時価総額1兆ドル超の企業は、世界の金融市場で特別な存在とされる。その中で、ブロードコムとテスラが再びこの水準に達するとCNBC「Mad Money」のジム・クレイマーは予測する。

ブロードコムはAI需要の拡大とVMware買収による成長が追い風となり、半導体とソフトウェア事業の両輪で堅調な業績を維持。一方、テスラは自動車事業の減速が懸念されるものの、エネルギー事業の拡大や自動運転技術の進展が評価されている。

株価の大幅下落にもかかわらず、ウォール街の評価は割れており、今後の市場動向次第では両社が再び1兆ドルの壁を突破する可能性は十分に残されている。


ブロードコムの成長戦略 AIと買収による市場支配の行方

ブロードコムは、AI需要の高まりと戦略的買収を通じて事業領域を拡大している。同社は半導体とインフラソフトウェアの両分野で圧倒的な存在感を示し、2024年度にはAI関連売上を41億ドルに伸ばした。特に2023年のVMware買収は、同社のソフトウェア事業を強化し、AI活用の可能性を広げる重要な一手となった。これにより、データセンター向けの包括的なソリューション提供が可能となり、競争優位性をさらに高めている。

株価の下落が続く中でも、ウォール街のアナリストは成長余地を見込んでいる。現在の株価は年初来で17%下落しているものの、目標株価の中央値は現在価格から29%の上昇を示唆する。高値予想では54.5%の上昇が見込まれており、時価総額1兆ドルへの回帰は十分に射程圏内にある。こうした市場の期待は、AI市場のさらなる拡大とデータセンター需要の増大が前提となるが、その成長が鈍化した場合、目標達成のハードルは上がる。

ブロードコムはAI向け半導体分野で急成長を遂げているが、その競争環境は激化している。エヌビディアやAMDといった大手企業もAI市場に積極的に投資を進めており、ブロードコムが市場シェアを維持できるかは今後の技術革新と製品戦略にかかっている。また、半導体市場はサプライチェーンの変動に影響を受けやすく、地政学リスクも無視できない要素となる。こうした外部要因がどのように作用するかが、ブロードコムの未来を左右することになる。

テスラの1兆ドル回帰は可能か 事業多角化と政治リスクの影響

テスラは2021年と2022年に1兆ドルの時価総額を達成しており、その後の株価下落を経て再びこの水準を目指している。同社は依然として電気自動車(EV)市場のリーダーであるが、自動車市場の成熟と競争激化により成長ペースは鈍化している。2024年第4四半期の自動車売上は前年比8%減となり、通期でも6%減少している。これに対し、エネルギー事業やAIソフトウェア、ロボティクスなどの分野では成長を遂げており、特にエネルギー生成・ストレージの売上は113%増と急拡大している。

しかし、テスラには政治的リスクがつきまとう。イーロン・マスクCEOの政治的発言やトランプ政権への関与が影響し、欧州ではボイコット運動が広がっている。特に環境政策の変更がEV市場に影響を与える可能性があり、各国の補助金政策の動向次第では市場の先行きが不透明となる。一方で、米国における政策変更がテスラに有利に働く可能性もあり、これが株価の動向を大きく左右する要因となっている。

テスラの今後の成長は、自動運転技術と新たな製品ラインにかかっている。2026年にはロボタクシー「サイバーキャブ」の量産が予定されており、これが新たな収益源となる可能性がある。また、エネルギー事業の拡大によって事業リスクの分散が進めば、株価回復の材料となるかもしれない。ただし、現在の評価では「ホールド」が多数を占め、成長戦略の実行力が問われる状況にある。

1兆ドル企業への復帰に必要な条件 市場環境と企業戦略の相関

ブロードコムとテスラが1兆ドルクラブに再加入するためには、市場環境の好転と企業戦略の精度が鍵となる。ブロードコムはAIとデータセンター事業の拡大が成長の原動力であり、市場のAI需要が持続的に伸びるかが重要な要素となる。一方で、半導体市場全体の景気変動や競争激化が同社の成長を脅かす可能性もある。加えて、今後の買収戦略が成功すれば、収益構造の安定化につながり、時価総額1兆ドルへの回帰を後押しするだろう。

テスラは自動車事業の伸び悩みを補う形でエネルギー事業やAI技術に注力している。特に自動運転とロボティクスは将来的な収益の柱となる可能性があるが、これらの技術の実用化には時間を要する。さらに、政治的なリスクを管理しながら成長を確保する必要があり、特に米国政府の政策動向が影響を与えることは避けられない。

両社に共通する課題は、市場の期待に応える形で成長を維持できるかである。ブロードコムは技術革新とM&Aの戦略が、テスラは多角化と規制対応が問われる。いずれも1兆ドル企業への復帰の可能性を秘めているが、それを確実なものとするには、今後の市場環境の変化と経営判断の精度が決定的な要素となる。

Source: Barchart.com