Appleが年内に発表するとされるM5 iPad Proは、M4モデルと比べて顕著な進化がないと報じられている。唯一の変更点はM5チップへの更新だが、その性能向上幅は限定的とされ、大幅な改善には至らない見通しである。
また、OLEDパネルの出荷数も低迷が続き、M5モデルの販売を後押しする要素とはなりにくい。ハードウェアの刷新も行われず、内部仕様の多くはM4と変わらないため、消費者の買い替え需要を喚起するのは難しい状況だ。
さらに、Appleは高価格帯モデルの販売不振を補うべく、廉価版iPadの売上に依存する構図となっている。M5 iPad Proの市場投入が遅れる可能性も指摘される中、Appleがタブレット市場の成長を維持できるかが問われることになる。
M5 iPad Proの性能向上は限定的 M4との差別化は困難か

M5 iPad Proに搭載されるM5チップは、TSMCの3nm「N3P」ノードで製造される。しかし、M4チップの「N3E」ノードと比較しても、消費電力の削減は10%程度、パフォーマンス向上は5%前後にとどまるとされている。これにより、処理速度の飛躍的な向上は期待しにくく、実使用における違いも体感しづらいものとなる可能性がある。
また、Meritz Securitiesの調査によれば、M5モデルの内部ハードウェアに大きな変更はなく、OLEDパネルもM4と同じタンデムOLED技術が採用される見込みだ。これは、Appleが新しいディスプレイ技術を導入せず、既存の構造を維持する戦略を取っていることを示唆している。
Appleはこれまで、新モデルを投入する際に大幅な性能向上や新機能の追加を行うことで市場の関心を集めてきた。しかし、M5 iPad Proに関しては、プロセッサの進化が小規模にとどまり、その他の仕様も据え置かれるため、消費者が買い替えを決断する要素に欠ける状況だ。
特に、M4 iPad Proで既に大きな変化を遂げたことを考えると、M5モデルは現行機種との差別化に苦戦する可能性がある。
OLEDパネルの需要低迷 高価格帯モデルの販売が伸び悩む要因
AppleはM4 iPad Proの発売に際し、サムスンとLGから約900万枚のOLEDパネルを調達する計画だった。しかし、市場の需要が想定よりも低調であったため、実際の出荷数は570万枚に縮小された。この傾向はM5モデルでも続くとされ、2025年のOLEDパネルの出荷量はさらに減少し、550万枚程度にとどまる可能性がある。
これは、M4 iPad Proの価格が高額であったことが要因と考えられる。11インチおよび13インチモデルはいずれもMacBookと同等の価格帯に設定されており、タブレットとしての需要が限定的になっていた。特に、iPadは高性能化が進む一方で、一般消費者にとってはノートPCの代替としての価値が明確でないという課題がある。
Appleは近年、タブレット市場の成長を維持するために低価格モデルにシフトしつつある。2025年第1四半期には、廉価版iPadが主力となり、15%の成長を達成したことがその証左といえる。こうした状況を踏まえると、M5 iPad Proの販売が低迷する場合、Appleはより手頃な価格帯のiPadシリーズを軸に戦略を組み立てていく可能性が高い。
M5 iPad Proの発表時期に遅れの可能性 MacBook Proが優先されるか
AppleはM4 iPad Proを従来よりも早いタイミングで発表した。これは、新たなタンデムOLED技術やM4チップの性能向上を強くアピールする意図があったと考えられる。しかし、M5モデルについては発表スケジュールが変更される可能性が指摘されている。
特に、AppleはまずMacBook Proのアップデートを優先し、その後にM5 iPad Proを発表する流れを取る可能性が高い。これまでのAppleの動向を踏まえると、新しいMacBookシリーズの登場後にiPadが続くケースは珍しくなく、今回も同様のスケジュールが採用されるかもしれない。
また、一部の情報では、M5 iPad Proの発表が2026年にずれ込む可能性も示唆されている。これは、M4モデルと比べた際の技術的な進化が限定的であり、消費者に強い訴求力を持たせるための要素が不足しているためと考えられる。Appleとしても、十分な市場の関心を集められない製品を拙速に投入するよりも、適切なタイミングでリリースする戦略を取ることが重要になるだろう。
Source:Wccftech