ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが2024年に1,340億ドル相当の株式を売却し、現金保有額を前年のほぼ2倍となる3,180億ドルにまで増加させた。バフェットが市場に慎重な姿勢を取るとき、それは投資家にとって重要なシグナルとなる。
2023年も340億ドルの純売り手だったが、それ以前の2022年は340億ドルの純買い手だった。過去のデータによれば、バークシャーが純売り手だった翌年のS&P 500のリターンは平均を下回る傾向がある。この歴史的傾向を踏まえると、2025年の市場は慎重な見極めが求められる。
さらに、インフレや貿易戦争、景気後退懸念が高まる中、バフェットが積極的な投資を控える姿勢は市場の不確実性を反映している可能性がある。今後の展開次第では、株式市場の転換期を示唆する重要な局面に突入するかもしれない。
バークシャー・ハサウェイの巨額売却 その背景にある市場環境

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年に1,340億ドル相当の株式を売却し、現金保有額を3,180億ドルにまで増加させた。これは2023年の純売却額340億ドルと比べても大幅な拡大であり、バフェットが市場のリスクを強く意識していることを示唆する。実際、過去の取引履歴を見ても、彼が大規模な売却を行う際には市場環境が変化していることが多い。
2024年の市場は、インフレ率の高止まりやFRBの金融政策、地政学的リスクの高まりといった不確実要素に直面していた。特に、米国の金利政策は株式市場に大きな影響を与えており、投資家のリスク回避姿勢が強まる局面では、バフェットのような長期的視点を持つ投資家も保守的な判断を下す傾向にある。
また、バフェットは「適正な価格で買える魅力的な投資先が見つからない限り、現金を優先する」という姿勢を崩していない。2024年の売却は、単に市場のリスク回避というよりも、現在の株価水準では割安な銘柄が乏しいという判断によるものと考えられる。過去にもバフェットは市場が過熱しすぎたと判断した際には積極的な買いを控え、逆に大きく下落した場面では大胆な買いを実行してきた。今回の売却も同様の戦略の一環である可能性が高い。
バフェットの売却とS&P 500の関係 過去データが示唆する市場の行方
過去のデータによると、バークシャー・ハサウェイが純売り手であった翌年のS&P 500のリターンは、平均を下回る傾向がある。2010年以降、バークシャーが純売り手だった翌年のS&P 500の平均リターンは約11%であり、これは同期間の市場全体の年間平均リターン13%を下回る数値である。特に2021年には、バークシャーが前年度に売り越した後、S&P 500は-19%のリターンを記録している。
このようなデータを踏まえると、2025年の市場が楽観視できる状況とは言い難い。バークシャーが2024年に1,340億ドルもの株式を売却した事実は、単なる個別の判断ではなく、市場全体の動向と密接に関係している可能性がある。バフェットは、S&P 500のパフォーマンスを見越して動くのではなく、合理的な価格で投資機会を探しているが、結果的にその行動が市場の方向性と一致することが多い。
ただし、すべてのケースにおいてバフェットの行動が市場のパフォーマンスと完全に相関しているわけではない。たとえば、2012年のように、バークシャーが前年度に売り越していたにもかかわらず、S&P 500が30%のリターンを記録した年もある。2025年の市場もまた、多くの要因に左右されるため、単純に過去のデータを当てはめることはできないが、少なくとも投資家にとって慎重な姿勢が求められる局面であることは間違いない。
バフェットの「現金重視」は警告か 次なる投資機会を探る視点
バークシャー・ハサウェイは2024年末時点で3,180億ドルの現金および現金同等物を保有しており、これは同社の歴史の中でも極めて高い水準である。この事実は、単なる守りの姿勢ではなく、次なる大規模な投資の準備段階である可能性がある。過去にもバフェットは、景気後退や金融市場の混乱を見越して現金を蓄え、その後の市場下落時に好機を捉えて投資を行ってきた。
例えば、2008年の金融危機時には、バークシャーは約500億ドルを投じてゴールドマン・サックスやGEへの戦略的投資を行い、大きな利益を上げた。同様に、2020年のコロナショック後には、バフェットは慎重な姿勢を維持しつつも、一部の企業への投資を再開した。今回の巨額の現金保有は、今後数年以内に大きな投資機会が訪れると見込んでいる可能性がある。
一方で、現在の市場環境では、適正価格で投資可能な銘柄が限られていることも影響していると考えられる。S&P 500のバリュエーションは過去平均を上回る水準にあり、特にハイテク企業の評価は依然として高止まりしている。この状況が続く限り、バフェットは積極的な投資を控え、次の大きな市場調整を待つ姿勢を取る可能性が高い。投資家にとっても、彼の行動から市場の動向を読み取り、慎重な判断を下すことが求められる局面である。
Source: 24/7 Wall St.