量子コンピュータ企業D-Wave Quantum(QBTS)が、業界の大きな節目となる「量子超越」の達成を発表した。この発表を受け、QBTS株は過去5営業日で25%以上上昇し、年初来の最安値からは75%以上の伸びを記録している。
同社のCEOアラン・バラッツは、量子超越の達成を「量子コンピューティングの聖杯」と表現。アナリストのクレイグ・エリスもD-Waveを量子技術市場で独自の立ち位置にあると評価し、2025年初頭には株価が11ドルに達する可能性を示唆している。
また、D-Waveの第1四半期の収益は1,000万ドルを超える見込みで、アナリスト予測の255万ドルを大きく上回る水準となる。こうした業績の改善と市場の注目度の高まりを背景に、ウォール街では同社株に「強い買い」の評価がついている。
D-Waveが主張する「量子超越」とは何か

D-Wave Quantum(QBTS)が発表した「量子超越(Quantum Supremacy)」とは、量子コンピュータが従来のコンピュータでは解決不可能な問題を処理できるようになったことを意味する。同社のCEOアラン・バラッツは、この達成を「量子コンピューティングの聖杯」と評し、技術的ブレークスルーとしての意義を強調している。
D-Waveの量子コンピュータは「アニーリング方式」を採用しており、従来のゲート方式とは異なるアプローチをとる。アニーリング方式は、組み合わせ最適化問題の解決に優れ、金融、物流、創薬などの分野で実用化が進んでいる。同社の発表が事実であれば、商業的な量子コンピュータの実用化が加速する可能性がある。
ただし、量子超越の定義や基準には議論の余地がある。Googleが2019年に量子超越を達成したと主張した際には、IBMが異論を唱え、伝統的なスーパーコンピュータでも同様の結果が得られると指摘した。D-Waveの主張についても、今後専門家による詳細な検証が求められることは間違いない。
D-Waveの株価上昇は一時的か、それとも持続可能か
D-Waveの発表を受け、QBTSの株価は過去5営業日で25%以上上昇し、年初来の最安値からは75%以上の急騰を見せた。この背景には、量子コンピューティングが2025年に最も注目される技術の一つと見なされていることがある。量子コンピュータ市場は急速に拡大しており、2035年までに世界経済に1兆ドル規模の価値をもたらすとされている。
一方で、D-Waveの株価上昇が一時的なものか、長期的な成長につながるのかは不透明だ。アナリストのクレイグ・エリスはQBTS株に対し強気の見解を示し、2025年初頭には株価が11ドルに達する可能性を指摘している。しかし、量子コンピュータ業界にはGoogle、IBM、リゲッティなどの競合が存在し、技術競争が激化している。D-Waveが競争優位性を維持できるかが、今後の株価推移の鍵を握る。
また、D-Waveの業績は改善傾向にあるものの、収益基盤の安定性はまだ確立されていない。同社は第1四半期の収益が1,000万ドルを超えると予測しているが、これはドイツのユーリッヒスーパーコンピューティングセンター(JSC)への販売による影響が大きい。単発の売上ではなく、持続的な成長戦略が求められる局面にある。
量子コンピューティングの商業化とD-Waveの課題
D-Waveが発表した量子超越は、量子コンピュータの商業化を進める上で大きな前進となる可能性がある。同社の量子技術は既に特定の業界で導入が進んでおり、最適化問題の解決に強みを持つ。実際、第4四半期の新規予約は前年比502%増と急成長を遂げており、顧客の関心が高まっていることを示している。
しかし、量子コンピュータ技術の商業化には依然として多くの課題が残る。第一に、技術の信頼性と安定性の確保が必要である。量子ビットのエラー率は依然として高く、ノイズ耐性の向上が求められている。また、量子コンピューティングが本格的に普及するためには、既存のITインフラとの統合が不可欠であり、導入コストの高さが普及の障壁となる可能性もある。
加えて、D-Waveの競争環境も厳しさを増している。IBMやGoogleはゲート方式の量子コンピュータを開発し、異なるアプローチで市場をリードしている。D-Waveのアニーリング方式が特定分野で優位性を持つ一方で、汎用性の面ではゲート方式に劣るという指摘もある。こうした点を踏まえると、D-Waveが市場での地位を確立するには、さらなる技術革新と収益の多様化が必要となる。
Source: Barchart.com