Huaweiの最新AIアクセラレータ「Ascend 910C」が間もなく市場投入される。このチップはTSMCおよびSMICの7nmプロセスを採用し、大量生産が進められている。特に中国国内市場では、NVIDIA H100との競争が本格化すると見られ、AIコンピューティングの勢力図が変わる可能性がある。
Ascend 910Cは、FP16で800TFLOP/sの処理能力を持ち、最大3.2TB/sのメモリ帯域幅を実現する見込み。従来のAscend 910Bを2つ接続する構造を採用し、コストを抑えながら高い計算性能を実現している。
Ascend 910Cの技術仕様とNVIDIA H100との比較

HuaweiのAscend 910Cは、NVIDIA H100に匹敵する性能を備えるとされている。半精度浮動小数点演算(FP16)で最大800TFLOP/sの演算能力を持ち、メモリ帯域幅は最大3.2TB/sに達する見込みだ。このチップは、既存のAscend 910Bを2つ組み合わせる構造を採用し、シリコンインターポーザを介して接続することで高い合成性能を実現している。
NVIDIA H100と比較すると、Ascend 910Cは設計がシンプルでありながら、大規模AI処理に耐えうるスペックを持つ。NVIDIAはTSMCの4nmプロセスを採用しており、Ascend 910Cの7nmプロセスに比べて微細化が進んでいる点が特徴だ。しかし、Huaweiは7nmプロセスの最適化を進め、パフォーマンスと生産効率のバランスを取ることで競争力を確保している。
特に中国国内市場では、Ascend 910Cの量産が進めばNVIDIA H100に対抗できる可能性がある。Huaweiは「数百万個」規模での出荷を計画しており、供給量の面ではNVIDIAを上回る可能性がある。チップの調達が制限される状況において、大規模に供給されるAscend 910Cが市場に与える影響は大きいと考えられる。
Huaweiの7nmプロセス採用と中国国内生産の現状
Ascend 910Cは、7nmプロセスを採用し、TSMCおよび中国のSMICで製造されている。Huaweiは、米国の制裁措置が施行される前にTSMCから大量の7nmチップを確保していたとされており、それらを活用して生産を進めている。一方で、中国のSMICも7nmプロセスの開発を進めており、現在では月間5万枚のウェハ生産能力を持つとされる。
この状況は、中国国内の半導体産業にとって重要な意味を持つ。これまで先端半導体の調達は米国の規制によって制限されていたが、SMICが7nmプロセスの量産に成功すれば、国内での安定供給が可能になる。Huaweiにとっても、国内での製造能力が向上することは、今後の製品開発や供給戦略において大きな強みとなる。
とはいえ、TSMCの先端プロセスと比較すると、SMICの7nm技術はまだ成熟段階にあると考えられる。生産効率やチップの歩留まりの面で課題がある可能性があり、今後の量産体制の確立が鍵を握るだろう。いずれにせよ、中国国内での半導体供給が進むことで、Huaweiの製品展開がより安定する可能性がある。
Ascend 910Cの市場影響と今後の展開
Ascend 910Cの登場は、中国のAI市場における競争を加速させる要因となる。現在、中国国内ではAI関連の需要が急増しており、特に大規模なAIモデルのトレーニングや推論に必要な計算資源が求められている。DeepSeekの「R1」などの新型モデルの登場も、この流れを後押ししている。
この状況を受け、HuaweiのAscend 910Cが市場に投入されれば、多くの中国企業がこのチップを活用する可能性が高い。政府の支援を受けた企業や研究機関がAscend 910Cを採用すれば、NVIDIA製品への依存が減り、中国国内のAI産業がより独立した形で成長することが期待される。
しかし、グローバル市場での影響は未知数だ。NVIDIAは依然として最先端の技術力を持ち、世界中の企業がその製品を利用している。中国市場ではAscend 910Cが存在感を増す可能性があるが、世界全体で見ればNVIDIAの優位性は揺るがないだろう。ただし、中国国内での技術革新が進めば、将来的にはAI半導体の勢力図が変化する可能性も考えられる。
Source:Wccftech