Nvidiaは、新世代のBlackwellアーキテクチャを採用したRTX 50シリーズGPUの出荷量が、同期間のRTX 40シリーズと比較して2倍に達したと発表した。しかし、このデータには大きな落とし穴がある。RTX 40シリーズの発売当初はRTX 4090のみが市場に投入されたのに対し、RTX 50シリーズではRTX 5090、5080、5070 Ti、5070の4モデルが短期間でリリースされており、単純な比較は適切ではない。

さらに、GPU市場全体では依然として供給不足が続き、RTX 50シリーズは高額な価格で取引されている。NeweggではRTX 5070が739ドル、Amazonでは第三者販売者が900ドル以上で出品しており、RTX 5090は市場にほとんど出回っていない。AMDのRX 9070シリーズも同様で、価格高騰が続いている。

NvidiaはDLSS 4やニューラルシェーディングといった新技術を打ち出しているが、そのマーケティング手法にも疑問が残る。特にフレーム生成技術MFG4Xの性能比較では、ネイティブのフレームレートと異なる印象を与える可能性が指摘されている。AI向けGPU需要が急増する中、ゲーミング向けGPUの供給問題が解決する兆しはなく、RTX 50シリーズの入手難易度の高さは今後も続くと見られる。

Nvidiaの「出荷量2倍」発表の真相 市場データの盲点

NvidiaはRTX 50シリーズGPUの出荷量が、RTX 40シリーズと比較して2倍に達したと発表した。しかし、このデータには根本的な問題がある。RTX 4090が単独で市場投入されたRTX 40シリーズの初期と異なり、RTX 50シリーズではRTX 5090、5080、5070 Ti、5070の4モデルが短期間で登場しており、出荷量の単純比較には無理がある。

仮にRTX 40シリーズの初動期間を公平に設定するなら、RTX 4090と4080の5週間分、さらに4070 Tiと4070の販売初期を加えるべきである。この基準を適用すると、Nvidiaの発表する「2倍の出荷量」という主張が成立するとは限らない。さらに、RTX 40シリーズが登場した際にはRTX 30シリーズが市場に広く流通していたが、RTX 50シリーズが登場した2025年にはRTX 40シリーズの在庫が減少しており、比較条件の違いが結果に影響を及ぼしている。

加えて、50シリーズの供給状況にも問題がある。市場ではすでに在庫不足が深刻化しており、RTX 5090の販売数は限られている。NeweggではRTX 5070が739ドルで販売される一方、Amazonでは900ドル以上の高値がついている。RTX 5080も1,609ドル、RTX 5090はほぼ入手不可能な状況であり、RTX 50シリーズの出荷量が多いとしても、実際の市場での入手性とは無関係であるといえる。

価格高騰と供給不足 GPU市場の厳しい現実

RTX 50シリーズが市場に投入されたにもかかわらず、多くのモデルが即座に売り切れ、または高額で取引されている。特にRTX 5090は入手困難であり、eBayでは平均4,500ドルという異常な価格で落札されている。この価格高騰の背景には、NvidiaのAI向けGPUの需要が急増していることが挙げられる。

データセンター向けGPUの売上は1,300億ドルに達し、AI開発向けの需要がゲーミング向けGPUの数倍に及ぶ現状では、Nvidiaがゲーミング市場に十分な供給を行う余裕は限られている。AMDのRX 9070シリーズも同様の影響を受けており、AmazonではRX 9070が853ドル、RX 9070 XTが939ドルで販売されるなど、価格上昇が続いている。

この状況は短期間で改善される見込みは薄い。供給が限定される中で需要が高まれば、価格はさらに上昇する可能性がある。今後、RTX 5060 TiやRTX 5060の投入が予想されるが、これらのモデルも十分な供給が行われるかは不透明である。ゲーミング向けGPU市場は、今後もしばらく混乱が続くと考えられる。

Nvidiaの新技術とマーケティング フレーム生成の真価

NvidiaはRTX 50シリーズにおいて、新たな技術を積極的に導入している。特にDLSS 4のMulti Frame Generation(MFG)やニューラルシェーディング、ACE(AI Compute Engine)といった機能は、パフォーマンス向上の鍵とされている。3月18日にはRTX Remixを活用した「Half-Life 2 RTX」のデモが公開予定であり、新技術の実用性に注目が集まっている。

しかし、Nvidiaのマーケティング手法には疑問が残る。例えば、Portal RTXでのDLSS 4 MFG4Xによるパフォーマンス向上の説明では、従来のフレーム生成なしの場合と比較し、FPSが向上したとされている。しかし実際には、フレーム生成を適用しない状態でのFPSが88から76に低下しており、MFG4Xによる補完がなければパフォーマンスが落ちるという実態がある。

さらに、RTX 5090の性能比較では、RTX 5080より60%、RTX 5070 Tiより75%、RTX 5070より143%高いとされるが、これを実際の使用環境に当てはめると、4K解像度でMFG4Xを適用しても125FPS程度にしかならず、入力遅延を考慮すると体感的には31FPS相当になる可能性がある。MFG4Xの120FPSは、ネイティブ120FPSとは異なり、実際のゲームプレイにおける快適性には影響を及ぼすことが考えられる。

Nvidiaの新技術は、数値上の向上を強調するが、実際の体感にどこまで寄与するかは慎重に評価する必要がある。特にフレーム生成技術が今後の標準となるならば、その実効性についてさらなる検証が求められる。

Source:Tom’s Hardware