自動運転技術を手掛けるモービルアイ(MBLY)の株価は、2024年に入り約25%下落し、不安定な市場環境の影響を受けている。成長株として知られる同社は、高金利や景気後退懸念による売り圧力の高まりに直面しており、直近の決算では前年同期比23%の売上減少を記録した。
一方で、著名ヘッジファンドマネージャーのスティーブ・コーエン率いるPoint72 Managementが、新たに500万株以上(約7,500万ドル相当)を取得したことが明らかになり、投資家の関心を集めている。
コーエンの買い増しは、長期的な成長を見込んだものなのか、それとも短期的なリバウンドを狙ったものなのか。アナリストの評価は「Moderate Buy(中程度の買い)」にとどまるが、目標株価は現在の水準から30%以上の上昇余地があるとされる。規制環境の変化や米国債利回りの動向が追い風となる可能性があり、個人投資家にとっても今後の展開が注目される局面だ。
スティーブ・コーエンの投資判断 モービルアイ株大量取得の背景

スティーブ・コーエン率いるPoint72 Managementは、最近500万株以上のモービルアイ(MBLY)株を取得した。これは現在の市場価格で約7,500万ドル(約112億円)に相当し、同社の自動運転技術への期待が反映されている。モービルアイは、自動運転支援技術や先進運転支援システム(ADAS)を手掛ける企業であり、業界の成長性は依然として高い。しかし、同社の株価は2024年に入り約25%下落し、投資家の間で慎重な見方が強まっていた。
市場の不安要因として挙げられるのは、世界的な景気後退懸念と関税の上昇である。特に、金利の高止まりが成長株にとって逆風となり、モービルアイのような企業の株価下落につながった。さらに、直近の決算では売上が前年同期比で23%減少しており、投資家心理を冷やす要因となった。それにもかかわらず、コーエンが買い増しに動いた背景には、同社の技術的優位性や自動運転市場の拡大という長期的な視点があると考えられる。
投資家にとって重要なのは、この買い増しが短期的なリバウンド狙いなのか、それとも長期的な成長を見越したものなのかという点である。現在の株価は売上高の7倍以上という評価を受けており、割安感があるとは言い難い。一方で、自動運転関連の技術革新が進めば、将来的な収益拡大の可能性も高まる。コーエンの判断が正当化されるかどうかは、今後の市場環境とモービルアイの事業展開次第である。
モービルアイの成長戦略と市場の評価
モービルアイは、インテル傘下から独立した後も、自動運転技術の最前線を走り続けている。同社の主力事業であるADASは、テスラ(TSLA)やBMWをはじめとする自動車メーカーに採用されており、今後の成長が期待されている。しかし、2024年の決算では売上が落ち込み、業績に対する不安が高まっている。
市場は同社を「高成長銘柄」と見なしているが、その一方で成長鈍化や収益性の低さが懸念されている。特に、モービルアイの株価は依然として売上高の7倍以上の水準で取引されており、割安感は乏しい。加えて、世界的な金融引き締めや景気減速が続く中で、投資家が慎重な姿勢を崩さない可能性もある。ただし、自動運転技術は規制緩和や政府支援によって急速に成長する可能性を秘めており、長期的な市場拡大の恩恵を受ける可能性は否定できない。
アナリストの評価は「Moderate Buy(中程度の買い)」にとどまっているものの、目標株価は19.96ドルと、現在の水準から30%以上の上昇余地があるとされる。この評価は、同社の事業拡大が順調に進めば、投資妙味があることを示している。自動運転タクシー(ロボタクシー)市場への参入や、新たなパートナーシップの拡大が進めば、今後の評価が変わる可能性もある。投資家にとっては、目先の業績よりも長期的な技術革新のポテンシャルを見極めることが重要だろう。
米国の政策と市場環境がモービルアイの未来を左右する
モービルアイの成長には、米国の政策動向が大きな影響を与える可能性がある。特に、トランプ前大統領が再選した場合、規制緩和や自動運転関連政策の変更が予想される。現在、自動運転技術の普及を巡っては規制の壁が存在し、法整備の進展が企業成長の鍵を握っている。トランプ政権時代には企業優遇策が多く打ち出されており、再び規制緩和の流れが強まれば、自動運転関連企業にとって追い風となる可能性がある。
また、米国債の利回り低下も市場に影響を与える要因となる。金利が高止まりすると、モービルアイのような成長株は割高に見られやすく、投資家の資金が逃避する傾向がある。しかし、金利が低下すれば、再び成長株に資金が流入する可能性があり、モービルアイの株価にも好影響をもたらすだろう。このように、同社の将来は単なる業績だけでなく、マクロ経済の動向や政策の影響を強く受けることになる。
スティーブ・コーエンの投資判断は、こうした市場環境を見据えた上でのものと考えられる。短期的には不安定な要素が多いが、規制緩和の進展や業界の成長によって、モービルアイが再び市場の注目を集める可能性は十分にある。投資家としては、目先の株価動向だけでなく、政策や金利動向を含めた総合的な視点で同社の価値を判断することが求められる。
Source: Barchart.com