半導体大手インテルは3月18日付でリップ・ブー・タン氏を新たな最高経営責任者(CEO)に任命した。この発表を受け、同社の株価は3月13日の市場で約15%急騰した。タン氏は、インテルの取締役を務めた経験を持ち、直近ではケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS)のCEOとして優れた経営手腕を発揮してきた人物である。

市場はこの人事をおおむね好意的に受け止めており、バンク・オブ・アメリカのアナリストは株価評価を「中立」に引き上げ、目標株価を25ドルに設定した。一方で、タン氏がインテルのファウンドリ事業の分社化に反対していたとされる点には不透明感も残る。

インテルの業績は依然低迷が続いており、2024年第1四半期の売上高は最大127億ドル、1株当たり利益(EPS)は0.09ドルと予想されている。株価は短期的に上昇する可能性があるものの、依然として52週高値から約50%下落した状態にあり、市場の評価は「保留」にとどまっている。


インテル新CEOリップ・ブー・タン氏の経歴と市場の評価

インテルは3月18日付でリップ・ブー・タン氏を新たな最高経営責任者(CEO)に任命した。タン氏はこれまで、ケイデンス・デザイン・システムズ(CDNS)のCEOとして業績を大きく伸ばし、業界で高い評価を得てきた経営者である。また、インテルの取締役も務めており、同社の内部事情を熟知している点が、今回の人事決定において重要な要素となった。

この発表を受け、インテルの株価は3月13日の市場で約15%急騰した。バンク・オブ・アメリカのアナリストであるヴィヴェック・アーリア氏は、タン氏の就任を好材料と捉え、インテル株の評価を「中立(Neutral)」に引き上げ、目標株価を25ドルと設定した。さらに、カントール・フィッツジェラルドのC.J.ミューズ氏も、目標株価を29ドルに据え置き、現在の株価から約22%の上昇余地があると指摘している。

市場の評価はおおむね好意的であるが、インテルの業績自体は依然として苦戦が続いている。第1四半期の業績見通しとして、インテルは売上高を最大127億ドルと予測しており、アナリストの期待を若干下回る数字となっている。このため、株価が短期的に上昇したとしても、今後の業績次第で評価が再び変化する可能性がある。

ファウンドリ事業の行方とインテルの経営戦略

インテルの経営戦略において、ファウンドリ事業の今後が焦点となっている。前CEOのパット・ゲルシンガー氏は、インテルの半導体製造部門を分社化する計画を進めていたが、報道によると、タン氏は取締役としてこの分社化に反対していたとされる。インテルは長年にわたり、半導体の設計と製造の両方を自社で手掛ける「垂直統合型モデル」を採用してきたが、業界の競争激化により、ファウンドリ事業の独立性を強化する方針が打ち出されていた。

ファウンドリ市場では、TSMCやサムスンが圧倒的なシェアを誇る中、インテルは巻き返しを図るべく多額の投資を行ってきた。しかし、コスト増や生産能力の課題が重なり、期待された成果を上げられていない。仮にタン氏が分社化に慎重な姿勢を取り続ける場合、同社の戦略にどのような変化が生じるのかが注目される。

一方、ケイデンス・デザイン・システムズでの経営経験を踏まえると、タン氏は半導体設計ソフトウェアの分野に強みを持ち、設計プロセスの効率化に関しても知見があると考えられる。インテルの競争力を高める上で、製造部門の改革と同時に設計技術の強化を図る可能性もある。ファウンドリ事業の行方は、同社の将来を左右する重要な要素となるだけに、今後の戦略の具体化が求められる。

インテル株の今後の見通しと投資家の判断

インテル株は3月13日に約15%上昇したものの、依然として52週高値から約50%下落した水準にある。今回の急騰は新CEO就任による期待感の表れであるが、短期的な反発に過ぎない可能性も指摘されている。現在のコンセンサス評価は「保留(Hold)」であり、多くのアナリストは慎重な姿勢を崩していない。

その背景には、インテルの業績低迷がある。2024年第1四半期の売上高予測は最大127億ドルであり、アナリスト予想の12.87億ドルと比較してやや低調な数字である。また、1株当たり利益(EPS)は0.09ドルと見込まれ、利益率の低下も懸念される。新経営陣の下で収益性を改善できるかが、今後の株価動向を左右することになる。

投資家にとって重要なのは、短期的な市場の反応だけでなく、中長期的な経営戦略の方向性である。特に、タン氏がファウンドリ事業の強化にどのようなアプローチを取るのか、設計と製造の一体運営を維持するのかが焦点となる。市場環境が厳しさを増す中で、インテルが持続的な成長を実現できるかどうかは、依然として未知数である。

Source: Barchart