2025年の米国経済は景気後退に陥るのか。BCAリサーチのピーター・ベレジン氏は、その確率を75%と見積もり、トランプ前大統領が導入を計画する関税が大きな要因になると指摘する。

関税の影響でインフレが再燃し、FRBの利下げ余地が狭まることで、企業活動の減速と消費者の購買力低下が加速する可能性がある。S&P500は過去1か月で約8%下落しており、今後さらに20%下落するリスクも示唆されている。

一方、ムーディーズのマーク・ザンディ氏は景気後退の確率を35%とし、EYパルテノンのグレゴリー・ダコ氏は目前の景気後退を否定。ただし、民間部門の減速は認めており、市場の不安定さは依然続く見通しだ。


トランプ関税が景気後退を加速させる要因とは

2025年の米国経済において、ドナルド・トランプ前大統領が計画する関税政策は大きな影響を与える可能性がある。BCAリサーチのピーター・ベレジン氏は、新たな関税がインフレを押し上げ、FRBの金融政策の選択肢を狭めると警告している。関税の導入は、輸入品のコスト増加を引き起こし、企業の生産コストと消費者物価の上昇を招く要因となる。

企業にとってはコスト増加により利益率の圧迫が懸念され、設備投資や雇用の抑制に繋がる可能性がある。一方で、消費者の視点では、輸入品の価格上昇が実質購買力の低下を引き起こし、消費の落ち込みが景気全体の冷え込みに波及する恐れがある。この影響はすでに市場に現れており、S&P500は1か月で約8%の下落、年初来で約5%の下落となっている。

FRBはこれまで金利の引き下げにより経済を支えてきたが、関税によるインフレ圧力の高まりが続けば、追加利下げの余地は限られることになる。金融緩和が難しくなれば、景気後退時の回復も長引く可能性がある。こうした状況を踏まえると、2025年の景気動向は関税政策に大きく左右されることになるだろう。

2025年の景気後退確率をめぐる専門家の見解の違い

2025年の米国経済について、専門家の見解は分かれている。BCAリサーチのベレジン氏は景気後退の確率を75%とし、ムーディーズのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は35%と予測している。EYパルテノンのグレゴリー・ダコ氏は、現在の時点では景気後退の兆候は見られないとの立場を取るなど、見方には温度差がある。

ベレジン氏は、米国経済がすでに景気減速の局面に入っており、2022年初頭と比べてもリスクが高まっていると指摘する。当時は雇用市場の強さや貯蓄の余剰が下支えとなっていたが、現在はそのクッションが薄れているため、景気後退の可能性は過小評価すべきでないとしている。一方、ザンディ氏は景気後退の可能性を「不快なほど高い」としつつも、経済の回復力を踏まえれば、今すぐの後退局面入りは必然ではないと慎重な姿勢を示している。

ダコ氏は景気後退の兆候を否定しながらも、民間部門の経済活動が鈍化していることを認めている。企業の設備投資の伸び悩みや消費の減少が続けば、短期的には景気が安定していても、中長期的には下振れするリスクがある。こうした専門家の意見の相違は、2025年の米国経済が極めて不透明な状況にあることを示している。

S&P500の行方と市場の懸念

株式市場は景気後退の兆候に敏感に反応している。S&P500は過去1か月で約8%下落し、ベレジン氏は年末時点の目標値を4,450と設定し、現在の水準からさらに20%下落する可能性を指摘している。市場の不安が高まる中で、景気後退が現実のものとなれば、株価は一段と下落し、投資家のリスク回避姿勢が強まるだろう。

現在の株式市場の動向を左右する要因として、関税の影響、FRBの金融政策、企業業績の悪化が挙げられる。関税が引き上げられれば企業収益が圧迫され、投資家心理が冷え込む可能性がある。さらに、FRBの利下げ余地が限られる中、金融政策による下支えが期待できなければ、株価の回復は遅れるだろう。

一方で、景気後退を回避できれば、過剰な悲観論が後退し、株式市場も安定を取り戻す可能性がある。市場はすでに一定のリスクを織り込んでいるが、今後の展開次第でさらなる調整が起こるか、市場が回復に向かうかは不透明な状況にある。投資家は引き続き、政策動向や経済指標に注視する必要があるだろう。

Source: Barchart.com