NVIDIA(NVDA)の株価は、過去2年間で405%以上の急騰を遂げたが、直近では52週高値から24%以上下落している。AIインフラ投資の減速懸念や短期的な利益率の圧力、中国への輸出規制、マクロ経済的な不透明感が市場心理を冷やし、投資家のセンチメントに影響を及ぼしている。
しかし、同社の成長基盤は依然として強固であり、AI革命の最前線に立つ企業としての地位は揺るがない。データセンター事業の急成長に加え、最新の「Blackwell」アーキテクチャの普及が加速。2025年度の売上は1,305億ドルと前年から114%増加し、AIチップの需要は供給を上回る状況が続く。
足元の調整を経て、NVIDIA株は急成長銘柄からバリュー株へと転換しつつある。現在の予想P/Eは26.3倍と、これまでの水準と比較して割安感が増している。AI市場の拡大を見据えた場合、この株価下落は長期投資家にとって魅力的なエントリーポイントとなる可能性がある。
NVIDIAの成長を支えるAI革命とデータセンター事業

NVIDIAは、AI技術の進化に伴い、データセンター市場で圧倒的な地位を築いている。同社の最新決算によれば、2025年度の売上は1,305億ドルに達し、前年から114%の成長を遂げた。その中でもデータセンター事業は、前年比2倍以上の1,152億ドルに達し、企業のAI需要の急増が追い風となっている。特に、Hopperアーキテクチャの普及が進み、次世代の「Blackwell」プラットフォームの展開も本格化している。
第4四半期だけで110億ドルの売上を記録したBlackwellは、AIモデルのトレーニングや推論に最適化されており、既存のGPUを大幅に上回る性能を誇る。この新技術の導入によって、AIを活用したクラウドサービスや大規模データ処理のニーズが拡大している。加えて、エンタープライズ向けのAIコンピュート事業も成長を続けており、各国のテクノロジー企業や研究機関がNVIDIAのチップを採用している。
AIの進化とともに、データセンター市場はさらなる成長を遂げる可能性が高い。一方で、AIインフラへの過剰投資に対する懸念も指摘されており、短期的な需要の変動がNVIDIAの業績に影響を及ぼす可能性は否定できない。しかし、NVIDIAの製品競争力は依然として高く、今後も成長エンジンとしてデータセンター事業が同社の業績を牽引することは間違いない。
株価下落の背景と市場の懸念
NVIDIAの株価は、過去2年間で405%以上の急騰を記録したものの、直近では52週高値から24%以上の下落を見せている。この背景には、いくつかの市場要因が影響を与えている。まず、AIインフラ投資の減速懸念が挙げられる。多くのテクノロジー企業が急激なAI投資を進める中で、今後の設備投資のペースが鈍化する可能性が意識されている。
また、短期的な利益率の圧力も懸念材料となっている。NVIDIAの最新決算では、2024年第4四半期の1株当たり利益(EPS)が0.89ドルと発表され、前年同期比71%の成長を示したものの、市場の期待を超える伸びではなかった。加えて、中国向け輸出規制の影響も無視できない。米国政府による規制強化により、一部の高度な半導体技術の輸出が制限され、中国市場での売上減少リスクが高まっている。
こうした要因が重なり、投資家のセンチメントは一時的に冷え込んでいる。しかし、NVIDIAの成長基盤が揺らいでいるわけではない。特に、AI技術の進化と企業のデジタル変革の進展を考慮すると、短期的な調整を経た後、同社の株価が再び上昇に転じる可能性は十分にある。市場の懸念が解消されるにつれ、投資家の評価も変化するだろう。
NVIDIAはバリュー株へ転換するのか
かつて急成長銘柄として注目を集めたNVIDIAだが、現在の株価水準を考慮すると、バリュー株としての魅力が増している。現在の予想株価収益率(P/E)は26.3倍と、過去の水準と比較して割安感が強まっている。AI市場の急成長を支える企業としてのポジションは変わらず、長期的な成長余地を考慮すると、現在の株価水準は魅力的なエントリーポイントとなる可能性がある。
特に、NVIDIAの競争優位性を支えるのは、独自のGPUアーキテクチャと強固なエコシステムである。AIモデルの開発には高性能なハードウェアが不可欠であり、多くの企業がNVIDIAの技術を基盤にしている。そのため、今後の市場環境が変化したとしても、同社の製品需要が急激に縮小する可能性は低い。
もちろん、短期的な市場のボラティリティは避けられない。しかし、NVIDIAが引き続きAI市場のリーダーであり続ける限り、同社の株価は中長期的に回復する公算が大きい。短期的な株価変動に左右されるのではなく、長期視点での成長ポテンシャルに注目することが重要となるだろう。
Source: Barchart.com