テスラ(TSLA)の株価は2025年3月10日に急落し、15%以上の下落を記録した。これは2020年9月以来最悪の取引日となり、7週連続での下落という異例の状況に陥っている。2024年12月に記録した最高値からすでに50%以上の下落となり、時価総額は約8000億ドル減少した。
この株価低迷の背景には、イーロン・マスクCEOの政治活動が関係しているとの見方が強い。トランプ政権下で「政府効率化局(DOGE)」長官に就任して以降、テスラの経営との両立に懸念が高まった。また、関税政策の不透明感がサプライチェーンに影響を与えるとの警戒も広がっている。
一方、テスラはエネルギー事業の成長を背景に、テキサス州ヒューストン近郊に新たなメガファクトリーの建設を進めている。新工場では商業用バッテリー貯蔵システム「Megapack(メガパック)」を製造し、既存のレイソロップ、上海の施設に次ぐ拠点となる。エネルギー貯蔵製品の出荷は急成長しており、2024年には31.4GWhに達し、売上は100億ドルを突破した。
こうした動きを受け、テスラ株の評価は分かれている。アナリスト40人のうち、「強い買い」14人、「強い売り」10人と見解は二極化している。市場は、同社の新戦略と今後の収益性に注目している。
テスラ株の急落とその背景 政治的要因と市場の反応

テスラ(TSLA)の株価は2025年3月10日に15%以上の下落を記録し、7週連続の下落という異例の事態に直面している。これは同社のナスダック上場以来、最も長い下落期間であり、2024年12月の最高値488.54ドルから50%以上の下落となった。これにより、時価総額は8000億ドルもの減少となり、投資家の懸念が広がっている。
この急落の要因の一つとして指摘されているのが、CEOイーロン・マスクの政治的動向である。マスクは2024年末にドナルド・トランプ大統領の政権下で「政府効率化局(DOGE)」の長官に就任しており、その後株価の下落が加速した。彼のホワイトハウスでの活動が企業経営に影響を与えているとの見方が市場では広がっている。実際、FOXビジネスのインタビューでマスク自身が「非常に困難だ」と発言しており、経営に対する懸念が現実味を帯びている。
加えて、トランプ政権の関税政策に対する不確実性もテスラのサプライチェーンに影響を及ぼす可能性がある。特にカナダやメキシコなどの主要市場への影響が警戒されており、今後の政策動向によってはさらなる業績悪化のリスクが高まる。マスクの政治的発言や物議を醸すSNS投稿がテスラのブランド価値を損なっているとの指摘もあり、企業経営と政治活動の両立がいかに困難であるかを浮き彫りにしている。
ヒューストンの新メガファクトリー テスラのエネルギー事業拡大の鍵
テスラは自動車事業にとどまらず、エネルギー分野での成長戦略を加速させている。その一環として、テキサス州ヒューストン近郊に新たなメガファクトリーの建設を進めている。Electrekの報道によれば、この施設はEmpire West工業団地内に位置し、100万平方フィートの建物を活用する予定である。この施設はかつてドイツの物流企業DBシェンカーがテスラ向け部品の取り扱いに利用していたもので、今回の契約によりテスラは4400万ドルの施設改良費と1億5000万ドルの製造設備投資を基にした税制優遇を受ける見込みだ。
このメガファクトリーでは、同社の商業用バッテリー貯蔵システム「Megapack(メガパック)」を製造する計画である。Megapackは大規模エネルギー貯蔵ソリューションとして、電力網の安定化や再生可能エネルギーの効率的利用に貢献する。すでにカリフォルニア州レイソロップと中国・上海にメガファクトリーを構えており、ヒューストンの新工場はこの事業のさらなる拡大を示唆している。加えて、60万平方フィートの物流施設の建設も予定されており、供給網の効率化が期待される。
エネルギー貯蔵事業は、テスラの収益構造の中で重要性を増している。2024年にはエネルギー貯蔵製品の出荷量が31.4GWhに達し、売上は100億ドルを突破。全体の売上に占める割合は10.3%となり、2020年の6.3%から大きく成長した。これを支えるのが「Powerwall(パワーウォール)」と「Megapack」であり、特に後者は世界中の大規模プロジェクトで採用が進んでいる。テスラは今後、エネルギー管理ソフトウェアの開発にも力を入れており、収益の安定化を目指している。
テスラ株の評価分かれる 反発の可能性とリスク要因
急落を続けるテスラ株に対する市場の評価は分かれている。現在、同社をカバーするアナリスト40人のうち、「強い買い」を推奨するのは14人、「やや買い」は3人である。一方、「保留」が13人、「強い売り」は10人と意見が分かれている。こうした評価の分裂は、テスラの将来性を巡る市場の見方が不透明であることを示している。
特に注目されるのは、テスラ株の目標株価の平均が349ドルとされ、現在の株価から50%以上の上昇余地があると見られている点である。これは、同社のエネルギー事業が今後さらに成長することを見込んでの評価と考えられる。エネルギー貯蔵分野は、従来の自動車事業に依存しない収益源として期待されており、政策面での追い風が吹けば、業績の回復とともに株価の反発もあり得る。
しかし、短期的には不安定な要因も多い。マスクの政治活動が経営に与える影響や、トランプ政権の政策変更がテスラのサプライチェーンに及ぼすリスクは依然として払拭されていない。また、競争環境の変化も無視できない。電気自動車市場は激化しており、BYDやGMなどの競合他社が価格競争を仕掛ける中で、テスラがどのような戦略をとるかが問われている。
テスラの株価動向は、単なる一企業の問題ではなく、広範な市場のリスクを象徴している。今後の成長の鍵を握るのは、エネルギー事業の拡大が自動車市場の不透明感を上回ることができるかどうかであり、投資家はそのバランスを慎重に見極める必要がある。
Source: Barchart