2025年初頭、米国の長期債市場は反発を見せ、デイリーチャートでは1月14日の安値110-13から3月4日の119-18へと上昇した。同様に、TLT ETFも1月の84.89ドルから3月の92.79ドルへと上昇し、短期的な強気トレンドを示している。しかし、長期トレンドは依然として弱気であり、2023年10月の安値を起点としたレンジ相場が継続中である。
債券市場に対する強弱両面の要因が交錯している。インフレ率は依然としてFRBの目標を超え、関税政策や米国債務の膨張、地政学リスクが債券にとっての懸念材料となる。一方、原油価格の下落がインフレ圧力を和らげる要因となり、また、株式市場の調整局面が資本の流れを変える可能性もある。
今後の焦点は、長期債先物が127-22、TLT ETFが101.64ドルのレジスタンスを突破できるかどうかにある。これを上抜けない限り、長期的な弱気トレンドの転換は確定しない。短期的な上昇が続くか、それとも再び下落へと転じるのか、市場は重大な局面を迎えている。
債券市場の短期的な上昇と長期的な懸念

2025年に入り、米国の長期債先物とTLT ETFは顕著な上昇を示している。1月14日に110-13の安値をつけた長期債先物は、3月4日には119-18まで上昇し、短期的な強気トレンドを形成している。TLT ETFも同様に、1月の84.89ドルから3月の92.79ドルへと上昇し、債券市場の一時的な回復を示唆している。この動きは、米連邦準備制度(FRB)の金融政策と市場のリスク回避姿勢が影響していると考えられる。
しかし、長期的な視点では、債券市場は依然として下落トレンドにある。2023年10月の安値以降、長期債先物とTLT ETFは横ばいのレンジ相場を形成しており、依然として下方圧力が強い。2020年の高値以降、長期債のトレンドは下落基調を維持しており、現在の上昇が長期的な転換点になるかどうかは不透明である。市場の注目は、今後の経済指標と政策動向に集まっている。
米国の債務総額は36.5兆ドルを超え、政府の財政状況が債券市場の不安要因となっている。さらに、地政学リスクの高まりや関税政策の影響により、インフレ圧力が継続する可能性がある。短期的な債券ラリーが続くとしても、127-22(長期債先物)や101.64ドル(TLT ETF)のレジスタンスを突破しなければ、長期的な弱気相場の流れを覆すことは難しい状況である。
インフレ圧力と市場の懸念材料
2025年3月時点で、米国のインフレ率はFRBの目標水準である2%を依然として上回っている。インフレ率の高止まりは、FRBの利下げを抑制する要因となり、債券市場にとっては逆風となる。政策金利が高止まりすれば、債券価格の上昇余地は限られる。加えて、関税政策が原材料価格に歪みをもたらし、一部のコスト上昇を引き起こしている。これにより、企業の生産コストが上昇し、価格転嫁が進めばインフレ率がさらに維持される可能性がある。
債券市場にとってもう一つの懸念材料は、米国の巨額な政府債務である。米国の債務総額は36.5兆ドルを突破し、市場の不安要因となっている。政府の借入が増加し続ければ、国債の利回りは上昇し、債券価格には下落圧力がかかる。また、国債の需要が低下すれば、金利の上昇がさらに加速する可能性もある。こうした状況では、債券市場の安定には時間がかかることが予想される。
地政学的なリスクも市場のボラティリティを高めている。国際情勢の不確実性が高まることで、安全資産としての国債への需要が一時的に高まることもあるが、長期的には経済のファンダメンタルズが債券市場の動向を決定づける。これらの要因を考慮すると、現在の債券ラリーは一時的な調整の範囲にとどまる可能性がある。
原油価格の下落と債券市場への影響
2025年に入り、原油価格は下落基調を続けている。NYMEX原油先物は、2023年5月の安値63.64ドルに接近し、エネルギー市場全体の価格低下が進んでいる。エネルギー価格の下落は、企業の生産コストや物流コストを引き下げ、インフレ圧力の低減につながる。これにより、FRBの金融政策がより緩和的になる可能性が生まれ、長期債の価格にとっては支援材料となる。
また、株式市場の動向も債券市場に影響を与えている。過去数週間、株価は史上最高値を記録したものの、最近は調整局面に入りつつある。リスク資産から債券市場への資本移動が進めば、長期債の需要が高まり、債券価格の押し上げ要因となる可能性がある。特に、高い利回りを求める投資家が債券市場に回帰すれば、短期的な価格上昇が続く可能性がある。
ただし、こうした強気材料がある一方で、長期的な債券市場のトレンド転換にはさらなる要因が必要である。トランプ政権が長期金利の引き下げを意図した政策を打ち出す可能性が指摘されているが、その実現性や影響は不透明だ。現在の債券ラリーが持続するかどうかは、政策動向や市場環境の変化によって左右される状況にある。
Source: Barchart