電気自動車(EV)市場のリーダーであるテスラ(TSLA)は、ここ数カ月で株価が急落し、52週高値から50%以上、年初来で40%の下落を記録した。関税問題や中国企業との競争激化に加え、販売減少が重なり、投資家心理は冷え込んでいる。しかし、TD Cowenのアナリスト、イタイ・ミカエリ氏はテスラの株価が61%上昇する可能性があるとし、目標株価を180ドルから388ドルへと大幅に引き上げた。

同氏は、テスラが単なる自動車メーカーではなく、自動運転技術やヒューマノイドロボット、エネルギー事業など幅広い分野で成長の機会を持つと評価する。特に、自動運転車(AV)の市場展開やライドシェア事業の拡大が今後の収益向上につながると見ている。また、テスラは2025年前半に低価格モデルを投入予定で、これが販売回復の鍵となる可能性がある。

一方、多くのアナリストは依然として慎重な姿勢を崩していない。最新のアナリスト評価では「強い買い」と「ホールド」が拮抗し、平均目標株価は現在価格から約45%の上昇余地を示している。テスラの未来は不透明な要素も多いが、新たな事業領域への進出と財務基盤の堅実さが長期的な成長の鍵となりそうだ。

テスラの株価急落の背景 関税問題と市場競争の影響

テスラ(TSLA)はここ数カ月で大幅な株価下落を記録し、52週高値から50%以上の下落、年初来で40%の下落率を示している。この背景には、米国と中国の貿易摩擦による関税問題、中国市場における競争激化、そして販売減少が影響している。特に、中国政府が自国のEVメーカーを積極的に支援する中、BYDをはじめとする中国企業がシェアを拡大しており、テスラにとっては厳しい状況が続いている。

また、テスラの売上は一部の市場で伸び悩んでおり、第4四半期の収益は前年同期比2%増の257.1億ドル、1株当たり利益(EPS)は3%増の0.73ドルだったが、市場予想を下回った。特に、車両納入台数の減少は痛手となっており、2023年の市場環境の変化に対応するため、同社は新たな戦略の必要性に迫られている。

このような状況下で、テスラは低価格モデルの投入を2025年前半に予定している。これにより新規顧客層の獲得と販売回復を狙うが、競争の激化に伴い、この戦略がどれほどの効果をもたらすかは未知数である。さらに、エネルギー事業やライドシェア市場への参入といった新たなビジネス展開も模索しており、今後の動向が注目される。

TD Cowenの強気な評価 テスラの成長を支える要因

TD Cowenのアナリスト、イタイ・ミカエリ氏はテスラの評価を「ホールド」から「買い」に格上げし、目標株価を180ドルから388ドルへと引き上げた。これは現在の株価水準から61%の上昇余地を示すものであり、テスラの成長余地を強く評価している。その理由として、自動運転技術の進化、ヒューマノイドロボット「Optimus」の開発、エネルギー事業の拡大といった要因が挙げられている。

特に、テスラの「Dojoスーパーコンピューター」は、完全自動運転(FSD)の進化を加速させるとされ、モルガン・スタンレーはDojoが企業価値を5,000億ドル押し上げる可能性を指摘している。この高性能コンピューターが収集するリアルワールドデータは、自動運転技術だけでなく、ヒューマノイドロボットの進化にも寄与すると考えられている。

また、エネルギー事業の成長も評価ポイントの一つである。テスラの蓄電事業は、定置型蓄電システム「Megapack」や「Powerwall」の需要増加により拡大しており、2025年には50%成長が見込まれている。さらに、同社はライドシェア市場にも参入を計画しており、2024年には無人ライドシェアサービスの実証実験をオースティンで開始する予定である。これらの新規事業の成長が、今後のテスラの収益向上を支える可能性がある。

アナリストの評価が分かれるテスラ株 未来の不確実性

テスラに対するアナリストの評価は二極化している。TD Cowenのように強気な見方をする専門家もいる一方で、多くのアナリストは依然として慎重な姿勢を崩していない。最新のアナリスト評価では「強い買い」が14名、「ホールド」が13名、「強い売り」が10名と分かれており、平均目標株価は現在価格から約45%の上昇余地を示している。

慎重な見方をするアナリストは、テスラの収益構造や市場環境の不確実性を指摘している。特に、EV市場の成長鈍化や競争激化、関税政策の影響などがリスク要因として挙げられる。また、エロン・マスク氏の経営スタイルも投資家にとっては不安要素の一つであり、政治的発言や他事業への関与がテスラの事業運営に影響を与える可能性がある。

一方で、テスラは約366億ドルの現金を保有しており、149億ドルの短期負債を大幅に上回る財務基盤を維持している。この強固な資金力が、新たな事業展開や成長投資を支える要因となるだろう。株価の不安定な動きが続く中、テスラの事業戦略と市場の変化を慎重に見極めることが、今後の投資判断において重要となる。

Source: Barchart.com