AppleがWWDC 2024で発表したApple Intelligenceについて、著名な評論家ジョン・グルーバーが「Appleは嘘をついた」と厳しく批判した。彼は、発表された機能の多くが実際には提供できる状態になく、特に「パーソナライズされたSiri」に関する説明が虚偽であったと主張している。

グルーバーは、Appleが「未完成の機能をあたかもすぐに利用できるように宣伝した」ことが問題の本質であると指摘。Apple Intelligenceが実演できない機能ばかりであり、同社の過去の発表と比べても異例の事態だと述べた。

Appleはこれまで、発表と同時に機能を提供する企業としての信頼を築いてきたが、近年は発表と実装の乖離が目立つ。Apple Intelligenceもその例外ではなく、同社の戦略に疑問の声が広がっている。今後の対応が注視される。

Apple Intelligenceは本当に存在するのか 発表内容と実態の乖離

AppleがWWDC 2024で発表したApple Intelligenceは、同社がAI分野に本格参入することを示すものとして大きな注目を集めた。しかし、ジョン・グルーバーによると、その多くが「ヴェイパーウェア(実態のない機能)」であり、発表された機能の実装時期すら明確ではないという。

特に「パーソナライズされたSiri」については、WWDCの段階で実演がなく、直後に「来年提供予定」と発表されるなど、Apple自身が当初の発表と異なる姿勢を示した。Appleは過去にも、発表後に延期や開発中止となった製品をいくつか抱えている。たとえば、AirPowerワイヤレス充電マットは2017年に発表されたが、最終的に発売中止となった。

また、2022年に発表された次世代CarPlayの大幅アップデートは未だに実装されていない。このような過去の事例と比較すると、Apple Intelligenceが本当に予定通りに提供されるのか、不安視する声が上がるのも無理はない。Appleの強みは、発表した技術や製品を確実に市場に投入することでユーザーの信頼を築いてきた点にある。

しかし、今回のAI戦略に関しては「先行する他社に対抗するための発表だったのではないか」との指摘もある。実際に、WWDCで示された機能の多くが、すでにOpenAIやGoogleが提供しているAI技術と大差ないものであった。Appleがこれまで築き上げてきた「発表即提供」のブランド戦略が揺らぐ中、Apple Intelligenceの行方は同社の将来を占う重要な試金石となる。

Appleは「発表先行型」の企業に変化したのか

Appleは従来、「発表した技術はすぐにユーザーが利用できる」という姿勢を貫いてきた。しかし近年、この方針に変化が見られる。今回のApple Intelligenceの発表もその一例であり、多くの機能が「発表のみ」で終わる可能性が懸念されている。特にSiriの強化に関しては、WWDCで具体的なデモがなかった点が不信感を招いた。

Appleは過去にも、開発の遅れや技術的な課題から計画を見直した例がある。たとえば、iOS 7のリリース時には多くのデザイン変更が行われたが、一部の新機能は最終的に削除された。また、2013年に発表されたMac Proのリニューアル計画も大幅に遅れ、実際の発売は2019年になった。

こうした事例は、Appleが「完成度の高い製品を提供する」ことを重視しているとも言えるが、近年は「未完成の技術を発表し、後に延期や変更を行う」ケースが増えている。今回のApple Intelligenceも、WWDCの発表当初は大々的にアピールされたものの、実際の提供時期や機能の詳細が不明確なままだ。

グルーバーが指摘するように、「本当に提供できる技術なのか」という根本的な疑問が残る。もしAppleが「発表を重視し、実際の提供は後回しにする」姿勢を強めるなら、同社のブランディングにも影響を及ぼす可能性がある。

Appleのこれまでの成功は、実際に製品を手に取ったユーザーがその価値を実感できたからこそ成り立っていた。今後、発表だけで実態が伴わない状態が続けば、Appleのブランドイメージにも大きな変化が訪れるかもしれない。

Source:AppleInsider