Samsungの半導体設計を担うLSI部門が、Exynosチップの設計業務をモバイル部門のSamsung MXへ移管する可能性が浮上している。Galaxyスマートフォンの開発を手がけるMX部門が設計を主導することで、チップの性能向上と最適化を狙うとみられる。

この動きの背景には、LSI部門の業績不振とExynosの競争力低下がある。Galaxy S25向けの新型Exynos 2500の開発が遅れ、Snapdragonとの差も指摘されてきた。さらに、TSMCとの競争で後れを取るファウンドリー部門の影響も無視できない。

Exynosチップの設計移管が検討される背景

SamsungのLSI部門は長年にわたりExynosチップの開発を担ってきたが、近年その競争力が低下している。特にQualcommのSnapdragonシリーズとの比較で、性能や電力効率の面で劣るとの指摘が続いている。Galaxy S23シリーズではSnapdragonを全面採用し、Exynosモデルは一部の市場に限定されたことも、その象徴的な出来事だった。

Galaxy S25向けに開発中のExynos 2500も、スケジュールの遅れが報じられている。このような状況を受けて、Samsungはチップの開発体制を見直し、Galaxyスマートフォンを担当するSamsung MXに設計業務を移管する可能性を検討しているとされる。目的は、ハードウェアとソフトウェアの統合を強化し、Exynosの最適化を進めることにあるとみられる。

ただし、Exynosチップの製造は引き続きSamsungファウンドリーが担当する予定であり、製造技術の課題は依然として残る。TSMCとの競争で後れを取っていることが、Exynosの性能向上を阻害する要因の一つとも言われている。

組織再編の影響と期待されるメリット

Samsung MXがExynosの設計を主導することで、Galaxyスマートフォンとの親和性が高まり、最適化が進む可能性がある。これまでExynosは、LSI部門が独立して開発していたため、スマートフォンとの統合が必ずしもスムーズではなかった。しかし、開発部門が一体化すれば、より緊密な調整が可能になり、性能向上につながると期待されている。

特に、GPUやISP(画像処理プロセッサ)の最適化は、カメラ性能やゲーム体験に直結する部分であり、ユーザーの体感に大きな影響を与える要素だ。もしSamsung MXが主導権を握れば、ソフトウェアとハードウェアの連携が強まり、Snapdragonとの競争力を高める可能性がある。

一方で、組織再編にはリスクもある。開発チームの移行に伴う混乱や、経験豊富な技術者の離脱が発生すれば、短期的には開発の停滞を招くかもしれない。また、Samsung MXがExynos開発に本格的に乗り出す場合、他社製SoCとのバランスをどう取るかも課題となる。これまでGalaxy Sシリーズの一部モデルにはSnapdragonが採用されており、完全移行には慎重な判断が必要となるだろう。

Samsungの半導体戦略と今後の課題

Samsungの半導体事業は、設計・製造ともに競争が激化している。Exynosの競争力が低下する中、SamsungファウンドリーはTSMCとのプロセス技術競争で遅れを取っており、最新の3nmプロセスでも生産歩留まりが課題となっている。この影響で、Exynosの性能向上が制約を受ける可能性もある。

仮にExynosの設計がSamsung MXに移管されたとしても、製造部門の技術革新が伴わなければ、競争力のある製品を生み出すのは難しい。特に、Snapdragonの最新モデルがTSMCの最先端プロセスで製造される中、Samsungファウンドリーがそれに追いつくことができるかが今後の焦点となる。

また、Samsungが自社製SoCにこだわり続けるかどうかも重要なポイントだ。過去にはGoogleがTensorチップを独自開発し、AppleがAシリーズチップで独自路線を進んでいるように、Samsungも長期的にはExynosの自社設計を維持したい意向があるとみられる。しかし、Snapdragonの優位性が続く限り、Galaxyのグローバルモデルでの採用を続けるかどうか、柔軟な対応が求められるだろう。

Source:GSMArena