードネーム「Luck」)、macOS 16(コードネーム「Cheer」)の新デザインには、より直感的なナビゲーションが導入される見込み。特に、現在デバイスごとに異なるUIデザインが統一され、ユーザーがシームレスに操作できる環境を整える。visionOSの要素を取り入れた設計が進められる可能性があり、Appleのデザイン戦略に新たな方向性をもたらすと見られる。
この刷新の背景には、成長の鈍化を打破する狙いもある。Appleは、iPhoneの売上減少に直面する一方、サービス部門の収益増加を維持。新たなソフトウェアの魅力によって、エコシステム全体の価値を高める意図がある。正式発表は、6月のWWDCで行われる予定だ。
Appleのソフトウェアデザイン刷新 その背景と狙い

Appleは、iOS、iPadOS、macOSのユーザーインターフェースを統一する大規模な再設計を進めている。BloombergのMark Gurmanによると、iOS 19およびiPadOS 19は「Luck」、macOS 16は「Cheer」というコードネームで開発されており、ナビゲーションや操作の簡素化を目指している。特に、異なるデバイス間の一貫性を高めることが、今回のアップデートの主要な目的とされる。
Appleの現行OSでは、macOS、iOS、visionOSがそれぞれ異なるデザイン言語を採用しており、ユーザー体験に統一感を欠いていた。特に、visionOSでは円形アイコンやシンプルなウィンドウ管理が特徴的だが、これらの要素が今後のAppleのデザインに影響を与える可能性がある。
Appleは、完全なOS統合は行わないものの、視覚的な統一と操作性の向上によって、よりスムーズなデバイス間の移行を実現する狙いだ。このデザイン刷新の背景には、Appleの成長戦略がある。2025年第1四半期の業績では、サービス部門が好調だった一方、iPhoneの売上は2024年のホリデーシーズンに減少した。
新たなソフトウェアデザインによって、ハードウェアの魅力を高めるとともに、エコシステム全体の価値を強化し、ユーザーの囲い込みを図る意図がうかがえる。
Vision Proのデザインが与える影響
Appleの新たなUIデザインには、Vision Proの要素が影響を与える可能性が指摘されている。visionOSは、3D奥行きのあるインターフェースや、円形アイコンを特徴とする没入型のデザインを採用しており、従来のiOSやmacOSとは大きく異なる。
このデザイン言語の一部が、次期OSに取り入れられることで、Appleの全デバイスに共通する新たな視覚的アイデンティティが生まれる可能性がある。Vision Proの販売実績は期待を下回っているものの、Appleにとっては重要な試験的プロジェクトでもあった。
このプラットフォームで得られたUI/UXの知見を、他のOSにも応用することで、より直感的な操作体験の実現を目指すと考えられる。特に、デバイスをまたいでシームレスに使えるデザインは、今後のApple製品の重要な差別化要素になるだろう。
ただし、visionOSのインターフェースがそのまま他のOSに適用されるわけではない。例えば、Vision Proの操作は主に視線とジェスチャーによって行われるが、iPhoneやMacではタッチやマウス・キーボードが主体である。したがって、visionOSのデザイン要素をどのように最適化し、各デバイスに応用するのかが、今後のAppleのUI設計の鍵となる。
Appleのデザインチームと今後の課題
今回の大規模なデザイン刷新は、Appleのデザインチームにとって最大の挑戦の一つとなる。現在、このプロジェクトを率いるのは、Appleのベテラン幹部であり、ファッションおよびデザイン分野で豊富な経験を持つAlan Dye氏だ。彼は、iOS 7のインターフェースやApple WatchのUIデザインを手がけた実績を持ち、Jony Ive氏が退社して以来、Appleのデザイン部門を牽引している。
Dye氏の指揮のもと、Appleのデザインチームは約300人規模で構成されており、iOS、iPadOS、macOSの各プラットフォームの設計に取り組んでいる。今回のデザイン変更は、単なるビジュアルの刷新にとどまらず、ユーザーの利便性向上にも重点を置く必要がある。そのため、機能性とデザインのバランスをどう取るかが、プロジェクト成功の鍵となるだろう。
Appleの戦略は、ハードウェアとソフトウェアの融合によるエコシステムの強化にある。今回のUI刷新によって、ユーザーにより直感的で快適な体験を提供できれば、Apple製品の魅力はさらに高まるだろう。その一方で、慣れ親しんだ操作感が大きく変わることで、一部のユーザーからの反発を招く可能性もある。
WWDCでの正式発表後、Appleがどのような説明を行い、ユーザーの期待に応えるかが注目される。
Source:TechSpot