Appleは、拡張現実グラスの開発を断念したものの、空間コンピューティングへの挑戦を継続している。その最新の試みとして、Apple Vision Pro向けにメタリカの「M72 ワールドツアー」メキシコシティ公演の没入型ライブ映像を提供する。この映像はAppleの「Immersive Video」技術を駆使し、視聴者はバンドの演奏を目前に感じられる設計となっている。

映像は14台の特注カメラを駆使し、安定化機能や遠隔操作を活用して撮影。180度の高解像度映像と空間オーディオが組み合わさり、ライブ会場の熱気を再現する。「Enter Sandman」など3曲を収録し、観客席では味わえない視点を提供。Apple Storeではこの体験を試せるデモも実施予定で、音楽と映像技術の融合が新たな視聴スタイルを生み出すことが期待される。

Apple Vision Proが切り拓くライブ視聴の新境地 メタリカとのコラボが示す可能性

Appleは、拡張現実グラスの開発を断念したものの、空間コンピューティング分野での展開を加速させている。その最新の試みが、Apple Vision Pro向けに提供されるメタリカの没入型ライブ映像「Metallica」だ。この映像は、メタリカの「M72 ワールドツアー」メキシコシティ公演のソールドアウト・ファイナルで収録され、視聴者にこれまでにない視聴体験を提供する。

Appleは、映像制作のために14台の特注カメラを導入。安定化機能を備えたものや、ワイヤーで吊るされたもの、遠隔操作可能なものなどを駆使し、バンドのダイナミックな演奏を多角的に記録した。さらに、180度の高解像度映像と「空間オーディオ」により、ライブの熱気や会場の臨場感がリアルに再現される。

収録曲は「Whiplash」「One」「Enter Sandman」の3曲で、特に「Snake Pit」と呼ばれるステージ中央のエリアからの映像は、通常のライブビューでは得られない視点を提供する。Apple Vision Proの「Immersive Video」は、従来の2D映像とは異なり、視聴者が空間内で自由に視線を動かせる仕組みとなっている。

これにより、まるでステージ上でバンドの演奏を間近で体験しているかのような没入感が生まれる。Apple Storeでは3月14日からこの映像のデモ体験が可能となり、Apple Vision Proの新たな魅力を実際に確かめることができる。

Appleとメタリカのコラボレーションが示す音楽業界の未来

今回のAppleとメタリカのコラボレーションは、単なるライブ映像の配信にとどまらず、音楽の視聴体験そのものを進化させる可能性を持つ。メタリカのドラマーであるラーズ・ウルリッヒは、「メタリカが常に創造の限界を押し広げるバンドであることを示すエキサイティングな一歩」と述べており、技術と音楽の融合による新たな価値の創出に期待を寄せている。

ライブパフォーマンスは、その場の空気や観客の一体感が醍醐味であり、録画映像では再現が難しいとされてきた。しかし、AppleのImmersive Videoは、映像の立体感や音の方向性を精密に再現し、あたかも会場にいるかのような感覚を生み出す。この技術は、今後のライブエンターテイメントのあり方を大きく変える可能性がある。

また、アーティストにとっても、この技術は新たな表現手法のひとつとなる。VR・AR技術を活用したコンサートや、没入型の音楽コンテンツが一般化すれば、物理的なライブ開催に頼らずとも、視聴者に強いインパクトを与えられる。

Appleのマーケティング・コミュニケーション担当VPであるトール・マイレン氏は、「このコラボレーションは、ライブパフォーマンスの視聴方法に革命をもたらす試み」と述べており、今回のプロジェクトが音楽業界における新たなスタンダードとなる可能性を示唆している。

今後、Appleが他のアーティストとも同様の取り組みを進めるのか、また音楽業界がこの技術をどのように活用するのかが注目される。メタリカという世界的なバンドとの協業を皮切りに、Apple Vision Proが音楽の楽しみ方を根本から変える存在になる可能性も十分にある。

Source:PhoneArena