半導体大手エヌビディア(NASDAQ: NVDA)は2024年に170%以上の上昇を遂げ、市場の注目を集めた。しかし、2025年に入り株価は下落基調を強め、13.55%の下落を記録した。競争の激化や市場の過熱感が、バリュエーションの見直しを促す要因となっている。

特に、中国企業DeepSeekが発表したAIモデル「R1」や、新型量子コンピューターの開発が、エヌビディアの市場支配に影を落としつつある。加えて、新製品「ブラックウェル」シリーズの製造問題や、トランプ政権の貿易政策もリスクとして浮上。これらの要因が積み重なる中、株価の適正評価が改めて問われる状況にある。

50%以上の暴落が現実となるかは不透明だが、競争環境の変化や市場の期待値が再調整される可能性は否定できない。エヌビディアの成長神話が試される局面が訪れている。


エヌビディアの成長に暗雲 製造課題と中国の台頭が市場に与える影響

エヌビディアは、AI革命の中心的存在として市場の期待を集め続けている。しかし、2025年に入り、同社の成長を脅かす複数の要因が浮上している。その一つが、新製品「ブラックウェル(Blackwell)」シリーズの製造課題である。2024年夏には半導体の歩留まり問題が報告され、年末にはチップラックの不具合が判明。2025年3月初旬には、RTX 5090およびRTX 5070 Tiの一部で不具合が報告された。

これらの問題は、主力製品の品質管理に影響を及ぼしかねない。特に、エヌビディアの高い評価額は技術革新に対する市場の期待に支えられており、製造の遅れが業績に直結する可能性がある。競合であるAMDやインテルが新技術を発表する中、エヌビディアの遅れが市場シェアの減少につながるリスクも指摘されている。

さらに、中国企業の急成長も見逃せない。DeepSeekのAIモデル「R1」や、新型量子コンピューターの発表は、エヌビディアの市場独占に変化をもたらす要因となる。中国の政府支援による半導体開発が進む中、米中対立が激化すればエヌビディアの供給網に悪影響を及ぼす可能性もある。これらの変化が、エヌビディアの成長神話にどのような影響を与えるかが注目されている。

エヌビディアのバリュエーションは適正か AIバブルの終焉が引き起こす調整局面

エヌビディアの時価総額は2025年時点で2兆8000億ドルに達しており、AMD(1630億ドル)やインテル(895億4000万ドル)と比較しても突出している。しかし、株価の上昇はAIブームの追い風を受けたものであり、企業の実績と市場評価が乖離しているとの見方もある。直近の決算では売上高393億3000万ドルを記録したものの、評価額はAMDの約17倍、インテルの約31倍に相当し、適正水準を超えている可能性がある。

エヌビディアの成長がこれまで「AI革命の中核」としての期待に支えられてきたことを考えると、市場のセンチメントが変化した場合、その評価は急速に調整される可能性がある。特に、AI市場の競争が激化する中、技術革新のスピードが鈍化すれば、エヌビディアの成長ストーリーは市場にとって説得力を失いかねない。

また、過去のITバブルや仮想通貨ブームと同様に、特定の市場が過熱した後に急速な調整局面を迎えることは歴史が証明している。エヌビディアの評価が適正水準に戻るとすれば、50%以上の下落も排除できないとの見方がある。ただし、同社の技術力や市場での優位性を考慮すると、急落後も一定の支持を得る可能性は高く、調整後に再び成長を遂げるシナリオも考えられる。

貿易政策の影響と米中対立 エヌビディアの未来を左右する地政学リスク

2025年の世界経済は、政治的要因による不確実性が高まっている。特に、トランプ政権の貿易政策がエヌビディアに与える影響は無視できない。台湾を含む主要な半導体生産国に対する関税強化や貿易規制が進めば、エヌビディアの供給網に大きな影響を及ぼす可能性がある。

台湾積体電路製造(TSMC)がエヌビディアの主要な製造パートナーであることを考えると、米中対立が深刻化した場合、同社のチップ生産に遅れが生じる可能性がある。また、米国政府が中国企業との技術競争を抑制するために追加の規制を実施すれば、エヌビディアの中国市場での売上が大幅に減少するリスクもある。

ただし、エヌビディアはこれまでも地政学的な逆風を乗り越え、成長を続けてきた。TSMCが米国内で生産能力を拡大するなど、対策も進められている。貿易戦争の影響は完全には予測できないが、エヌビディアの競争力を維持するためには、サプライチェーンの多様化や新市場の開拓が鍵を握ることは間違いない。

Source: Finbold