AMDは、最新のDeepSeek R1ベンチマーク結果を発表し、48GBのVRAMを搭載するRDNA 3 GPU「Radeon Pro W7900」および「Pro W7800」が、NvidiaのRTX 4090を最大7.3倍上回る性能を記録したと主張した。特に、大規模言語モデル(LLM)の処理においてVRAMの重要性を強調し、48GBの大容量メモリが処理効率を大きく向上させると説明している。
この結果によれば、Distill Qwen 32B 8-bitやDistill Llama 70B 4-bitといったLLMベンチマークにおいて、AMDの48GB GPUは、RTX 4090の2.0~2.7トークン/秒に対し、最大19.8トークン/秒を記録するなど、大幅な性能差を示した。これにより、従来のAI推論環境ではNvidiaが優位とされていた分野で、AMDが新たな選択肢となる可能性が浮上した。
一方で、W7900の価格は3,500ドルと、RTX 4090(市場価格1,500ドル超)を大きく上回る点も指摘される。また、AMDはRTX 5090との比較結果を公表しておらず、今後Nvidiaが対抗策を打ち出す可能性もある。48GBのVRAMがAI市場にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目される。
AMDのRDNA 3 GPUが示した圧倒的なAI性能 Nvidia RTX 4090との比較

AMDは、48GBのVRAMを搭載するRadeon Pro W7900およびPro W7800の性能を強調し、AIベンチマーク「DeepSeek R1」において、NvidiaのRTX 4090を最大7.3倍上回る結果を記録した。特に、Distill Qwen 32B 8-bitではW7900が19.8トークン/秒、W7800が19.1トークン/秒を達成し、RTX 4090の2.7トークン/秒を大幅に凌駕した。
また、Distill Llama 70B 4-bitにおいても、W7900とW7800は12.7~12.8トークン/秒を記録し、RTX 4090の2.3トークン/秒を大きく上回る数値を示した。これは、48GBという大容量VRAMが、AI推論時の大規模モデル処理において極めて有利に働いていることを示唆している。
一方で、RTX 4090はゲーミング向けのGPUであり、AI用途に特化した製品ではない。対するW7900およびW7800はワークステーション向けに設計されており、プロフェッショナル環境でのAI処理を想定したモデルだ。こうした特性の違いが、今回のベンチマーク結果にどの程度影響を及ぼしているのかは慎重に分析する必要がある。
48GBのVRAMがもたらすAI分野への影響 LLM処理の新たな選択肢
AMDのベンチマーク結果が示すように、大容量VRAMが大規模言語モデル(LLM)の推論性能に与える影響は大きい。LLMはパラメータの大部分をVRAMに格納するため、VRAMの容量が大きいほど処理のスムーズさや速度が向上する。今回の結果から、48GBのVRAMを備えたW7900やW7800は、AIの推論環境においてNvidia製品とは異なるアプローチを提供する可能性がある。
特に、メモリ使用量が膨大なDistill Llama 70B 4-bitの処理において、W7900およびW7800は10.4~12.8トークン/秒という高い処理速度を記録した。これは、AIモデルの規模が拡大するにつれて、単なる計算速度だけでなく、VRAM容量が決定的な要素となることを示している。
一方で、Nvidiaの最新フラッグシップモデルRTX 5090は32GBのGDDR7メモリを搭載するとされており、VRAM容量という観点ではW7900の48GBに及ばない可能性がある。しかし、メモリ帯域やGPUアーキテクチャの違いによって、Nvidiaが異なる形で最適化を図る可能性もあるため、今後の公式な比較結果が注目される。
価格と市場動向 高性能GPUはプロフェッショナル分野の主流となるか
Radeon Pro W7900の価格は3,500ドル、W7800はより安価であるものの、RTX 4090の市場価格(1,500ドル超)と比較すると大幅に高価である。一方で、48GBのVRAMを搭載したNvidiaのワークステーション向けGPU「RTX A6000 Ada」は、それ以上の価格帯となるため、コストパフォーマンスという観点ではAMDの選択肢が優位に見える。
価格面を考慮すると、W7900やW7800は一般ユーザーではなく、企業や研究機関向けの製品としての位置付けが強まる。特に、AI開発やデータサイエンス分野では、大容量VRAMの恩恵を受ける場面が多く、こうした分野のプロフェッショナルにとっては、RTX 4090よりもW7900のほうが有力な選択肢となる可能性がある。
ただし、AMDの過去のマーケティング戦略を考慮すると、今回のベンチマーク結果が実際の使用環境でも同様の優位性を示すのかは慎重に見極める必要がある。今後、Nvidiaが新たなベンチマーク結果を公表する可能性もあり、GPU市場における競争はさらに激化すると考えられる。
Source: Tom’s Hardware