米国市場は3月13日、大幅な売りに見舞われ、S&P 500指数とナスダック総合指数が調整局面に突入した。関税をめぐる不安や景気減速の兆候が投資家心理を冷やし、消費支出の減退も懸念材料となっている。
こうした中、中国のEVメーカーNIOの株価が再び5ドルを割り込み、ペニーストックの領域に入った。かつて時価総額1,000億ドルを超えた同社だが、現在は約100億ドルと大幅に縮小。世界的なサプライチェーン問題や競争激化が逆風となる一方、2024年の納車台数は前年比38.7%増と堅調に推移している。
中国政府の景気刺激策が追い風となる可能性もあるが、関税問題や世界市場の混乱が継続すれば、NIOの株価はさらに変動する展開も予想される。
NIOの株価が再びペニーストック水準に転落した背景

NIOの株価は3月13日に5ドルを割り込み、再びペニーストックの領域に入った。これは単なる個別企業の問題ではなく、米国市場全体が関税や景気減速の懸念から大幅な調整を強いられていることが要因となっている。S&P 500指数とナスダック総合指数はともに大幅に下落し、投資家心理の冷え込みがNIOの株価を押し下げた。
さらに、米国の消費支出の鈍化が小売業者の業績に影響を与え、不況の可能性が指摘される中、中国のEVメーカーに対する関税強化の動きも、NIOにとって逆風となっている。バイデン政権は中国製EVの米国市場流入を警戒し、さらなる関税措置を検討しているとされるが、こうした貿易摩擦の影響がNIOの成長戦略に及ぼす影響は避けられない。
NIOの株価は過去にもペニーストック水準に落ち込んだ経験がある。2019年から2020年にかけて株価は低迷しながらも、2020年には1,100%の上昇を記録した歴史がある。しかし、その後の4年間は下落が続いており、2021年初頭に1,000億ドルを超えていた時価総額も現在は100億ドル程度に縮小している。この急激な変動は、同社の成長期待と市場の不安定性が複雑に絡み合った結果といえる。
NIOの成長戦略と業績回復の兆し
市場環境の悪化とは裏腹に、NIOの業績自体は回復基調にある。2024年の年間納車台数は前年比38.7%増の221,970台に達し、特に12月には過去最高の31,138台を記録した。2025年の最初の2カ月間も前年同期比48.8%増と好調を維持しており、年間の納車台数は44万台に達する可能性があると見込まれている。
NIOは従来の高級EV市場に加え、新ブランド「Onvo」と「Firefly」による市場拡大を進めている。Onvoはすでに販売が始まり、Fireflyは2025年前半の納車が予定されている。これらのブランドはより幅広い価格帯の顧客をターゲットにしており、市場シェア拡大が期待されている。また、2024年第3四半期の決算では、粗利益率が2桁台に回復し、フリーキャッシュフロー(FCF)もプラスに転じた。NIOブランドの粗利益率は2025年に15%、長期的には20%を目標としており、収益性の向上を図っている。
しかし、競争環境は依然として厳しい。中国のEV市場ではBYDやテスラなどの強力な競合が存在し、価格競争が激化している。また、欧米市場での販売拡大には関税や規制の影響を受ける可能性があるため、NIOが成長を持続できるかは不透明な部分も残る。
中国政府の経済政策とNIOの未来
中国政府は2025年のGDP成長率目標を約5%に設定し、経済成長を支える政策を打ち出している。習近平国家主席は2024年初頭に民間企業の経営者と会談し、企業との関係改善を模索している。これにより、NIOを含むEVメーカーへの支援策が強化される可能性がある。
加えて、中国国内のEV市場は依然として成長余地が大きく、政府の補助金やインフラ整備が進むことでNIOの販売拡大に追い風となる可能性がある。特にバッテリー交換技術を活用したサービスは他社との差別化要因となり得るため、今後の事業展開のカギとなるだろう。
一方で、NIOのバリュエーションは低水準にある。現在の予想売上高倍率は0.83倍と割安感があり、市場の信頼が回復すれば株価の上昇余地も大きい。ただし、関税や市場環境の変化が株価に与える影響は無視できず、短期的な不安定さは続くと考えられる。NIOが今後の成長戦略を確実に遂行できるかが、投資家の判断を左右する重要なポイントとなる。
Source:Barchart.com