アップル(AAPL)の株価は過去最高値から18%以上下落し、弱気相場入り目前となった。背景には米中貿易摩擦の激化や米国経済のリセッション懸念があり、3月10日には1日で4.85%の下落を記録。2022年9月以来の大幅安となった。
市場ではアップル株の評価が低下し、モルガン・スタンレーを含む複数のアナリストが目標株価を引き下げる動きが続く。特に、iPhone 16の普及鈍化、中国市場でのシェア低下、「Apple Intelligence」機能の遅延が重荷となり、同社の成長戦略への懸念が強まっている。
PERは過去5年平均と同水準だが、サービス事業の成長が利益率を押し上げている点は評価される。一方で、今後の業績見通しには慎重な見方が強く、新規投資のタイミングを慎重に見極めるべき局面にある。
アップル株下落の背景 米中貿易摩擦とマクロ経済の逆風

アップルの株価下落には、米中関係の悪化が深く関与している。ドナルド・トランプ大統領による対中関税の強化が、アップルの製造コストを押し上げており、同社は現時点で関税の免除を得られていない。特に、中国市場はiPhoneの販売において重要な拠点だが、消費者の国産ブランドへのシフトが進み、競争環境は厳しさを増している。
加えて、米国経済の景気後退懸念が消費者支出の低迷を引き起こしており、ハイエンドスマートフォン市場にとっては逆風となる。iPhoneの価格引き上げは難しく、アップルの利益率を圧迫する要因となっている。こうした外部環境の変化が、アップルの成長戦略に影響を与え、投資家の慎重な姿勢を招いている。
一方で、アップルのサービス事業は堅調に推移し、利益率の向上に貢献している。しかし、短期的な市場の不安定さと外部要因の影響を受け、株価の変動が続く可能性がある。市場全体のセンチメントが改善するまで、アップル株の回復には時間を要するだろう。
Apple Intelligenceの遅延と製品戦略への影響
アップルが進めるAI機能「Apple Intelligence」の導入遅延も、同社の株価に悪影響を与えている。当初期待されていたSiriの大幅アップグレードが延期され、競合他社がAI市場で先行する中、アップルの技術戦略の遅れが懸念されている。AI機能の強化は、iPhoneの付加価値を高め、販売を促進する要素となるが、計画の遅れが消費者の購買意欲を下げる可能性がある。
また、iPhone 16の販売動向も市場の期待を下回っており、これが株価の重しとなっている。特に、中国市場ではファーウェイなどの国内ブランドが躍進しており、アップルの市場シェアは縮小傾向にある。競争環境の激化と技術革新の遅れは、アップルの成長戦略にとってリスク要因となり得る。
こうした状況を踏まえると、アップルはハードウェアの販売だけでなく、AIを含むソフトウェアやサービス事業の強化を急ぐ必要がある。Apple Intelligenceの本格導入が遅れることで、競争力の低下が長期的な問題となる可能性があり、今後の製品発表が市場の評価を左右することになるだろう。
投資判断の分かれ目 目標株価の引き下げと今後の展望
アップル株に対する市場評価は厳しさを増しており、モルガン・スタンレーをはじめとする複数のアナリストが目標株価を引き下げる動きを見せている。2025年第1四半期の決算発表後、アップルに対して3つの格下げが行われたが、大幅な目標株価の引き上げは一部のアナリストにとどまった。現在、アップルの平均目標株価は251.51ドルとされ、現状の株価から約16%の上昇余地があるものの、市場環境の不透明感は拭えない。
「マグニフィセント7」の中で、アップルはテスラに次いで評価が低く、かつての市場の安定銘柄としての地位に変化が見られる。特に、最近の下落によってPERは30.4倍と過去5年間の平均水準まで下がったものの、長期的なバリュエーションから見ると依然として割高感が残る。短期的な成長期待が後退していることから、新規の買いを入れるタイミングとしては慎重な判断が求められる。
一方で、アップルのサービス事業は高い利益率を誇り、同社の収益基盤を支えている。特に、サブスクリプションモデルの強化や、Apple Intelligenceの成功が長期的な成長を左右する可能性がある。現時点では、外部環境の影響を受けやすい局面であるが、テクノロジー市場全体の回復とともに、アップルが再び成長軌道に乗るかどうかが注目される。
Source: Barchart.com