AMDのAI GPU事業が大きな転換点を迎えている。数カ月前まで懐疑的な見方が支配的だったが、JPモルガンの最新レポートによれば、2025年には同事業が60%以上の成長を遂げる可能性があるという。その背景には、オラクルが3万台のMI355X GPUを発注するなど、次世代アクセラレータの需要拡大がある。

また、AMDは主要顧客であるマイクロソフトやメタを2025年半ばまでにMI350プラットフォームへ移行させ、2026年にはクラスタ規模10万台以上のMI400シリーズを投入する計画だ。データセンター市場の成長とAI向けコンピュート需要の拡大が、同社の競争力を押し上げると予測される。

さらに、ロイターによれば、TSMCがNVIDIAやAMDに対し、インテルとの共同事業への出資を求めている。業界全体でファウンドリー戦略の再編が進む中、AMDの成長がどこまで加速するかが注目される。


AMDのAI GPU事業が急成長する背景 オラクルの大型発注が示す市場の変化

AMDのAI GPU事業は2025年に大幅な成長が見込まれている。JPモルガンのハーラン・サー氏によれば、同事業は60%以上の成長率を達成する可能性があるという。その要因の一つとして、オラクルによる次世代MI355X GPUの大量発注が挙げられる。オラクルはこのGPUをトレーニングと推論の両ワークロードに活用する計画で、最初のロットとして3万台の調達を決定した。

この発注は、AI市場におけるAMDの競争力が高まっていることを示している。従来、AI向けGPU市場はNVIDIAが圧倒的なシェアを持っていたが、AMDの最新GPUはその牙城を崩す可能性を秘めている。特に、データセンター向けのAIアクセラレーション需要の高まりにより、クラウド事業者がAMD製品の採用を増やしていることが背景にある。

オラクルにとってもAMDとの協業は戦略的な意味を持つ。同社はAIクラウド事業を強化しており、コストパフォーマンスに優れたAMDのGPUを導入することで、競争力のあるサービスを提供できる可能性がある。AMDのAI GPUが今後さらに多くの企業から採用されるかどうかが、市場全体の動向を占う上での重要な指標となる。

主要顧客の移行戦略 AMDは2025年に向けてどこまでシェアを拡大できるか

AMDは現在、マイクロソフト、メタ、オラクルといった主要顧客を2025年半ばまでにMI350プラットフォームへ移行させる計画を進めている。これは、AI向けの演算能力を拡張するための重要な取り組みであり、同社の市場シェア拡大を後押しする可能性がある。さらに、2026年にはクラスタ規模10万台以上のMI400シリーズへの移行も視野に入れているという。

この動きは、AMDがAI市場において長期的な戦略を持っていることを示している。NVIDIAのH100やB100に対抗する形で、MI350およびMI400シリーズを投入することで、データセンター市場におけるプレゼンスを強化しようとしている。特に、コスト面での競争力とエネルギー効率の向上が、AMDの製品採用を加速させる要因となる可能性がある。

しかし、こうした移行がどこまでスムーズに進むかは不透明な部分もある。市場はNVIDIAの製品に深く依存しており、AMDがどれほどのシェアを奪えるかは顧客の実際の導入状況次第である。今後の動向次第では、AMDのGPUがデータセンター市場で主流の選択肢となるかどうかが試されることになるだろう。

TSMCとインテルのファウンドリー戦略 業界再編の波はAMDにどのような影響を与えるか

半導体業界では、TSMCがNVIDIA、AMD、Broadcomに対し、インテルとの共同事業への出資を求めていると報じられている。TSMCはこの共同事業において、インテルのファウンドリー部門の主要な運営を担う計画であり、これが実現すれば半導体製造業界の勢力図が大きく変わる可能性がある。

AMDにとって、TSMCとの関係は極めて重要である。現在、同社のAI GPUはTSMCの製造技術に依存しており、安定した供給を確保することが競争力の維持につながる。もしTSMCとインテルの協業がAMDに有利に働けば、より安定した製造プロセスを確立できるかもしれない。しかし、NVIDIAやBroadcomといった競合企業も同様の枠組みに参加すれば、TSMCの生産能力を巡る競争が激化し、AMDの調達コストや供給量に影響を与える可能性もある。

半導体業界は今、大きな転換期にある。AMDのAI GPU事業の成長が続くためには、供給網の安定と技術革新が欠かせない。TSMCとインテルの動向が今後の市場に与える影響は、AMDだけでなく業界全体の勢力図を変える要素となるだろう。

Source: Wccftech