テスラの株価(NASDAQ: TSLA)は2025年の最初の3カ月で急落し、ボイコット運動「Tesla Takedown」開始後、3月13日時点で38.02%下落した。背景には、イーロン・マスクCEOの政治的関与がある。マスクはトランプ大統領の選挙キャンペーンを支援し、政府新機関「DOGE」の長としての就任が報じられたことが世論の反発を招いた。

また、テスラの業績低迷も株価下落を加速させた。1月の納車台数が前年同期比で減少し、1月29日の決算発表では市場予測を下回る結果となった。JPモルガンやバンク・オブ・アメリカは目標株価を引き下げ、ショート(空売り)も増加している。

今後の展開は不透明だが、ボイコットの影響は否定できない。年初来で41.12%下落したテスラ株は、12カ月後の予想株価が347.59ドルとされており、一定の回復の可能性も指摘されている。トランプ政権とマスク氏はボイコットを「違法」と批判しており、今後も対立が続く見込みだ。


テスラ株の急落 その背景にある複合的要因

テスラ株の急落は、単なる市場環境の変化では説明しきれない。2025年の最初の3カ月間で38%以上下落した背景には、企業独自の課題と政治的要因が複雑に絡み合っている。

まず、マクロ経済要因として、トランプ政権による関税政策の影響が挙げられる。輸入コストの上昇やサプライチェーンの混乱が進行し、米国市場全体の不確実性を高めている。特に、電気自動車(EV)産業はバッテリーや半導体の海外依存度が高いため、関税の影響を強く受けやすい。また、インフレ率の上昇が再燃し、FRBによる利上げの可能性が高まっていることも、株式市場全体のリスク要因となっている。

加えて、テスラ独自の経営課題も深刻化している。2025年1月には前年同期比で納車台数が減少し、同月末の決算発表では利益・売上高ともに市場予測を下回った。この結果、JPモルガンやバンク・オブ・アメリカといった大手金融機関は、相次いでテスラ株の目標株価を引き下げた。加えて、ショート(空売り)の増加が、株価のさらなる下落を招いた。

企業の業績や経済政策とともに、イーロン・マスクCEOの政治的動向も影響を与えている。マスクはトランプ大統領の選挙キャンペーンを支援した最大級の寄付者であり、さらに「政府効率化省(DOGE)」の長に任命される可能性が報じられた。これが一部の国民の反発を招き、ボイコット運動「Tesla Takedown」が発生。2月3日に抗議活動が始まり、以降、テスラ株の急落が続いている。

マスク氏の政治的関与が引き起こした市場の動揺

テスラ株の下落を語る上で、イーロン・マスク氏の政治的関与は無視できない。彼の発言や行動は、企業のブランド価値に直接影響を与えており、今回の株価下落にも大きく関係している。

2024年の米大統領選では、マスク氏がドナルド・トランプ大統領の再選を支援し、選挙キャンペーンに巨額の寄付を行ったと報じられた。さらに、トランプ政権下で新設された「政府効率化省(DOGE)」の長にマスク氏が就任するとの発表がなされた。これに対し、一部の国民や投資家は「外国生まれの実業家が政府機関の要職に就くことへの懸念」を表明。これが、2月3日に始まったボイコット運動「Tesla Takedown」へと発展した。

加えて、マスク氏の言動も市場の動揺を招いた。彼はトランプ大統領の就任式でナチス式敬礼に見える動作を行い、これが一部のメディアで報じられると、テスラのブランドイメージに大きな傷を与えた。これに対し、保守系メディアは「無害な行為」と擁護したものの、世論の批判を抑えるには至らなかった。

投資家心理において、経営者の信頼性は重要な要素である。マスク氏はこれまでも物議を醸す発言や行動を繰り返してきたが、今回は企業の業績悪化と重なったことで、投資家の売り圧力を一層強める結果となった。今後もマスク氏の政治的発言や行動が、テスラの株価にどのような影響を与えるかが注目される。

今後のテスラ株の行方 市場の見方は分かれる

テスラ株は2025年初頭から急落し、3月13日時点で237.80ドルまで下落した。年初来で41.12%の下落となっているが、市場の見方は依然として分かれている。

一部のアナリストは、短期的にはボイコット運動や経済的逆風の影響が続く可能性が高いと指摘する。特に、関税政策の影響が長期化すれば、サプライチェーンの混乱やコスト上昇が業績の回復を妨げる可能性がある。また、ボイコット運動がどの程度継続するかは不透明であり、マスク氏の今後の政治的発言次第では、さらなるブランド毀損につながる恐れもある。

一方で、テスラの将来性を信じる投資家も少なくない。アナリストの12カ月後のTSLA株の平均予想株価は347.59ドルとされており、現在の水準から上昇する余地があると見られている。テスラは依然としてEV市場のリーダーであり、技術革新や新モデルの投入が今後の業績回復を後押しする可能性がある。また、仮に関税問題が解決し、経済環境が安定すれば、現在の低迷が一時的なものに過ぎなかったと判断されることもあり得る。

現時点では、テスラ株の今後の動向を断定するのは難しい。しかし、経済政策、業績、マスク氏の発言といった要素が複雑に絡み合い、引き続き市場の注目を集めることは間違いない。

Source: Finbold