「オマハの賢人」ウォーレン・バフェットが、2024年第1四半期に約2億6600万ドル相当のウルタ・ビューティ株を取得したものの、わずか数カ月でほぼ全株を売却した。その判断は的中し、ウルタ株は1年間で35%の下落を記録。

同社の成長鈍化の背景には、新たな競争の激化や、消費者の美容製品に対する需要の低迷がある。特に、経済不安が高まる中で想定されていた「リップスティック効果」が機能せず、高価格帯の商品が売れにくくなっている点が響いた。

3月13日に予定される第4四半期決算では、売上・利益ともに前年同期比減少が見込まれている。市場のアナリストはウルタ株の評価を「ホールド」とするが、バフェットの迅速な撤退を考えれば、今が買い時かどうかは慎重に見極めるべきだろう。


バフェットがウルタ・ビューティを売却した背景とは

ウォーレン・バフェットが2024年第1四半期に取得したウルタ・ビューティ株を、短期間でほぼすべて手放した理由は何か。その背景には、同社の成長鈍化と市場環境の変化がある。

ウルタ・ビューティは長年にわたり高い成長を維持し、新型コロナウイルスの影響で化粧品需要が急増した2020年以降、株価は4倍以上に上昇した。しかし、2024年に入り状況は一変。インフレの進行と消費者の支出抑制により、美容関連商品の需要が減少した。さらに、エスティ・ローダー(NYSE: EL)などの高級ブランドも苦戦しており、ウルタの販売戦略にも影響を及ぼした。

また、競争の激化も問題となった。全米50州に1,400以上の店舗を展開するウルタ・ビューティは、セフォラをはじめとする競合ブランドとの競争が激化する中、成長鈍化が顕著になった。特に高級化粧品市場では、新規参入ブランドが1000以上にのぼり、ウルタの市場シェア拡大が難しくなった。バフェットがウルタ株を早期に売却したのは、こうした要因を考慮し、将来的な成長余地が限られると判断した可能性がある。

ウルタ・ビューティの決算と市場の評価

ウルタ・ビューティは2024年第4四半期の決算発表を3月13日に予定している。市場予測では、売上が34.7億ドルで前年比2.5%減、1株当たり利益(EPS)が7.15ドルで11.5%減となる見込みだ。これは、過去の成長率と比較して明らかに鈍化している。

第3四半期時点での売上成長率はわずか1.7%であり、特に既存店売上高の伸びが0.6%にとどまるなど、消費者の購買意欲の低下が顕著だった。ウルタの顧客は引き続き店舗を訪れているものの、価格が抑えられた商品へのシフトが進んでいる。CEOのデイブ・キンボール氏も、消費者の購買行動の変化に警戒を示しており、企業としての成長戦略の見直しが求められている。

ウォール街のアナリスト30人によるコンセンサス評価は「ホールド(中立)」となっており、1年後の目標株価は459ドルとされる。これは現在の株価と比較すると約28%の上昇余地がある。しかし、インフレや経済の不透明感が続く中で、売上回復の見込みが不透明であるため、市場は慎重な姿勢を崩していない。

ウルタ株は今後の投資対象として適切か

ウルタ・ビューティはオムニチャネル戦略を強化し、店舗とECの融合を推進している。また、香水やスキンケア製品の品揃えを拡充し、新たな顧客層の獲得を目指している。特に、サロン事業の成長が見込まれており、既存店の来店数回復も明るい材料となる。

しかし、現在の市場環境では楽観視できない要素が多い。経済の先行きが不透明な中、消費者は必需品以外の支出を抑える傾向にあり、高価格帯の化粧品が売れにくくなっている。また、関税の影響や政府機関の人員削減など、外部環境のリスクも大きい。

バフェットがウルタ株を早期に売却した判断は、同社の成長の天井が見えたと考えたためかもしれない。短期的には市場の不透明感が強く、今すぐ投資する理由は乏しい。しかし、長期的には安定したビジネス基盤を持つ企業であり、適切なタイミングで再評価すべき銘柄といえるだろう。

Source: 24/7 Wall St.