AMDは最新のGPU「Radeon RX 9070」のローンチが「前例のない成功」を収めたと発表した。主要販売店で売上トップを記録し、NVIDIAのGeForce RTX 50シリーズを上回る出荷数を達成。しかし初期供給が追いつかず、一部の小売店では価格が高騰している。
AMDは供給不足の解消に向け、Navi 48 ASICの生産を拡大するとともに、ゲーマーへの適正価格での供給を優先する方針を示した。また、ハイエンド市場への再参入についても慎重な姿勢を見せつつ、RDNA 4を基盤とした戦略的展開を視野に入れている。
一方でRyzen CPUに関しては、デュアル3D V-Cache CCDの導入が技術的に可能であるにもかかわらず、コスト面で合理性に欠けると判断。現在は1つのCCDのみに3D V-Cacheを搭載する構成を維持している。AMDは今後の市場動向を見極めながら、Ryzenの16コア上限を超える新たなCPU開発にも意欲を示している。
RDNA 4「Radeon RX 9070」の成功と供給課題 : AMDの戦略的市場展開

AMDは「Radeon RX 9070」を含むRDNA 4アーキテクチャ搭載GPUの市場展開について、これまでにない成功を収めたと発表した。初期販売では、主要小売店で上位の売上を記録し、競合であるNVIDIAのGeForce RTX 50シリーズを上回る出荷数を達成した。AMDにとって、この成果は市場シェア拡大の好機であり、ミッドレンジ市場での優位性を強化する狙いがある。
しかし、この成功の裏では供給不足が課題となっている。初期ロットはほぼ完売し、一部の小売店では価格の高騰が発生。特に、RDNA 4のコストパフォーマンスの高さが評価され、需要が供給を上回る状況が続いている。AMDは、Navi 48 ASICの供給量を増やすことで、価格の安定とさらなる市場拡大を図る方針を示している。
この供給不足は、グラフィックボード市場全体の課題と密接に関係している。近年、半導体供給の変動や製造コストの高騰により、各メーカーは慎重な生産調整を強いられている。AMDが迅速に供給を拡大できるか否かは、今後の市場競争の行方を左右する重要な要素となるだろう。
デュアル3D V-Cache CCDの実装はなぜ進まないのか
AMDはRyzen CPUにおける3D V-Cache技術の導入を進めてきたが、デュアルCCD構成の3D V-Cache採用には慎重な姿勢を示している。Ryzen 7 5800X3Dの成功を受け、Ryzen 7 7800X3DやRyzen 7 9800X3Dが登場したが、いずれも単一CCDにのみ3D V-Cacheを搭載する構成が採用された。
デビッド・マカフィー氏は、この選択の背景にはコスト面の問題があると説明する。デュアルCCD構成のCPUは、製造コストが大幅に上昇するため、一般市場向けとしては価格競争力を維持するのが困難になる。また、すべてのアプリケーションで3D V-Cacheの恩恵が最大化されるわけではなく、コストと性能のバランスを考慮した結果、片方のCCDのみを積層型にする方が合理的な判断であると述べた。
一方で、一部のワークステーション向けモデルでは、デュアル3D V-Cache CCDがすでに採用されている。例えば、AMDの「Genoa-X」シリーズは、データセンターや高負荷なコンピューティング用途向けに特化した仕様となっている。今後、デュアル3D V-Cache CCDが一般市場に投入されるかどうかは、コスト構造の変化と市場ニーズの推移によるだろう。
16コアの壁を超えるか : Ryzenの未来と競争戦略
AMDのRyzenシリーズは、4世代にわたり16コアが上限となっている。Ryzen 3000、5000、7000、9000シリーズのすべてで16コア構成が維持されており、デスクトップ向けのフラッグシップモデルにおいては、これが性能の天井と見なされている。
しかし、近年のワークロードでは、より多くのコアを活用するケースが増えている。特にゲームやコンテンツ制作の分野では、マルチスレッド性能が求められる場面が増加しており、高コア数のCPUが求められる場面が広がっている。AMDのハイエンドワークステーション向け「Threadripper」シリーズは、多コアを活かせる環境に適応する形で進化しており、デスクトップRyzenもこの流れに追随する可能性がある。
次世代Zen 6アーキテクチャでは、AM5ソケット対応の24コアおよび32コアモデルの開発が進められているとの情報もある。これは、競合であるIntelの高コア数モデルに対抗するための戦略とも考えられる。AMDがデスクトップRyzenのコア数を引き上げるかどうかは、性能バランスと市場の需要に基づいて決定されるだろう。
Source:Wccftech