米金融大手モルガン・スタンレーは、Appleの目標株価を275ドルから252ドルに引き下げた。これは、同社が計画していた高度なSiriの導入が遅延し、iPhoneの買い替えサイクルに影響を及ぼすと判断したためである。
2025年のiPhone出荷予測は2億3000万台とされ、前年比横ばいにとどまる見通しだ。さらに、2026年度の売上予測は4,360億ドル、EPSは8.00ドルと、いずれも市場コンセンサスを1~2%下回る水準となっている。
加えて、中国からの輸入関税によるコスト上昇も業績を圧迫すると見られる。一方で、AppleはAI技術の進化やiPhone 17の再設計により、2026年度の買い替え需要の回復を見込んでいるが、Siriのアップグレードはそれ以降になる可能性が高い。
Appleの目標株価引き下げの背景 Siriの導入遅延が業績に与える影響

モルガン・スタンレーは、Appleの目標株価を275ドルから252ドルに引き下げた。その最大の要因は、AI機能を統合した高度なSiriの導入が遅れることで、iPhoneの買い替えサイクルが鈍化する可能性があると判断したためだ。
これまでAppleは2026年度に向けて新しいSiriを搭載し、買い替え需要を促進すると見込んでいたが、計画の後ろ倒しによりその効果が限定的になる恐れがある。2025年のiPhone出荷台数は2億3000万台と見積もられており、これは前年とほぼ同水準だ。
さらに、2026年の予測も2億4300万台とされ、前年比で6%の増加にとどまる見込みである。これに伴い、Appleの2026年度の売上は4,360億ドル、1株当たり利益(EPS)は8.00ドルと予測されており、市場コンセンサスを1~2%下回る水準に調整された。iPhoneの買い替えが停滞することで、Appleの主力製品による収益成長にブレーキがかかる形となる。
加えて、モルガン・スタンレーの調査では、「高度なAI機能へのアクセス」がスマートフォンの買い替えを促す重要な要素であることが示されている。特に、アップグレードされたSiriの登場を待つ消費者が多いことが明らかになっており、現行モデルでの買い替えを見送る動きが強まる可能性がある。
AppleにとってAI機能は重要な競争力となるが、導入遅延がユーザーの購買意欲に影響を及ぼす構図が浮き彫りになった。
関税の影響とAppleの対応策 コスト増加の懸念と戦略
Appleの業績見通しを圧迫する要因として、関税の影響も無視できない。モルガン・スタンレーは2025年、中国からの輸入品に課される関税の影響で、Appleの製品原材料コストが20億ドル増加すると試算している。これは、米中貿易摩擦の影響が依然として続いていることを示唆しており、Appleにとってコスト管理の面で新たな課題となる。
Appleはこれまで、製造拠点の一部をインドやベトナムなどに移管することで中国依存度を下げる取り組みを進めてきた。しかし、完全な脱却には時間を要し、短期的には関税の影響を受けざるを得ない状況だ。Appleは製品価格への転嫁やコスト削減策を講じることで、この影響を和らげる可能性があるが、消費者への価格引き上げが購買意欲の低下を招くリスクもある。
こうした状況を受け、Appleは長期的な視点での戦略を模索している。AIの進化を武器にiPhone 17の再設計を進め、グローバルな販売網の強化を図る方針を示している。ただし、AI機能の拡充には時間を要し、SiriのアップグレードもiPhone 17の発売後になる見込みである。
そのため、2026年度の買い替え需要の回復を見込んでいるものの、そのペースは予測よりも緩やかになる可能性がある。
Appleの今後の展望 AI戦略と市場の期待
Appleは長期的な競争力を確保するため、AI技術の強化を軸とした戦略を進めている。特に、Apple Intelligenceと連携した高度なSiriは、同社がAI分野での競争を強化するための重要な要素と位置づけられている。しかし、今回の導入遅延は、AI技術を活用した製品戦略の不確実性を浮き彫りにするものとなった。
AppleのAI戦略が市場の期待を超える形で進化すれば、同社の製品ラインナップに新たな魅力が加わることは間違いない。しかし、現時点ではAI技術の開発と実装において、競合他社との競争が激化している。
GoogleやSamsungはすでにAI機能を搭載したスマートフォンを展開しており、Appleがこの分野でリーダーシップを確立するには、革新的な技術や差別化されたユーザー体験が不可欠となる。市場の関心は、AppleがどのようにしてAIを活用し、消費者に新たな価値を提供するかに向けられている。
Siriの強化がiPhoneの買い替えを促進する要因となるか、またAppleのAI戦略が市場の期待に応えられるかが、今後の株価や業績に大きく影響することは確実だ。
Source:Investing.com